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19-2.同。~十億光年の彼方に呼び掛ける~

~~~~一気に手が増えた感じだ。いろいろ捗って非常にありがたい。


「お疲れ、アリサ。


 状況は聞いたし、ボクが少し見るから休憩とって」


「だが」


「気になるのは分かるから。そういうときは、別のもの見ておいで。


 今まで見てたものが、見えないところにいくと、頭が働いて何か閃くこともある」


「わかった」


「んむ。マドカ、とって印刷したやつ、ちょうだい」


「はいこれ」



 紙束を受け取り、椅子に座って計測器に向かう。



「…………んんー、んー、んーー……」



 思わず手が胸元に伸びて。


 作業中だから外してるなと思って。


 そもそも先日砕いたことを思い出した。



 ロザリオ、似たデザインのやつを用意しようかなぁ。


 あれ便利なんだよね。


 こう、軽く切って血を出すのに。



「何かありそう?」


「うん。変。ノイズなら、他の信号に反応するはず。


 信号が他と全然被ってないとこで出てる……。


 ちょっと何本か変えてみるか」



 ビリオンには直接、計測ピンなどはつけない。


 普通は制御結晶に繋いで、いろいろやるんだけど。


 こいつは制御結晶に機器をつないでも、反応がないんだよ。



 最初はどでかい出力だから、それの問題か?と思ったんだけど。


 ドーンやユリシーズで、何度か聖域用の機器を借りて調べても、同じだった。



 最近の聖域は負担分散してるから、通常使う範囲だと出力MAX環境用の計測機器は使わないんだけどね。


 王国では0に近いところからドーンを作った経験によるものか、そういった計測周りは充実してるらしかった。



 だから、こいつが聖域一基に相当する高出力であることが原因でうんともすんとも言わないなら。


 それで計れる、はずだったんだけど。


 結局、何の手掛かりも得られなかった。



 というわけで、連結できた追加装甲経由で、ビリオンはいろいろ調べている。


 直接はだめだけど、連結した魔石神器経由なら、反応を寄越すんだよな。よくわからん。



 調査用に調整し、制御結晶にほど近い信号がとれる魔石神器に刺してるピンを、いくつか外していく。



 問題のノイズらしきものが出ているところは、そのまま。


 あとは……そうだな。タイミングがみたいからとってるところ、別のとこからにしてみよう。


 とりあえず最小限で。これでも出るなら……問題のピンだけにして、ちょっとぼーっと眺めてみるか。



 それで出るなら、計測器を点検、調査用の魔石神器を見直して、問題の切り分けをする。


 他の要因を全部排除してまだ引っかかるなら。


 それは制御結晶……ビリオン側の何か、ということになる。



 なお、先の通りボクは魔素やら魔力やらは感じ取れるので、機器に頼らずともある程度のことは検証できる。


 だがめっちゃ疲れる。ただでさえ頭を使うので、調査には使える限りの文明の利器を用いたい。


 あとまぁ、証拠データはボクが頭ではじき出すんじゃだめだし。誰でも使える機器で行わないとね。



 変えて眺めること、しばし。



「……まだ出るみたいね」



 ダメみたいぃ、ですねぇ。


 別の角度から考えないとだめかなー。


 あんまりこのノイズに拘泥してもしょうがないけど。



 このピンの場所は、何かあると思うんだよなあ。



「うん。


 ……やっぱ他の信号とタイミングが合わないな。


 規則性もない」



 なんとなく、印刷したやつと見比べる。



「あれ?」



 ボクの肩口から画面を見てるマドカが、声を上げた。



「どしたの?」


「画面と印刷したの、何か似た感じだな、って」



 んん?



 これはぁ……ちょっと更新頻度を落とし、波形採取の周期を長くしてみる。


 調整して、問題の波形がとれるぎりぎりまで見えるようにしていく。


 その上でとれたものを、何枚かデータに残し、表示して見比べ。



 こいつ、ノイズかと思ったけど、違う?


 長い期間でとってみると、同じ波形の繰り返しになってる。


 短い時間の中で見ると、規則性がないけど。



 何かこう……。



「言葉、のようだな」


「言葉?」



 ボトルを持って戻ってきたアリサが呟いて、マドカが反応している。


 ボクの中で、何かが結びついていく。



「ああいや、ただの勘なんだが……」


「アリサ、それだ」


「「は?」」



 頭の中で、画像をいくらか加工。


 これが声や音だとして……。


 サンプルが少ないが、候補を絞り込みつつ、組み立てを行っていく。



 ……ちょっとまだ絞り込み切れないな。



 一度瞠目し、脳の魔素を活性。


 目を開き、青い光で画面に出続けるその波を取り込んでいく。


 リアルタイムに、何度も……何十回も。



 取り込みながら、分析。


 可能性を少しずつ狭めていく。



「……い……ぃ……お……う……」



 おそらくは、二つの単語の繰り返し。


 母音の並びがわかってくる。


 これに似た単語。それも、二種類。



 なんだろう……この子が、呼びかけると、したら。


 4歳でこの時間に戻って、出会って。


 ずっと一緒だった、ビリオンの、言葉。



 ボクと、ストックと。



 不意に、閃く。


 思わず立ち上がった。



 ちょっと大きな音がしちゃってごめんだけど、これは興奮が抑えられない。



「アリサ、そのレンジでいいから、しばらく取り続けて。


 ボクが問いかけるから、その後からできるだけ波形採取。


 お願い」


「あ、ああ。わかった」



 彼女がボクの代わりに座り、頷いたのを見て。


 ピンをつないでる魔石神器に寄って。


 手をそっと添え、ゆっくりと声をかける。



「きみの、なまえを、おしえて」



 何か、応えが返ってきたのを、感じた。

次の投稿に続きます。


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