18-3.同。~悪意の侵入を断つ。この呪いの拳で!~
~~~~「おとがめなし」は大人とも議論を重ねた結果だ。ボク?明らかに騙された子を罰するのはちょっと。
三年前のあれやこれやも。
今日のミマスのやつも。
だいたいボクらがいるから起こされたのかよ!
くぁぁぁ……これ、情報伝わってるのもそのせいって説、あるぞ?
『アーカイブ』をボクら越しにも起動してたんなら、当然こっちの様子はわかっててしかるべきだ。
なんてこった。
あれ?でも。
「王城で出たっつってたな。あれはどうなるんだろう?」
ボクらは話を聞いただけだが、ギンナが言ってた王都でモザイク兵が出た、という一件だ。
今回の流れの、一つのきっかけにもなっている。
もちろん、その場にはボクらはいないわけで。
「……2の主人公、あるいはその証があるということじゃないか?」
「2の子らはまだ幼児だが。一人はエンヴィー・クレードル。
もう一人は……マリエッタ、メリーって王女がもう一人いない?」
「ジュピター氏族の子ですね。
うちの親戚で、ミクレスの爵位持ちの娘でもあります。
まだほんの子ども。確かにその子も三歳ですよ」
ん……名前合ってる。
エイミーとマリエッタの話を総合すると、2のヒロインと悪役令嬢はまだ幼児。
それぞれ、帝国と連邦にいて、エングレイブ王国に行ったとは思えない。
自分のことを思い起こすと、三歳でもやりかねんが……さすがに除外しておこう。
「となると、わからんな」
「いやストック。そりゃ本人が来たんだろ。
その西宮ってやつが、王都に」
「スノーが警戒くらいしてそうだが?」
「裏をかかれたってことかね……入国したなら、確認はとれる。
やってもらっておこう」
神主は三作とも、ゲーム上では顔が公開されていない。
もちろん、ボクは実際に会った1のやつはその顔を知っている。
ただ2や3のはまったくわからない。
そいつらのことを知っているのは、この中ではマドカとアリサだけとなる。
人相描きを作ってもらったほうがよさそうだ。
そも彼らは、主に今より何年も未来で活動している人物たちだ。
広く顔は知られていないと考えたほうがいい。
となれば、堂々と王国に入国することも可能だ。
存在がばれたら、以降は難しいけどね。
「とりあえず、事件再現への対策は決まりだな。
まず、ボクら四人の持ってる証は、破壊しよう。
エンヴィー・クレードルと、メリー・ジュピターに接触。
証を持っているようなら、これも砕く。
こっちの手配を急ごうか。向こうに回収されたくない」
「砕けないぞ?私の力でも無理だった」
アリサの力って、あれか。大地を割るとかいう。
つまり、出力の話じゃないってことか?
アリサ自身の力が、思ったより高出力じゃない可能性もあるが。
ま、試してみればいい。
「ゲーム上で存在する力じゃ、無理だろうな。
違うものなら大丈夫だと、ボクは見積もる」
「そんなものあるの?」
ふむ。ここはノリと勢いで、マドカに実例を見せてやろう。
残り三つもあるなら、研究には十分だしな。
ロザリオを外し、右手に持つ。
左の袖口を咥え……いや、やめよう。派手にいこうか。
深く、息をする。
「__/\/\/\/\/\/\/\/\/\/ ̄ ̄!!」
人から出たとは思えない音が、躍動し、暴れ、響く。
ボクの暗い瞳に電流が走り、紅い輝きを灯す。
――――起きろ、紫電雷獣。
最大出力。雷光を右手に集中。
手を天に掲げ。
放電!
「呪いの力ってやつさ。マドカ」
ボクの手の中で、ロザリオと……その中央の赤い丸い石が、砕け散った。
雷光と瞳を、おさめる。
「ゲームに存在するのは、魔導だけ。
対極の呪いは、出ていない」
魔物の特殊能力、という扱いみたい。
少なくとも、呪法の使い手はいないはずだ。
ん……砕いても、特に影響はなさそうだな。
とにかくこれで、故意に事件再現を起こす能力は、対処可能だろう。
条件が揃ったら自動的に同じことが起こる、という点については……。
もう全体の構造を解体しないとどうしょうもないが。
これはミスティが中心になって、少しずつ計画が進められている。彼女に任せたい。
「ストック、ダリア。あとエイミー。
残りは調査してから、破壊しようか。
砕けたこいつの状態も見ておこう」
「そうだな。同等のものが出た場合、壊せる手段を確保しなければならん」
隣の部屋から箒と塵取りを持ってきて、ささっと砕いたものを片付ける。
ちゃんと取っとかないといかん。
?マドカはなんで引いてるの??
「…………あんた、思い切ったことするわね。
砕いたらなんかあるとか、思わないの?」
「さすがにその可能性があるなら手を出さないよ。
ボクはこれでも魔素とか、わかるからね。
なんかあったら、判別できる」
「ハイディは魔道具のセンサーより優秀だ。
ないというなら、何もないな。
我々の技術・知識で検知できないものがある場合は……いつ壊しても同じとなる」
そうそう、ストックの言う通り。
そんなものあったら、対処できないからね。
致し方なし。
あと懸念があったら、さすがにマリーに聞く。
「頼もしいこと。
それで……私とアリサは、今後どうなるの?
下働き程度なら、できるけど……」
おや、マドカ。働く気はあると。真面目だな。
詳しく聞かないといかんが、おそらくこの子たちは通常の呪いの子とも違う。
多少成熟しているが、見た目相応の子どもと考えるべきだろう。
なら然るべきところがあるな。
ストックと顔を見合わせた。
次の投稿に続きます。
#告知。次話が13部分あるため、次回投下が少し多めになります。
夕方~夜にある程度集中する予定です。




