18-2.同。~そばを打つ。そして証と追憶を知る~
~~~~本当によく食べますね……?ボクの麺残らなくない??
「戦って負けるつもりはない。
だが、生き延びるのは無理だったろうな」
アリサがボクを見ながら言う。
「命を奪うだけなら、手段はいくらでもあるからね」
「ふーん?あっちの不死身女でも?」
こら、箸で人を指すなしマドカ。
マリーがきょとんとしてから。
「ハイディから生き延びるのは、無理ですねぇ」
にへらって笑った。
ボクは呪いとか災害の一種か??
「だろうな。私がフェニックスを持っていたときでも、そうだったろう。
首を刎ねられても死にはしないが、ハイディとの戦闘では毎回死を覚悟した」
なんでやストック。
殺す気なかったし、殺気も本気も全然出さんかったやろ?
「私、ハイディにつけ狙われるなら死を選ぶわ。
一緒に死んでくれる?マリー」
「くっ。相手がハイディなら、やむを得ません」
ダリア?マリー??
ボクの友達ひどくない??
「私は大丈夫よ、ハイディ!」
エイミー!
「泣いて下座って詫びるわ!
あ、靴も舐めたほうがいい?」
もうだめじゃった。
そういう話じゃねぇから。
くそう。そばだ。そばを打つんだハイディ。
そばを打つことに悟りを見出し、そば打ちますぃーんと化す。
そばを打ち、つゆを作り、野菜を切って揚げ続ける。
…………みんな、まだ食うの?全然残らないんじゃけど??
「それでマドカ、アリサ。
君たちはジュノーに入り、イスターンに来ただけ。
他に何かやってたりはしないのか?」
「我々が受けた指示はそれだけだ、ストック。それ以前は何も。
突然中原に二人で出て、必死に暮らしていたら奴らが来て、連邦に連れてこられて」
「そうか。ハイディ」
「ん?それだとおとがめはないね」
「ないの!?」「「は?」」
マドカが驚いて、マリエッタとエイミーが声を上げてる。
ダリアとマリーはさもありなん、って顔だ。
このケースは、話し合って想定したもののうちだからね。
事件再現を起こして回っているものが、本当にただの鉄砲玉の場合、その後どうするか。
ボクらの答えは、減刑してでも恩を売り、味方に引き入れる、だ。
自走式地雷を野放しにする理由は、ない。
「事件再現は、これまでも連邦以外の箇所で幾度か起きてる。
ただ、ジュノーとイスターンの二か所だけというなら、これまでのは二人は関係がない。
もちろん、両方危機的状況だったのは確かだが、未然に防がれている」
どっちかで死傷者が出てたなら、おとがめなしとはいかなかったろうな。
法的には難しいが、何かしらの罰、あるいは報復を受けることになっただろう。
「計画した黒幕ならともかく。
何の被害も出してない、ただの使いっ走りをどうこうする法は、連邦……ミクレスにもないね。
二人はまだ、合法的な旅行者だ。さっきちょっと暴れたが、ただの喧嘩ってことで」
思いっきり戦ったし、殺害の未遂といえばそうだが、さして被害もないしなぁ。
被害当事者がいいといえば、それで終わりだろう。官憲に現場を押さえられたわけでもない。
クラソーがケガしてたが……ほっといてええやろ。どうせ治るそうだし。
次の盛りそばを、エイミーとマリエッタの前に置く。
「その点は、このそばパで仲直り。ね」
何人か苦笑い気味に頷いた。
エイミーとマリエッタにも、特に不満な様子はない。
マドカたちは、いいのか?みたいなお顔だが。
んむ。腹ペコのボクの、渾身のそば打ちだ。
是非、ご納得いただきたい。
「帝国経由とみられるやつらは、別口だろうし……そこは何か知ってる?二人とも」
マドカは首を振っている。
「結晶ができている、帝国人らしき者たちは……船で見た覚えがある。
おそらくは3の神主、東宮に改造された奴らだ」
ほほう。あの結晶技術の出所はそこなのだな。
帝国のそれではないというなら……これは、対策をしなければ。
少し思い浮かぶものでも、やばいのがいくつもある。
対抗手段は難しいが……また、皆と相談しながら進めるか。
「そか。その船は、今どこに?」
「わからない。半年前に追い出されてな。当時は、帝国の東の方にいた」
「その状況で君ら、よく真面目にやってたね……」
路銀だけ与えられて、そっから連邦まで?
あ、でも連れてこられたっていうから、引率はいたのか。
「船を下ろされた後、別の小型船で神主と一緒に帝国西部まで来た。
その後、ジュノー行きの小型神器船に乗せられたんだよ」
そして今に至る、か。
足跡の裏取りだけ、名探偵にお願いしとこう。
うーん。
「エイミーたちからは、何かある?」
「ん……操られてた間は、なんか意識もなかったし。特に何も?
意識が戻ったら、体めっちゃ痛かったけど」
ごめんなさい、それはボクが轢いたからです。
「確かに二人を裁くのは、連邦では難しい。
裁くべきでもないと考えます。
私からは、再発さえ防げれば」
「そりゃごもっともだ。ダリア、どう思う?」
「そうね。いい機会だし、そもそもどうやって起こしてるのか知りたいわ」
「神主……西宮と名乗っていたが、そいつの能力のようだ。
『アーカイブ』というんだそうだ」
言われて見れば、そういうゲームシステムがあったような??
「そう。で、それをどうやって遠隔地で起こさせるの?」
「こいつだよ」
アリサが、胸元のブローチを外して皆に見せる。
ストックがしているのと、そっくり同じだ。
青い石が入ってる。
「『主人公の証』。これが存在するところの過去を、再起動できるんだそうだ」
…………ん?
あああああああああああああああああああああああ!!!!
そういうことかあああああああ!!!!
「「馬鹿なああああああああああああああああああああ!!!!」」
知能指数が下がったような叫びを、ストックと二人で上げ。
そして膝から崩れ落ちた。
次の投稿に続きます。




