4-3.同。~君の頑張りに、どう応えたらいいだろう~
~~~~違う未来に向かってるのは喜ばしいが、そんなことより帰りはまだか。
椅子から立ち上がり、書庫から出ようとして……
「やったぞ!ハイディィィィィィィィィィィィィィふが!!」
「書庫ではお静かに。モンストン侯爵令嬢」
突然現れたストックの口を、左手で掴んで塞いだ。
落ち着いたようなので、手を放す。
「で?」
「ああ。お前が、聖域『ドーン』の巫女に、推挙された」
「さてはばかなの?ストック」
それはすごいことだが、先にただいまを言え。
「ぐ、私はだな」
「誰がそこまでやれと言った。やりすぎだと言ってるんだ」
ちょっとため息が出そうになったので、左手で自分の口をそっと塞ぐ。
ん……このばか。
ボクはしばらくぶりに君に会えて喜びたいのに、ちょっとおこだぞ。
このまま話すとぶちまけそうだから、彼女の言ったトンでも内容を頭の中で整理する。
神器船を動かせるほどの神器使い……魔結晶持ちは貴重だ。
王国はその必要数が少ないが、別に軽視しているわけではない。
才能のある子を育て、十分な恩恵を与え、囲い込んでいる。
巫女とは、神主や司祭と同じ「プリースト」位の神職で、国の与える称号だ。
中型神器船なら一人で動かせるほどの神器使い、あるいは船乗りの証。
その上は「ビショップ」位だけど、これは国王陛下とか、聖国の教皇が相当する。
彼らは強力な魔導師で、しかも特殊な存在らしくて神器船の操作もできるらしい。
魔結晶を持たず、神器を動かせる稀有な存在だと言われている。
なおプリーストの下は「ディーコン」位。まぁそれでも小型船を一人で動かせるから、十分すごいんだけど。
もちろん、船が動かせるなら、どんな大型車だって操作できる。神器自体も同様だ。
巫女や神主に相当するディーコン位の職は、禰宜とか助祭だったかな?
で。大型神器船の聖域は、プリースト位が何人もいて動かしている。
常に動いているわけじゃないので、移動時だけ集まって働いて、あとは管理とか待機になる……はず。
ディーコン位だって多数いるだろう。
神職になれる人は貴重だが、総人口から見れば非常に少ないだけ。
数がいないというほどではない。
だが王国の聖域で神職になれるというのは、大変な名誉だ。
とても狭き門で、簡単になれるものではない。
それも、プリースト位なんて。
……ん。よし、ちょっと落ち着いた。
「それで。なんで禰宜じゃなくて、巫女の推挙が通った。どういうからくりだ」
ボクも神器車が運転できるし、ディーコン位が認められる可能性くらいは、まぁわかる。あるだろう。
でもプリースト位は、根拠なく推薦など受けられない。十分な実績が要る。
てか推挙ってことは、決定権のある人が推したってことじゃなかったか?もう決まりだろう、それ。
「決め手になったのは、お前が持ってきたクルマだ」
「ああ、サンライトビリオン」
「それだ。本物だったんだよ」
は?
「いやいや、確かに乗ってみて、伝説のあのクルマっぽいなとは思ったよ?
だからそう名前つけて、呼んでたんだし。
でもほんものがなぜあんなとこにある」
「お前が乗ってた神器船、無事見つかってな。
魔物だらけだったが、神器使いが調査に入った。
残っていたのはダークネスマイナだった。
コアが残されていて、それが調べられたから、間違いない」
一瞬、意識がないなった。
すぐ戻ったけど。
「馬鹿なあああああああああああああああああ!!!!」
そして膝から崩れ落ちる。
「魔道具史に残るオーパーツが!あんなところで失われたのか!!!!」
「そして喜べ。そのオーパーツの片割れが、お前の愛車だ。
そちらも調査済みだ。本物だとお墨付きがある」
表情の消えた顔で、ついストックを見た。
「ほんとだああああああああああああああああ!!!!
車両契約してる!!ボクのか、ボクのなのかあれが!!!!」
しばらくによによしたストックに見られながら、ボクは書庫を悶え転がった。
とてもお静かにできなかった。
次投稿をもって、本話は完了です。




