15-4.同。~魔力のない大魔導師~
~~~~拾った友達は――――本当に頼りになる奴だった。
「ぐぅぅ、これ重い!でもやれるわ!!」
さすがだエイミー。明らかに三桁……否四桁の火の鳥が飛び立ってる。
ストックなら重いとかどころじゃない。気絶してる。
火の小鳥の二割が、地上に出ているヒーターゲーターに取りついた。
ワニが片っ端から、ぐずぐずに溶けて行く。
そして、残り八割が……水の中へ。
あれ?そういやボク、提案はしたけど……。
見えない範囲の制御って、どうやるんだ??
魔導って、見えてないと効力を失うんだけど。
水に入ること自体は、魔導の効力だからいいんだよ。
あれは炎じゃなくて、そういう鳥みたいなものだから、水では消えない。
でも視線が通ってないところは、ダメだ。
「エイミー……」
「話しかけないで!今追いかけてる!!」
端末に手を押し付けたまま、目を閉じて集中してる様子の彼女が返す。
できてる?しかも、向こうの状況がわかってる??
そんな機能はつけてないよ???
エイミーの静かな戦いが続く。続く?まだ追いかけてるの?
警戒に当たっているストックとエリアル様を残し、スノーが戻ってきた。
彼女に向けて、唇に人差し指を当てて見せる。
スノーは、ただ頷いた。
「ハイディ!」
エイミーが突然声を上げた。
「港から水路に潜り込んだ先、街の地下にたくさんいる!
全部焼きたいけど、こっちの数が足りない!」
「……もう一つ札を切ろう。
スノー、後ろ乗って。
ボクから制御を引き継がせるから、維持して」
前にも言及したやつだ。ただ、術者が合計三人いる。
ボク一人で二人分を無理やりできないこともないけど……少々しんどいんだよな。
「わかったわ」
妹が、ボクの後ろの席に滑り込む。
彼女がボクが出した端末に手を当て……ボクの方から呪装火砲の制御を引き継がせた。
負担が、軽くなる。
では第二陣だな。
「オーバードライブ!『神力 災害』!!」
これは、マリーの魔力流制御を解析して得た技だ。
魔力流に直接的に干渉。魔導と魔力流が衝突したときの、拡大状況に変化を与える。
解析率三割だから、まだ効果不十分だけど。
赤い魔力流が変化し、車体全体が卵型のレンズに包まれたかのようになった。
外が歪んで見える。
「重魔力収束鏡、展開完了。
エイミー、数的拡大を最大限にした。
君が行ける限りの制御で出せる」
「よっしゃもういっちょ!『怪鳥 の 軍勢』!!」
まだ前の効果終わってないと思うんだけど、二射目行ってない??
サンライトビリオンから無数の小鳥の群れが飛び立ち、水面に吸い込まれていく。
「最高ね!速度も上がってる!この街から、ワニを追い出してやるわ!!」
確かに最高速は上がるだろうけど、その群れをそんな速度で制御してるのは君やで?
何の補助もついてないからな??
魔導を維持し、待つこと数分。
水面から爆発的に、火の小鳥の群れが飛び出した。
「残敵なし!確認完了!
これだから、魔導ってのはやめられないわね!!」
「魔力なしの言うことではないね……」
「エイミー、あなたも姉上寄りね……」
「二人ともひどくない!?」
重魔力収束鏡と、呪装火砲の制御を解除。
魔力流が黒に戻っていき、追加装甲がビリオンの車体に引っ付いた。
「だが、君は魔力さえあれば、史上最も偉大な魔導師になるだろうね。エイミー」
制御数もそうだが、何よりも射程距離、そして見えない範囲に魔導を届かせる力。
すでに戦略級の魔術師だ。
彼女の人型魔道具が完成した暁には、恐るべき大魔術師が誕生するだろう。
「そ、それほどでも……」
めっちゃ照れてるし。
「スノーもお疲れ様。君の仕事は、むしろこっからだけど」
後始末やら、偉い人やらの説明やら、いろいろやってもらわないと。
その上で、何とかこちらの自由を確保しておいてもらったほうがいいだろう。
何かこう……今回の旅は、邪魔者の排除というよりかは。
ひたすら、足止めをされてるような気がするんだよな……。
「ビオラ任せじゃだめかしら……」
「あの人を使うのが、君の仕事やで。
ああただ……念のためなんだけどさ。
エルピスのことって、もう話してる?」
「まだだけど。何かあるの?」
「うん。言わないで置いて。
たぶんエイミーは、何が何でもジュノーに連れて行かないといけない」
「はぇ?」
ストックとエリアル様もこちらに来た。
さすがにおなかが空いたけど、まだこれから一悶着あるんだろうなぁ。
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