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15-3.同。~涅槃からの呼び声、応える閃光~

~~~~ちょっとおかわりが来過ぎて、かっこつけてらんねぇ。


 一生懸命往復を続け、とりあえず人さらいどもは堤防の向こうに放り込み終えた。



 だが……くそっ、じれったいな。


 ボクじゃストックをほとんど手伝えない。


 ストック……何かして、あげたい、のに。



 何か、手段は……。



 およ、エイミーが戻ってきた。マリエッタどうした。



「エイミー?」


「マリエッタは、人を呼びに行ったわ。


 付近の避難も呼び掛けてる」



 確かに、神器車じゃこいつら、どうにもならないしな……。


 ……………………。


 いや、あれが、あれば。



「ハイディ、さっきのじゃ倒せないの?」


「魔物は魔素がないから、ボクが点いても倒れない。


 別の手があるんだけど……ストックは戦線から抜けないな」


「ストックが必要なの?」


「炎の魔導の制御者が要るんだ。


 でも正直、スノーにストックと代わってもらうのはリスクが高い。


 向こうに加わってもらったほうがよさそうなくらいで……」



 何せ、出てくる数がかなり増えて来てる。


 ストックが片っ端から撃破してくれないと、とても間に合わない。


 スノーには、彼女の補助に回ってほしいくらいだ。交代とか言ってられない。



 幸いなのは、こちら側にしか来ていないこと、か。


 遠くには、船から逃げ出してる人とかも見えるし。



「確かに、状況はよくないわね。


 素手は厳しそうだし、あまり私じゃ持たないけど」



 ボクらの体だと、魔素が少ない。


 おまけに雷光だけだと、そもそも効きが悪いだろう。


 そういう意味では、ボクもまた戦線に加わっても効果が薄い。



「ハイディ。私、ファイアボールくらいなら制御できるわよ?」


「は?エイミー、魔力ないでしょ?」


「私のクルマのオーバードライブよ」



 ああ、確かに積んであったか。使ってんのか、あれ。



「何度か使ったの?」


「あの蛇に追っかけられてるときに結構!


 全然効かなかったけどね!」



 ファイアボールは単純で、しかし威力の大きい魔術だ。


 だが、運転しながら、大型とはいえあの素早いナーガナーガに当てるのは、かなり難しい。


 効かなかったということは、当ててはいる。こちらの求める制御力としては……十分だな。



 よし。やるか。


 切り札の切り処だ。



「……なるほど。


 君の言う、あの時の『すごい魔導』を制御してほしいんだ。


 いける?」


「やるわ!


 え、でも。ビリオンはここにはないでしょ?


 とってくるの?」



 いやいや。君のやる気さえあれば、十分さ。



「まさか。街中走ってきてたら、奴らが港からあふれ出るよ。


 スノー、二人の援護、状況を見て離脱。


 水の中のものまで含め、可能な限りオーバードライブで焼き尽くす」


「魔導効かないって自分で言ったのに……姉上ならやりそうね。


 わかった。時間、稼いでくるわ」



 一条の雷光が、戦線に加わりに行った。



 左手にしてある、緑の腕輪を回す。


 充填されていた魔力が流れ、輝きだす。


 その手を、天に掲げた。



 行くぞ、我が愛車!


 閃光よ!!



「『涅槃の彼方より(Salvation)来たれ(call)』!!」



 中空にまだらの空間が現れる。


 中から、黒い神器車が飛び出してきた。


 追加装甲がすべて展開され、濃い魔力流を纏っている。



「ビリオン!!なんで!?」



 サルベーションコールは、そもそもダンジョン内での神器車呼び寄せのために研究したものだ。


 ダンジョンは異空間。そこに地上から、神器機構の何かを呼び寄せる。


 カラミティコールを応用した召喚機構で、門生成の魔導を流用し、招き寄せている。



 もちろん、ただ呼ぶだけではない。おまけ機能もいろいろついている。


 例えば、カラミティコールの効果は、そのまま上乗せされている。


 救援に向かった先で、緊急事態に対応できないといけないからね。



 なお、神器車側になぜこのちっぽけな魔導光が届くのかは、解明できていない。


 なぜか届き、召喚ができてしまった。


 使えるならいいかと、機能をそのまま実装している。



「エイミー、後ろ乗って!」



 素早く運転席に乗り込み、助手席側の後部座席のドアを開けた。


 彼女が乗り込んできたのに合わせ、ドアそばに魔導陣の端末を出す。


 浮かび上がった陣に描かれているのは、やってほしい超過駆動の仕様だ。



「そいつは『再生の炎(fire bird)』の変形だ。


 あっちだと一体に取りついたら終わり。


 これは制御が難しくなってる分、対応性に優れる。


 どう?」


「…………いけるわ。


 最大レンジ64ってなってるけど、これはどういう基準?」


「実際にストックに実験してもらった結果。


 それ以上は制御難度が高すぎて、同時展開できなかった。


 どのくらいの状況かは、詳細見て」


「…………わかった。


 あいつには効くの?」


「魔導から呪いに変換するから、効果は耐性を抜いて100%発揮される。


 温度が三℃上がれば瓦解するから、十分いけるはずだよ」


「出力を下げて、レンジ数を増やすことは可能?」


「仕様上は好きなだけ可能だ。制御者次第だね」


「…………いいわ。覚えた」


「よし。では」



━━━━『天の(Work)星よ(sorcery)。』



 展開している装甲が生み出す余剰魔力をもって、魔導を成立させる。



━━━━『一二三四五六七八九十(Invert)。布留部、由(the)良部、祓い給え(Magic)!!』



 車体の魔力流が、赤く染まる。


 こいつを通った祈りの力(魔導)は反転し、呪いの力(呪法)に変化する。


 二つは表裏一体。祈りは、呪いに裏返る。



 ロザリオの首飾りを外して、後ろのエイミーに投げた。


 バックミラー向こうの彼女が、受け取って――十字架の淵で掌を少し切った。


 血の滲む手を、端末に押し付ける。



「オーバードライブ!『怪鳥(flock) (of) 軍勢(fire)』!!」



 車体が爆発したかのように、その赤い魔力流から多数の火が飛び立っていく。


 カラスくらいの大きさの鳥の群れ……なんだが、エイミーの制御で、小鳥サイズになっている。


 鳥の鳴き声のような音が大量に響き、高い爆音のように広がった。

次投稿をもって、本話は完了です。


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