表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
231/518

14-4.同。~大事な友を追って~

~~~~ひゅー!やるじゃんスノー。そしてさすがエリアル様。


「コニファー……王女殿下」


「ミマス公とは、後ほどお話させていただく予定だ。


 我々はミマスに当面滞在するし、何なら滞在先もお教えしよう。


 何か問題があるかね?」


「いえ……」



 すっかり気圧されちゃってら。


 お仕事とはいえ、お疲れ様です。



「そちらの懸念もわかる。悪いようにはしない。


 任せてほしい」


「ぐ。ミマス公に連絡を取らせていただきますので、今しばらくお待ちいただければ」


「それで構わない。よろしく頼む」


「は。おい、公邸に連絡を」



 何人かが、囲みから外れて街に駆けだしていった。



 スノーが寄ってくる。


 やるじゃん王太子。



「姉上、遅くなってすまない。


 二人とも、大丈夫?」


「ああ、大丈夫だ」


「ボクも……ん?」



 何かまた、小さな違和感が。



「スノー、今なんつった?」



 ()()



 こっちに駆け寄ってきてたエイミーが――いない。



 ストックとエリアル様が、弾かれたように辺りを見回し。


 衛兵の囲みの――外側に駆ける。


 二人が拳を放つと、何者かが現れ……そして倒れた。



 まだいるのか!?



「スノー、わずかだが景色がぶれてる!


 そこを狙え!」


「はい!」



 雷光を迸らせ、二人襲い掛かる。


 動き回りながら観察すると、少しだがわかりやすい。


 四人、駆け巡りながら、打倒していく。



「なっ、これ、は……」



 隊長さんが、言葉を詰まらせている。


 倒したのは、どれもこれも大柄な男で……って多いな。15人!?



「検めてください。先の魔道具を持っているはず。


 ストック、これで全部?」



 エリアル様はもちろん、ストックも隠れてるやつがわかるようだ。


 この子、マイクロ波みたいなのを呪法で使えるから、そのせいだろうか。



「ぜんぶ、だ……」



 あ。



 思わず、辺りを見渡す。


 エイミー、どこだ!?


 エイミー!!



 くそっ、見当たらない!


 人が多くて、探しにくい!!



 その時。


 慌てるボクの肩に。


 そっと手が置かれた。



「緊急時ゆえ、お話はわたくし、ビオラ・ロイドが伺います。


 勝手ながら、皇女の捜索をさせていただきますね」


「え、それはしかし……」


「我々の客人ですので。お任せを」



 ビオラ様、いつの間に。



 見上げると。


 ボクの上司が――不敵に笑っていた。


 つられて口角が上がる。頭がすっと冷えた。



 ……しっかりしろ、ハイディ。


 脳の魔素を、活性させる。


 この街の地図を、思い描く。



 海側に出ればこの国からすぐ抜け出せるが、あちらには聖域もある。


 手配を回された場合、魔導船だと逃げきれない。



 連邦は国や領地で行政区分がかなりはっきり分かれる。


 そのため、その境を越えられると追跡がしにくいと聞いた覚えがある。


 その点を踏まえるなら、河を上って国内を移動し、そのまま北に抜けるのが容易だろう。



 帝国に戻るかどうかは確定ではないが、彼女が一度刺客に遭っている以上、そこをまず考えるべきだ。



 よし。



「姉上」



 スノーが……ボクを見ている。


 というか、この子が指示を出してもええんやけどな?


 だが。君が期待するというなら。



 応えて見せるのが、お姉ちゃんというものだろう。



「スノー、海側を頼む。見つからなかったら河に来て」


「わかったわ」


「エリアル様、スノーのフォローを主に。仔細はお任せします」


「ええ」



 拳を握り締める、彼女を見る。



「ストック」


「任せろ」



 頷き合う。



「ボクは河に向かう。本命はそこだ。追い詰めるぞ」



 雷光を、迸らせた。



「散開!」



 四人、それぞれの方向に走り出す。



 喧嘩を売るくらいなら、別に怒りゃしない。


 だがボクは、人さらいには容赦しない。


 覚悟しろ。




  ◇  ◇  ◇ 




 しかし、本気度が高いな。



 姿隠しの魔道具を使って、まずスリをけしかける。


 これで実行できれば、そのまま浚う気だったのだろう。


 失敗したと見るや、おそらくさっさと衛兵を呼んだ。



 その混乱に乗じて、十数人の体制で誘拐を敢行。


 そこまでしてエイミーを浚いたかったのか?


 第二皇女派閥は解体済みとのことだから、ちょっとその絡みとは思えないな……。



 しかも、エイミーの事情自体には、相手はかなり詳しいと見える。


 そうでなければ、ミマスで待ち受けるなんてできないだろう。


 北部寄りから連邦に入られたら、ここは通らない。



 彼女が南寄りにいるはずの聖域ジュノーに行こうとしているのを、知ってるということだ。


 この念の入れようからして、同行者がいること、およびその戦力にも見立てがついている。


 その上で計画的に、待ち伏せして誘拐に及んだ。



 目的と敵集団の背景が、見えないな……。



 考え事をしてると、暗い中に光が差した。


 錆びた鉄が軋む響きがし……また暗闇が戻る。



「よし、確保できたな。このまま河に向かうぞ」



 闇に慣れた目で確認。


 ん。顔は見えないが、連れてこられたのは、エイミーで間違いなさそうだ。


 先回りできたのは、僥倖だった。



 ボクは突っ張っていた手足を緩め――床に静かに降りた。


 紫の小さな光が、闇に煌めく。


 音もなく、5人ほどが倒れた。



 ここは河川港にほど近い、廃倉庫。


 中は大物を過去に積んでいたのか、かなり広くて天井が高い。


 今はほとんど何もないが。



 中に入っていく怪しい二人組を見たときに勘が働いて、倉庫に侵入して天井に張り付いた。


 会話がそれらしかったので待ち構えていると、案の定というわけだ。

次投稿をもって、本話は完了です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

――――――――――――――――

幻想ロック~転生聖女は人に戻りたい~(クリックでページに跳びます) 

百合冒険短編

――――――――――――――――

残機令嬢は鬼子爵様に愛されたい(クリックでページに跳びます) 

連載追放令嬢溺愛キノコです。
――――――――――――――――
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ