4-2.同。~時を遡るは、この業を突き返すがために~
~~~~そろそろ本は読み尽くしてしまった。結構あったんだが。
そして呪いの子。
これは、実際に未来から過去へ遡ってきた、と本人たちが言うらしい。
……ボクらはやはり、これかな。
で、呪いの子が未来を知る……未来から過去に戻る原理はすごい難しいんだが。
一応、本に推測を重ねた話が載っていた。
呪いってのは、決まった結果があって、そこから原因を辿る法則なんだそうだ。
原因不明で死んだ奴の、死因が呪いだと言われるような感じ。
合理的説明の枠から外れているものの、再現性のある現象について、その原因と法則を「呪い」と呼んでいるようだ。
例えばグレイウルフという魔物の群れと一人で戦った者は、最後の一匹に必ず殺されるとか。
これは『同胞報復の呪』というものらしく、群れをなす魔物を全滅させかかると、報復されるんだと。
この報復には強制力があり、かかると逃れられない。
そしてこの呪いというやつは、成立が失敗すると結果が原因に返るという法則がある。
先のグレイウルフの例だと、最後に邪魔が入るかして報復が不成立になると、グレイウルフが即座に絶命する。
「同胞を殺された恨み」という原因に向かって、期待した報復という結果が収束し、自滅する。
これを転じてボクらの状況に引用すると。
ボクとストックは、何らかの呪いで破滅する結果を築かれていた。
ところがこれが不成立となり、破滅が原因に向かって収束している。
…………思い当たるのは、ゲーム、だな。
あれにはいくつものルート?とやらがあるらしいんだが。
どのルートでも主人公ウィスタリアは最後に、悪役令嬢リィンジアにとどめをさされて、必ず絶命する。
リィンジアはウィスタリアにとどめを刺して力を使い果たし、命を落とす。
ところが、ボクらの結果は違った。
二人で結晶になった。先の結末が呪いによるものなら、呪詛が不成立となり、原因に返る。
原因。ボクらを破滅させる……いや、戦い合わせる原因、かな?
何だろうな。ボクたちは、何に自分たちの破滅を返しに行こうとしているんだろうか。
少なくとも、それはボクら自身の何かではないのだろう。
ボクらに原因があるのだとすれば、ただ絶命して終わりのはずだ。
何かがボクらを呪っている。そいつに破滅を押し返せば、この呪われた運命は終わる。
できなければ……どうなるんだろう。また、繰り返したりするんだろうか。
とにかく、このように……呪われた因果が失敗した結果、過去に戻る人間がいるらしい。
本にあったこの原理自体は、推論を重ねたものだけど。
自分に照らし合わせてみるに、概ね合ってるんじゃないかな。
……原理の理解はなんとなくできたけど、呪いの元、か。あまり興味は沸かないな。
もちろん遭遇すればばっさりやるし、向こうから来るなら容赦はしないが。
ボクは、ストックの救いになれれば、もうそれでいい。
…………あいつ、どこに行ったんだよ。ちょっとほっとき過ぎだろう。
ここ来た頃は、そろそろ暑くなるかってくらいだったのに、最近は夏まっさかりだ。
ボク、そろそろ5歳になっちゃうぞ?
ボクに手伝えることがないのは、わかる。あるなら連れてったはずだ。
しかも、割と人任せなことなんだろう。自分であれこれわかることなら、何か言ってから行く。
今も連絡が寄越せないのは……機密に抵触するからか。
思わず盛大なため息が出た。ついでに伸びをする。
さみしがり屋が、ずいぶん頑張ってるんだ。
ボクも、ボクにできることをしておこう。
直近でボクらが10歳頃。帝国のタトル公爵が、王国西方の聖域『ドーン』に侵入。
ストックを浚い、彼女の母であるモンストン侯爵ヴァイオレット・ロイド様を害する。
これが、王国が傾く一つのきっかけになる。
当時の状況は後から調べてある程度分かっているが、詳細は不明だ。
おまけに、前と同じになるかも不透明だ。
そのため防止や迎撃を考えるより、タトル公爵の打倒が戦略目標としては正しい。
できる備えをしよう。
まずは、雷光をものにしないと。
次の投稿に続きます。




