表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
228/518

14.南洋を通り、連邦最南端の街、ミマス。入国。

――――「単車乗りにはヤバイ奴しかいない」。その風評は、残念ながら間違いではないようだ。

 あれから数日。


 イスターン連邦所属デクレス王国南端の街、ミマス東部の荒野。



 …………何の問題もなく、ここまで来れてしまった。


 ここのとこまたトラブルが続いたから、ちょっと警戒してたけど、拍子抜けだ。



 エルピスに荷を積み込んで、留守番組とお別れし。


 ボクら六人を乗せて、舟はドーン南から、海洋へ出た。



 河川同様、特に揺れることもなく。魔物に遭うこともなく。


 連邦と魔境の境目の山脈を、海からぐるりと回り込み。


 砂漠となった元魔境を越えて。



 ついでに、遠くに海洋常駐の聖域、カッシーニを見て。


 ミマスの近くまでやってきた。


 河川出口でもあり、海洋にも接している、大きな港街だ。



 エルピスは少々大きいので、ボクらは少し東で上陸し、そのまま陸路をやってきた。


 街の外で停泊。街には神器車で入り、入国やら、ジュノー入場の申請やらで、いろいろやることになる。


 街を治める貴族の、ハーシェル家の方ともご挨拶することになるかな。所長とスノーが。



 今ちょっとストック待ちなので、少し連邦のことをおさらいしておこう。



 イスターンは南から、デクレス・ミクレス・インクレスという三つの王国が参加している連邦国家だ。


 中央から東が砂漠地帯、大きな河を挟んで、西に三日月状の穀倉地帯が広がっている。


 北が草原地帯・帝国・魔境と接してはいるが、それ以外は河と海、山脈に囲まれて、比較的平和な国だ。



 攻撃等を中心とした、出力の高い魔術を扱う武力に寄った国家でもある。


 ただ、帝国と違って喧嘩するよりゃ商売する方が性に合ってるらしく、そこのとこはエングレイブ王国に似ている。


 王国同士の連邦制というので少し特殊な国ではあるが、内部は王と貴族が成している普通……普通?の封建社会だ。



 そして砂漠寄りの街と、穀倉地帯寄りの街でかなり文化が違う。


 いがみ合うというほどではないが、河を挟んで東西で相容れないというか……。



 ミマスのような河のこちら側は「中寄り」。向こう側は「河向う」と呼ばれている。


 以前、ダリアに聞いた。



 そのダリアはこの連邦の、王族の一角。


 三つの国にはそれぞれ王がいて、さらに連邦の象徴たる首長「武王」がいる。


 武王を含めた王は、五つの「氏族」の者がなっていることが多いらしい。



 今代の武王はダリアのお父さま、アーサー氏族の長、ジック・アーサー様だ。


 アーサー氏族はミクレス王国に縁が深いが、そちらの王は氏族の別の方がなっているらしい。



 そして王になる氏族たちとは別に、爵位を王からもらって街を治める貴族たちがいる。


 ここがややこしいが、氏族でも爵位をもった貴族なことはあるが、有力貴族は氏族ではなかったりする。


 有名なのは、ミマスを収めるハーシェル家と、聖域の名にもなってるカッシーニ家だな。



 両家とも、複数の街や聖域を治めている。一人が複数の爵位・領地を持っていることもあるそうな。



 ストックが舟の点検を終えて、助手席に滑り込んできた。


 これで出発できるな。



「出るけど、忘れ物ない?」


「こちらは大丈夫だ」


「私も……うん。へーき」



 エイミーはボクの後ろの席だ。


 エイミーが乗ってた神器車に、ビオラ様、スノー、エリアル様が乗ってる。



「基本、戻るまでは一緒の行動だから、はぐれないように。


 エルピスは離れたら自閉させるようにしてるから、入れなくなっちゃうからね」



 誰か残ってたほうがいいのはいいが、分散も得策ではない。


 そこで、正式に停泊の申し入れをした上で、監視の人を街に出してもらう方針になった。


 舟そのものは動かないようにしてるわけで、いたずらされる心配もない。



 魔力光とかを検知して展開する、自動防御陣とかあったら使いたいとこだが。


 …………エイミーに聞いたら出てきそうだな。そのうち考えてみようか。



「はーい」


「手続きを済ませて、滞在先を探さないとな。


 それから、作法を気にしなくていい麺処を見つけるか」



 聖域入場の件もあるから、たぶんここで数日、足止めになるだろうからね。


 舟に泊ってもいいんだが、それは情緒がない。


 旅行は楽しまなくては。



「えっと。ほんとに私、ミマス公には会わなくていいの?」



 手続きはどのみち六人で行うが。


 その後、宿を探したりするのはボクらがやる。


 偉い人へのご挨拶が、所長たちの担当だ。



 集合の場所や、連絡の段取りなどは決めてある。


 この辺は、ミマスに来たことのあるエイミーのおかげで、見通しを立てるのが楽だった。



「それがよかろ。というか、王国の王女と、帝国の皇女が一緒に訪問とか。


 もうちょっと、相手の胃をいたわってあげたほうがいいって」



 王国と帝国はいろいろあって、長く緊張した関係だ。


 ビオラ様とフィリップ帝のように、婚姻が結ばれることもないではないが。


 顛末がご覧の有様になっているように、あまりうまくいくことはない。



「そういわれるとそうね……。出迎える方が大変だわ」



 ビオラ様の運転する神器車が、先に出ていく。


 ボクもアクセルを緩く踏み、サンライトビリオンを後に続かせた。



 舟の車庫から、外に出る。


 後方でシャッターが閉まり……そのままエルピスが、ただの石材になっていく。


 完全停泊用の自閉モードだ。中に人がいるなら、魔力流とかはそのままにするんだけどね。



 ここまで、魔物にも人にも襲撃されていない。


 しばらくはこのまま、穏やかな日々になってほしいなぁ。



 遠くに見える外壁に向けて、ハンドルを切る。


 まずは入国からだな。

次の投稿に続きます。


#本話は計5回(10000字↑)の投稿です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

――――――――――――――――

幻想ロック~転生聖女は人に戻りたい~(クリックでページに跳びます) 

百合冒険短編

――――――――――――――――

残機令嬢は鬼子爵様に愛されたい(クリックでページに跳びます) 

連載追放令嬢溺愛キノコです。
――――――――――――――――
― 新着の感想 ―
[一言] 動画投稿者の一人に単車乗りの人いるけどヤバい・・・バイクの後ろに折り畳みの自転車載せて山の駐車場に行きそこから自転車背負って登山してましたわ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ