13-6.同。~恋よりも得難く、甘美に忍び合う~
~~~~今回は君が悪い。ふふ。また次ね。
「んん?ああ、うちはどうかってこと?」
「そう」
「あんま参考にはならんだろ?ストックは普通に、同性愛者だし」
「ん”」
ストックがなんか赤くなっとる。なんでや今更。
「だから気になったのよ。姉上とじゃ、趣味が合わないでしょうに」
「合ってるよ。エイミーも大丈夫って言ってたじゃないか」
昨日話してたやつである。
エイミーの感覚としても、ストレートなはずのボクの方が興奮を覚えるなら。
伴侶として問題がないということなのだろう。
こういう問題が、性癖とかそこにばかり集約するものでもなかろうけど。
まぁ、大事なとこではあるよね。
まだ八歳で、経験もさっぱりないボクにはまだよくわからんが。
「あー……そういえば言ってたわね。不安はないの?ストックは」
「ないな。いろんな意味で、ハイディはマメだ。
むしろ、私の方がズボラで申し訳ない」
「君はちゃんとしてるよ。多少間が悪いだけさ。
ボクはそういうところも含めて――――とてもいいと思ってるんだよ?」
「そうなんだろうなとは、思っているがね。
意地というやつだよ。ちょっとは恰好がつけたい」
「確かにこう……何の心配もいらない感じね」
妹が肩を竦めておる。
「なんだ。そっちはさっそく心配事か?」
「んん”。その…………」
スノーがちらりとストックを見る。
「なんといえばいいのか。
思いの丈、というか。なんというか。
そういうの、どうしてるのかな、と」
思いの丈て。上手なオブラートの包み方だとこと。
「あー……そりゃ何の参考にもならんと思うよ。
うちはお互い、お預けの指針だしな。
それより適任がいる。
歳が近いし、聞けるうちにミスティとメリアに聞いてこい」
あそこも我慢を強いられてるクチだが、うちとは状況が違うだろう。
ボクのように、この状況がいいっていう変態ではあるまい。
「それはちょっと憚られるのよ……」
あれか。お相手の娘にそういうこと聞くのは、難しいか。
普通あり得るシチュエーションじゃないしな……。
「気持ちはわかるが、メリアは憚らんから大丈夫だ」
「気楽に言うわね」
「そりゃあの子のことはよく知ってるからな。
参考になるかの保証はできんが、悩んでるくらいなら聞いておけ」
そんなんでギクシャクしようものなら、それはいくらなんでももったいない。
先達に聞けるところは聞き、健全に睦みあうがいい。
「ありがとう、姉上。そうするわ。
ちょっとクルマ借りていいかしら?行ってさっさと戻ってくるから」
ミスティとメリアは居残り組なので、ドーンで何やらお仕事中だ。
「貸したげたいけど、セキュリティチェック通らんだろう?
今積んでる二台は……いや、エイミーのは通るかもな。
さっきキッチンにいたから、そこか下層の広場を探してみるといい」
「わかった。ダメなら、詰め所で公用車を頼むわ」
手をひらひらさせて、王女が奥に消えて行った。
「ストック」
「なんだ?」
「我慢はしんどい?」
「いや。これも得難い時間だよ。
お前といられて、辛いことなんて、ない」
思ったより迷いなく答えられたな。
誕生日のときとかは、割とお辛そうに見えたんだけどなぁ。
まぁそもそも、八歳児の体でそんな切羽詰まるもんでもないかな?
ミスティやビオラ様は成人してるから、そっちは事情が違うだろうけど。
「ハイディは大丈夫なのか?」
お。なんだねそのいたずらっぽいお顔は。
かわいいじゃないか。
「そこがダメなら、ナーガナーガはボクが止めを刺していたさ。
お察しのようだが、ボクはちょっと普通の乙女とはツボが違うのだよ」
愛しい相手からのプロポーズを邪魔されたら、普通切れ散らかすだろう。
ボクは逆に悦んでいたが。
「ああ……女性が惹かれるような男性の在り様には、むしろドン引きするんだったか?」
「そうそう。まぁ――そもそもダン王子については弟なんだから、それで正解だったわけだが」
それを知ったのは前の時間。彼と交流のあった頃より、少し後の方だったけどね。
あと5人ほど、ゲームの攻略対象?はいるはずだが。
そっちは単純に、趣味ではないなぁ。
なおバイロンとカーティスは違う。
普通攻略対象?って王子三人な気がするが、違ったんだよなぁ。
あの子たちも、クレッセント自体には来てたけどね。
あれでも。その5人と思しき人たちは、クレッセントにはいなかったな。
何か、ヒロインの近くに来る条件みたいなものでも、あったんだろうか。
ルート?だっけか。そういうやつ。
「ヒロインに恋愛なんてさせる気、なかったんじゃないか?あのゲーム」
「ボクもそう思う。主役を降りて正解だよ」
さて。
少し体を伸ばす。仕事の本番は、むしろここからだ。
そろそろ、上から貨物車が来る時間のはずである。積み込みをしなくては。
「下降りて、貨物車を待とうか」
「ん。そうしよう」
おっと。
そうさりげなく手を差し出されたら、とらぬわけにはいかないね。
「君だって、十分マメじゃないか。ストック」
「隙あらばお前に触れたいだけさ。ハイディ」
こら。指すりすりすんのは、ちょっと欲望滲み出すぎだと思うぞ?
人が来るまでだからな。
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