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12-5.同。~第二弟発見。正しいだけでは戦えない~

~~~~六歳ってこんなかなぁ?自分が特殊だからよくわからねぇ。聡明で、いい弟だが。


「まぁそれはそれとして、ボクはずるしてたけどね」


「え。ずるって、なんでしょう」


「魔素制御って、聞いたことある?」


「はい。武術を嗜まれる方がやるものですよね?」


「うん。それ、頭にも使える」


「…………やってはならない、と読んだ覚えがあるのですが」



 読んだ、ということはあれかな。


 ボクもクレッセントで目を通したことがある。


 もちろん、とっくにやっちゃってバリバリ使うようになった後だ。



「どうして、という部分があいまいな記述のやつだよね?


 ボクやビオラ様は使える。


 ひょっとしたら、スノーもできるかも。


 いろいろ検証した結果として言うけど。


 『脳の魔素を操ると、己を失う』というのは、うそっぱちだったよ」



 その程度では『役』の縛りは、消えてくれない。


 ボク自身の中からはなくなったとしても、世界にそれがあり続ける。


 大嘘にもほどがある。



「まぁ非常に難しいらしいし、興味がある場合は……大人の武術家に頼んでみて。


 ドーンにいる間なら、ヴァイオレット様かなぁ。


 あの方なら安全に指導できるし、やるとなったら責任はとってくれるから」


「…………わかりました。ありがとう、ハイディ姉さま」



 あれは、多数の情報を組み合わせるのに有用だ。


 ボクみたいに、才ある閃きを得られなくても。

 

 無駄知識の仕入れに余念がないクチには、ちょうどよかった。



 バイロンがボクと同じだとは、言わないけど。


 その一助になってくれればいいとは思う。



「さて、ではボクはそろそろ行くね」


「はい。お仕事がんばってください」


「ありがとう。


 あ、そうだ。カーティスってどこにいるか知ってる?」


「カーティス兄さまは……体を動かす方、だと思います」


「なるほど。助かったよ」



 せっかくだから、探してちょっとお話してみようかな。



 扉は閉めず、書庫を出る。


 室内を見ると、少し緊張の解けた様子の、末の弟が見えた。


 急に国外脱出やら襲撃があって、大変だとは思うけど。大丈夫そうかな。うん。



 よっし。次の兄弟探すか。




  ◇  ◇  ◇ 




 口止め料のおつりでいただいた情報に従い、下層奥にやってきた。


 体を動かせる場所として、倉庫奥の空間を小運動場のようにしてあるんだよ。



 さてそこに来たわけだが。


 何か盛大にのされて、淑女にあるまじき倒れ方をしているお仕着せの子と。


 ちょっと呆然としている黒髪の王子がいた。



 あと、その様子を見ているギンナとスノー。



「ベルねぇ……」


「ち、がうの。ハイディ。これは……」



 起き上がろうともがいている。



「一手ご指南いただきたいと頼み込んで組み手、一撃でのされた。


 何か間違ってる?」


「……………………何も間違っていません」



 メイドは不甲斐なくも沈んだ。


 まったく、何が違うというんだ。誤解のしようもない状況だろうに。



「加減ができず、申し訳ない……」


「あー……バイロンから、君は事情を聴いてるって聞いた。


 砕けて構わない?カーティス」


「あ、はい。姉上」



 カーティスが姿勢を正す。


 ……ボクが砕けるっつってんだから、そこは気を抜いていいんじゃが。



 スノーを一瞥すると、にやりとされた。こいつめ。


 ダンの件は、最後は君に押し付けるからな?



「ん。フェイントで打ったら、全力で当たりにこられたんでしょう?」


「見て来たように言いますね。見てたんですか?」


「いいや。ベルねぇは正解がわかるんだよ。


 転じて、間違いを軽んじるところがある。


 フェイントだと看破し、本命に備えようとして。


 そのまま拳を振り抜かれたんでしょう」


「……………………申し開きもございません」



 メイドが倒れたまま呻いている。



 ボクも同じように撃退したことがあるから、わかるんだよ。


 ベルねぇは緩急虚実を織り交ぜられると、大変弱い。


 さすがに10年も経てば、その悪癖は修正されるだろうけど。



 前の時は、ボクに散々ぶっ飛ばされて直った。


 学園に行く直前くらいに、この人が妙に対人に弱いのが発覚して。


 それで組み手をしてみたら、ご覧のあり様だった。



 さすがに、素手で魔物の皮膚を打ち抜けるほど練り上げられてはいなかったし。


 これではいかんと矯正した。



「直し方は分かりますか?姉上。


 幾度か組み手してますが、さすがにその……これは不憫で」



 全力で哀れまれている。


 すごい能力だし、鍛えてもいるのに、それに振り回されてる形だからねぇ。


 しかしカーティス、よくそのあたりまでわかるな?戦闘絡みなら頭が回るのか。



 前の時は、あまり得意なこと以外に関心を示さない人だったからなぁ。


 戦闘は得意だったが、つまるところ、戦闘に絡めれば世界が広がるクチなんじゃなかろうか。


 七歳時点でこうってことは、その方向で伸ばせば、もっと傑物になったろうに。



 で、ベルねぇだが。



「戦闘に『正語り』の力を使わない。それで直るよ」


「そんな!?」



 がばっと起き上がって抗議してきた。


 しょうがねぇなぁ。



「戦闘に入ってから正解不正解を考えてるから、そんなことになるの。


 入る前から、勝利への正しい道を読み切っておけばいい。


 読み切れぬうちは、防備に徹していればいい。


 ベルねぇは判断が不得意なんだから、その機会を減らす。


 先に決めて、その通りにやればいいんです」


「それは……戦いの最中に何か起きたら?」

次の投稿に続きます。


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