表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
216/518

12-3.同。~末の弟発見。趣味と実益を話す~

~~~~よく悶えた……正直自分が恥ずかしい。今のボクに、彼女の指輪を受け取る資格は、ない。急ごう。


 特に消耗なんかはないだろうけど……まずは書庫から見ておくか。


 ここから近いしな。



 この舟の中で本格的なものを設けるつもりはないが、いわゆる仕事部屋もある。


 当然、仕事に使う資料もなければならないわけで。


 今回の研究開発で取り寄せたりしたものとかは、割とエルピスに運び込んである。



 書庫についた。ドアは開いてたが……扉をノックしてから、入った。


 誰かと思ったら、ドアから見えるところの床に、バイロン王子が座っている。


 大判の本を取り出し、それを読んでいたところのようだ。



 しかし、わざわざ舟まで来たんか。本が読みかけだったとかかな?



 彼は第三王子。血縁上、ボクの末の弟にあたる。


 ダン王子は知らない様子だったから、ボクが姉だっつーのは伏せておかないとな。



「あ、あね!……っ」



 アウト~。


 顔を上げてボクを見た彼が、早速口走ってくれた。



「スノー……コニファーに話は聞いてるから、大丈夫だよ。


 非公式の場では砕けても構わないね?バイロン」


「あ、はい。ウィスタリア姉さま」


「コニファーのことは、何て呼んでるの?」


「非公式の場では、スノーと」


「じゃあボクのことも。ハイディと呼んで。


 それが魂の名だ」


「はい。ハイディ姉さま」



 んむ。素直ないい子だ。


 さてまずは……椅子を出そうか。



 立ち上がろうとするバイロンを、手を向けて押しとどめ。


 入ってすぐ左の壁あたりにある、椅子と机を持ってきた。



 書庫は壁付けに棚がぎっしり入ってて、本は8割がたは入っている。


 とりあえず使う分だけはそろってる、くらいかなぁ。調べ物には、まだまだ不足だ。



 手近な棚に表示されている、本の背表紙に触れる。


 シャッターのように膜が上がり、中の細い空間から本を抜き取る。



 蓋のようなもの、かな。


 普通の本棚だと戦闘駆動で大変なことになるので、保護機能を設けた棚なんだよ。



 取り出したのは、魔道具のエネルギー効率についての一冊。


 大型化小型化の話を交えて、現代魔道具の設計のあれこれが載っている。


 後で私室に戻った時に見返すようだ。一読はしてある。



 バイロンに椅子を勧める。


 彼が本を持って座ったのを見て、ボクも腰かけた。



 ん……今度ここ、飲み物淹れられるようにしようかな。


 ボクは読書には飲食が欲しい派だ。


 あるいは書庫じゃなくて、隣に読書室でも作るかね。部屋はだだ余ってる。



 彼の手に取っているのは、神器の歴史、か。


 やっぱそういうところに興味があるのかな。古書も読むらしいし。



「ちょっと蔵書が少ないけど、少しは未読のものがあった?」


「7割がた読んだことがありません」


「実用書や研究関係が多いからねぇ……」



 とはいえ、三割既読というのは、むしろすごいんではないか?



「やはり、お仕事に使うからですか?」


「ん、んー……実はこれ、ほぼ趣味で集めたものなの」


「趣味?本を読まれるのが?」


「実用向きの知識を仕入れるのが、ね。


 他の国の法律書とか、意味もなく内容覚えてるし。


 今回の研究開発で、テーマに引っかかるものをそろえてはいるけど。


 それは予算を使っても怒られないからなんだよね」



 王子がちょっときょとんとしている。


 そして少しだけ、口元が緩んだ。


 慌てて本で隠してるけど。



「お仕事のお金で、趣味の本を買っている、と」


「そ。内緒だからね?」


「分かりました。その代わり、読ませていただければ」


「何なら、ここから奥の棚のだったら、持ちだしても大丈夫だよ。


 全部読んでるし。


 読み終わるより出港の方が早かったら、ロイドに置いておいてね」



 人差し指を立てて、声を潜める。



「口止め料、ということで」


「はい。受け取ります」



 ちょっと笑い合った。


 よしよし。



「そういえば、ダンはボクのこと知らなかったみたいだけど。


 カーティスは?」


「知って、ます。


 スノー姉さまから、ダン兄さまには言わないよう、口止めされてて」



 なんでや妹よ。



「二人、仲が悪かったり?」


「そんなことは、ないです。


 ただ、ダン兄さまが、モンストン侯爵令嬢を気にしていたので。


 その……」



 ははぁ。


 推定「姉の良い人」を狙ってやがったから、と。



「痛い目見せてやっておこう、とでも?」


「はい。スノー姉さまがそう言って、いました」


「痛い目どころか、斜め上に吹っ飛んで、脳が破壊されそうやが。


 やりすぎでしょ、スノー」



 バイロンがちょっと吹いた。



 もちろん、ダンが勝手に吹っ飛んでっただけである。


 同情はするが、ちょっとフォローは無理だな。


 姉ちゃんとしては、変な歪み方しなければなんでもいいや。



「今日は他の子とも一緒に来たの?」



 なお、ボクとストックは昨夜からここに寝泊りしてる


 補給物資の受け取りとかもあるので。



「はい。カーティス兄さまは一緒です。ダン兄さまはドーンですけど」


「ほー。誰に連れてきてもらったし?」


「ファイヤ大公令嬢、です。あとスノー姉さまも」



 んじゃあ、ベルねぇやビオラ様もいそうな気がするなぁ。


 いつの間に来てたし。



 そういやこういう内部の情報を知る手段って、用意してなかったなぁ。


 エイミーに聞けばなんか出て来そうだし、相談してみようかしら。


 その方が、メンテナンスとかにも便利だよね。

次の投稿に続きます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

――――――――――――――――

幻想ロック~転生聖女は人に戻りたい~(クリックでページに跳びます) 

百合冒険短編

――――――――――――――――

残機令嬢は鬼子爵様に愛されたい(クリックでページに跳びます) 

連載追放令嬢溺愛キノコです。
――――――――――――――――
― 新着の感想 ―
[一言] メンテナンス・・・通信菅とかがメジャーかね?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ