11-4.同。~ここに百合の花多く~
~~~~ボクらの間で年の話は禁句だろう。恋愛話は……まぁ盛り上がるのは無理はないか。みんな相談したいよな。
あれ。スノーはご存知なかったか。
外国人のエイミーは知ってるのに、意外だ。
まぁ幼児だし、行政に触れる機会はさすがになかろうしな。
エイミーはひょっとしたら学園に通ってるかもだから、そのせいかな?
あそこでは話題になったろうからね。
「キース宰相主導で、進められたんだよ。
特に禁じてる法根拠はなかったから、最初は契約省内部の規定変更して。
その後に詳細を詰めて議決とって、正式に法改正。
今年の1の月1の日以降は、同性の婚姻届けは正式に受理されてるはずだ。
まだ数は少ないっていうけどね」
法改正から施行まで、ちょっと間があったんだけどね。
慎重にやったからなのか、特に反発とかそういうのはないらしい。
王国民はおおらかだなぁ。
なお「禁じてる法根拠がない」とは。
法文に婚姻を男女のものとする規定が、なかったからだ。
ただ慣習的に、男女結婚であると解釈されていた。
明文がない状況なので、これまでは慣習の方が優越し、行政はその方針で動いていた。
法改正されて、明確に異性、同性とも婚姻を認められるようになり、慣習は撤廃された。
もしかすると……遠い昔は、普通に認められていたのかもしれないな。
そうでなければ、元の法文が制定された説明がつかない。
明文にしておかなかったのは手落ちだと思うが。
ひょっとしてその頃は、同性婚は当たり前だったのか?
「うそぉ……」
「ほんと。王家じゃ、幾度か伴侶が同性ということがあったから。
それの解消を意識して、速やかになされたみたい。
まぁもちろん、宰相閣下が娘の熱意に絆された結果、でもあるんだろうけどね?」
「えぇ~……」
スノーが引いてる。なんでや。
やっと落ち着いたストックが、ちょっとにやりとしている。
「そもそも、王都の移設だってそうだ。
ストックが、そこんとこを意識して推し進めた結果だぞ?」
しかもボクが知らん間にな。
実家と接触できないと、仲を進めることができない、という話はしてあるが。
そしたらダイナミック遷都を提案してこられたわけだ。
「え、え?どゆこと?」
「今の状況でボクが実家に帰ると、また浚われるかもしれない。
そこはそうなんでしょ?スノー」
「ええ、まぁ。その危惧は合ってる」
スノー自身か、王家側がそういう認識ということか。
「当然だが、お会いできない状況でボクの身分は復帰できないよな?」
「それはそうね」
事務手続き的な証明はそりゃーできるだろう。
だが王族籍の復帰は過去に事例があり、王が認めることになっているのだ。
対面必須である。だから実家との接触がカギになっていた。
「そしてお二人は、王都の外になかなか出られない。
特に国王陛下は、王都から動けない」
「合ってる」
これは精霊の都合。特に国王は、王家精霊がいるところしか動けない。
王妃は外にも出られるが、ぶっちゃけかーちゃんだけ出てこられても、話が進まない。
「でも、実家の身分がないと、ボクは孤児の平民。
ストックは侯爵令嬢。
つり合いはまったくとれんな?」
「え。つまり婚約したいから、という理由で。
王都が安全になるように、移設させようとしてるってこと?
新技術まで開発して?
国を巻き込んで?
…………まじで?」
妹の目が文字通り点になっている。
「ほかに何か戦略目標ってあった?ストック」
「あるわけないだろ。
あったとしても、それは私のじゃない」
ん。いいね。
君の誇らしげなお顔は、とても美しい。
「良い仲だとは聞いてたけど、そこまで……?
姉上、ロック過ぎでは??」
何がどうなってそういう結論になった。
そもそも、この場合ロックなのはストックだろう。
「羨ましいわ、ハイディ。
私やっぱり、王国の子になろうかしら……」
……んん??
何か怪しい言及だねエイミー???
「君、自分を高く売りつけに行くとか言ってなかったか??」
「そうよ。派閥が解体されて。
継承権はく奪必至の皇女なんて、それくらいしかないでしょ。
でも、雇ってくれるのよね?」
「まぁね。君を放逐したらやばいものできるの、目に見えてるし。
ボクらが固まってた方が、世のため人のためやろ」
「エイミーも、ハイディ側だったのか……」
メリアが微妙に引いてる。
なんでしょうその線の引き方は。
「ところでエイミー。じゃあソラン王子は??」
「あ、それはぁ……もらわれるならその方がというか。
素敵な方だとは思うし。
私じゃ、明らかにつり合いとれないけど」
くねくねしている。
ダリアのお兄さまだから、存外お似合いだとは思うがな?
でもそうではない、と。
男性がダメというわけではないのだな。
その辺はストックより、ダリアに近いかな?
「じゃあなんでジュノーに行こうってなったし?」
「ちょっと用があるのよ。
ついでに拾ってもらえれば、とは思ってた。
ただ、あなたが思ってるほど色っぽい話じゃないわよ?」
なるほど。
ジュノーにソラン王子がいること自体は、間違っていないと。
「ほーん。まさか、妹狙いではあるまいな?」
「ちがっ。マリーちゃんの邪魔はしないわよ……」
今更だが、あの二人は他人が見てもそう見えるくらいの関係性になっている。
いつの間にか、マリーの方が、ダリアにだいぶ執着してたんだよねぇ。
マリーがダリアに告られて、お返事保留にしていたが。
時間がかかるとは何だったのかというくらい、速攻で仲良くなりよった。
そして普通にマリーとも知り合いか、エイミー。
「あの、姉上」
「なんだね妹。ほれ、ドーナッツ食え」
「わーい!
ん。なにこれおいしい……さくさくなのに、口の中でほろほろする。
……ではなく。
あなたのまわりでは、女性同士の色恋沙汰は普通なの?」
…………。
んん?言われて見ると、ちょっと多いか??
次投稿をもって、本話は完了です。
# 日付をまたいでの更新になります。




