11-3.同。~ついでにかしましく年の話をする~
~~~~よく食べる子多い。多くない?よく供給が間に合ってるな、ボク。
「ええ、知ってるわよ。
王女が他国の人間に愚痴るとは、よっぽどね……」
妹が、ストックとメリアとエイミーを順にみながら言う。
ああ、ストックが前の時間で帝国人なのも知ってるのかな。
なお、ダリアとマリーはクレッセントに来たのがちょっと早い。
なので、スノーとは顔見知りだ。
それはともかく、ボクはドーナッツの準備と、油壷二つで野菜を揚げるのに忙しい。
ひたすら野菜を取り出しては、皮を剥いたり芽やヘタをとったりし、切って衣つけて揚げてる。
焜炉三つフル稼働は久しぶりだな。腕が鳴るぜ。
メリアが席をそっと立った。
お茶の準備だな。
「ラ……エイミー。酒は飲む方か?」
「かなり行けるわ!」
「私は席を共にしたことがあるが、私より飲むぞ」
そっか。ストックは前の時間で、エイミーと顔見知りか。
メリアが知らないのは、たまたま縁がなかったのかな?
メリアは、タトル公爵としてのストックとも、面識がないようだったし。
「ああ、そりゃ相当だ。メリア、辛めでなんか作ってあげて」
「わかった」
お茶のついでに、メリアに適当なカクテルを頼んだ。
彼女なら間違いはあるまい。
ドーナッツの第一陣を油から上げて、砂糖をまぶしておく。
「ミスティ、お待たせ。
お茶が入るころには、良い温度になるから」
「待ってました!ああ、魅惑の香り……」
カロリー、油、糖分。暴力的な魅力だよね。
ミスティは、甘いものならボクも引くほどたくさん食べる。
体型が崩れたりしないのは、不思議だ。
メリアに結構食べさせられてるはずなんだが。
頭脳労働担当は、消費量が違うんだろうか。
「ふぁいふぃふぁふぁふぃふぃふぉ!」
慌てて口にものを入れたまま喋るな王女。
何言ってるかはわかるけど。
「スノーは最後ね」
「ふぁ!?」
「八歳児でも、作法は守りなさい。
揚げ過ぎたら全部君に回すから、ゆっくり食べな」
「ふぁいふぃ……」
なんだねお隣でいい感じのカクテル作ってるメリア嬢。
その何か言いたげなお顔は。
あとそのきれいな蒼になってくカクテル、知らないから後で教えてほしい。
「ハイディはおかんみに、磨きがかかっているな」
「そんな馬鹿な。ボクはまだ八歳やぞ?」
「もうアラサーだろうに。そんなに見栄を張らんでも」
ここ、クレードル半島は半島で同一語圏だ。
その言語・クレードル語は、まんま日本語である。
地球文化は謎の魔結晶持ちしか理解はないが、言葉に関しては割と浸透している。
アラサーとかアラフォーとか、普通に聞く。
もちろん、本来は八歳児が交わす内容ではない。
「メリア……それは自虐では。
ボクは4つの頃に遡ったが、君やストックは……」
前の時間を加算すると三十路になってしまう二人が、沈痛な面持ちをしている。
この子たちは22から赤子に戻って、今八歳だ。
「姉上、それ以上はいけない」
「そういやスノーはどうなんだ」
「ハイディが四つに戻ったというなら、同じね」
おや意外だ。
ボクは理由があって四つにした、というか。お願いしたというか。
でもスノーは何でだ。
「へー。その頃になんかあったの?」
「あまり赤子で戻っても、お母さまの負担になると思ったから。
意外に融通が利いて、自分でも驚いたけど。
姉上はなんでその頃に?」
ええ子や。
そういやお母さまは三つ子のあと、年子でさらに二人産んでるしな。
そのうち長女が行方不明とあっては、当時は大変だっただろう。
「エリアル様が、ボクを聖国から連れて逃げた頃に戻った。
その前に戻っても、自由にならないからね。
本来ならその後、魔都の方に連れてかれるんだけど。
ボクがクルマ運転して、王国までやってきた」
「エリアルが一緒だったのね……それはスムーズだわ」
ん、スノーはクレッセントでエリアル様に会ってるか。
だから知ってるんだな。
今生でも会ってそうだが。
「ところで、エリアル様も連邦に同行すんのは何でだ。
理由を聞いてもいいやつ?」
「申し訳ないのだけど。本人の希望でもあるのよ?」
「ほーん。ならいいや」
本人が家の仕事ではなく、こっちを優先ねぇ。
まぁボクを聖国から連れ出したアレな人だし、なんかあるんだろうけど。
だんだんこちらの調理ペースが、消費に追いついてきた。
そろそろエイミーとスノーはよさそうだな。
遠慮してたメリアとストック用に揚げてくか。あとはドーナッツメインだ。
「そういえば聞きたいことがあったのだけど」
エイミーだ。ほんのり赤くなってるが……酔ってはなさそうだな。
顔に出るクチか。
「ハイディとストックはお付き合いしてるの?」
ストックがお茶吹いた。もったいない。
火を弱めてから、布でストックのお顔と周りをさっと拭く。
むせてるので、背中さすっとく。
揚げの欠片でも入ったかな?水差しを用意しといてよかった。少し飲ます。
「目の前でいちゃいちゃされれば、そりゃ気づくか」
「やっぱりそうなのね、メリア。
……この滑らかな甲斐甲斐しさ。
私が拾われてからも、とっても仲がよかったし。
あと、王国では同性婚が可能になったんでしょう?
だから周りも、理解があるのかしら」
「いやいやいやいや。
別に精霊信仰は同性愛を禁じてはいないけど、そんな法律は……」
「去年から施行されたよ?改正婚姻法。知らなかった?スノー」
「…………は??」
次の投稿に続きます。




