10-3.同。~不穏と共に、待ち伏せ現る~
~~~~そも、その発想で作ったんじゃないか?その監視魔道具。違うのかな。
「すごーく強くて、普通じゃ倒せなくて。それで……」
「ちょちょちょちょまってまってエイミー」
「まった」
「どれの裏ボス?ボクの記憶にないんだけど??」
『揺り籠から墓場まで』の1には、そんな奴いない。
2や3は関係がないせいか、ボクの持ってる情報があいまいだから……そっちか?
「2のやつ。
未来から過去に進む、魔物を呪う何かなんだって」
なんだその謎属性は。
「魔物を目の敵にするが、敵……といったところか」
「みたいね。魔物を消しつつ、ダンジョンの奥を目指してるとかなんとか」
「ダンジョンって異界やぞ?どうかして転移するってことか??」
「地面に潜り切ると、ダンジョンを貫くんですって。
そうすると、各ダンジョンから魔物が溢れ出すってなってるわよ」
「「!」」
ボクと……ストックが息を呑む。
ゲームの1で主人公の『ウィスタリア』が起こすとなっていた、魔物災害だ。
どうやってかクストの根に干渉し、引き起こしていたということか?
「1であいつがダンジョン深く潜って。
2でダンジョンに挑むと戦える……みたいね」
……その後どうなったのか、少々気になるところだな。
「あれ?ねぇねぇハイディ」
「今度は何を見つけたの?エイミー」
次はどんなとんでもないものをぶちまけてくる気だ、エイミー。
「北西の方なんだけど」
「北西??」
少し正面寄りだな。
えっと……。
おや?
「ボクさ。目はいい方なんだけど」
「そうだな。それで?」
「小型神器船が一台、こっちに猛スピードで向かってきてる」
まだ豆粒くらいの距離感だが、確かに舟だ。
「エルピスでは……ないな。まだかなり遠いが」
「ないね」
エルピスだったら、南からくるはずだしね。
しかしこのままの速度だと、進路上に割り込まれるな?
速度を上げる。
…………向こうも速度を上げた。
どーすっかなぁ。
「明らかに、こっちを補足する気だなぁ」
「どうする、ハイディ」
「エイミー、席ついてベルト。
方向を変える。ドーンにぐるっと西から回り込むルートで。
それでもついてくるようなら、拡声魔導で警告。
向こうがひき潰してくる気なら、迎撃する」
「なんか追われてんの?」
「シャドウの街で、帝国由来の奴らにね。
そいつらの仲間……というのが有力なあたり。
……ごめんね。巻き込んだみたいで」
「いいわよそんな。私だって追われてるし」
ぱーどぅん??
「その情報はちょっとそのうち確認させてほしいかな??」
「帝国出たから大丈夫だと思うわよ?」
その帝国系の刺客かもという話なんだが。
まずは今の状況を、なんとかしよう。
仮に先日の刺客の続き、だとして。
帝国からこの魔境に入り、ゴールを聖域ドーンと予想して張ってたということだろうか。
ユリシーズのあたりで出待ちしててもいいはずだが、そっちは間に合わなかったとか、かなぁ。
今は目立つビリオンを遠目から発見し、距離を詰めている、というところだろうか。
ビリオンがエルピス……つまりボクらの関係のクルマだとばれてる、ということになるが。
あり得ない話ではない。サンライトビリオンは、とても目立つクルマだし。
ま、来たら落とせばよか。
ドーンの近くだし、落としてから人を呼べばいい。
さて、こちらは北寄りに方向を変えたわけだが。
……思いっきり、正面衝突しそうな舵の切り方してきたよ??
うーん。
最後通牒をして念のため確認。
あとは轢いちゃえばいいかな。
あの舟は確か……。
「あれ、帝国の西方設計のやつだな。
小型は分類が細かいけど、8世代のどれかか。
7世代以降は車庫をつけるのが流行りだから、下は全部倉庫か車庫。
帝国の小型神器船絡みの戦術だと……。
神器車を満載、それに神器使いを乗せてる、あたりか」
「どう対処する?」
この進路意図が読めないところではあるが……。
ああ、正面衝突して、魔力流干渉でこちらを止める気かな?
その上で神器車を中から出して、囲んで制圧するといったところだろう。
となれば。
まずはエイミーのクルマの牽引を外す。
牽引用の魔導が尽きれば、そのうち自然停止してくれる。
後で回収しようか。
「最後通牒の警告だけして。
聞かないなら、そのまま轢いちゃうか」
「大丈夫なのか?」
「うん。あの構造だとね。
向かって左寄りをまっすぐ船尾までぶち抜くなら、船がおしゃかになるだけだ。
そっち側は機関部になってるんだよ。クルマとかモノとかは反対に寄せて積んでるんだ」
そのせいで、積載状況によって旋回に癖が出る。
扱いづらい舟という評価を、受けていたはずだ。
「まって?そこはこっちの心配をされてるんじゃないの??」
「違うよ、エイミー。このクルマ――神器戦車はね」
そのまま走らせつつ、シフトレバーをニュートラルへ。
アクセルを踏み込む。
「サンライトビリオン、って名前なんだ」
「は??」
一応、拡声魔導を計器陣から起動。
『貴船の航行に、敵対の意思ありと認識した。
これより、迎撃を行わせていただく』
距離的には、一応届いていると思う。
聞いてはいないだろうし、もしかすると笑ってるかもね。
次の投稿に続きます。




