表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
200/518

9-4.同。~そして世界を覆す、我が新しい友~

~~~~やべー奴だった。それもガチ勢だ。……いいね。


「神器の連結稼働……もしかして、新型神器船に使ってるの?」


「そう。結構、小さい……細かいって言っていいくらいの大きさの神器を、連結してるんだ。


 このクルマ、長方石材の上から、その連結神器の追加装甲つけて曲面にしてるんだよ?」



 エイミーが窓を開け、そこから車体を上に下に見ている。



「こんな滑らかになるの!?すごいわ!!」



 ふふん。ボクがお手製で死ぬほど苦労しながらやったからな。


 一つ一つ、正直泣きそうになりながら張り付けた。


 もっと効率的な手段を模索してやればよかったと思ったが、褒められると気分がいいな。



 さすがにエルピスとかパンドラは、そこんとこちゃんとしてるけど。


 ビリオンはボクが余りをもらって勝手にやったから、手が回ってなかったんだよね……。



「それを使えば、鎧くらいは作れるんじゃない?


 どこまで人体をすっぽりいかないといけないかは、検証が必要だけど」


「すごいわ!試算は改めてするけど、場合によってはだいぶ小型化できるかも。


 まともに攻撃魔導を使おうとすると、神器船の大きさがいるって試算してたけど……」



 ああ、それで最初っから「巨大」が入ってたのか。


 大型から始まるから、しょうがないんだな。



 しかし出力か。


 元が神器船サイズの試算だとすると、一人の魔導師じゃ足りないよな?


 複数人を乗せるつもりだったのかな。



 あるいは、何らかの補助供給機構をつけるか。


 ただ、バッテリーはどうしても大型化する。



 となると。



 全体的に、細かい魔道具を連結していく指針ならば。


 あれを使えば、かなりの魔力を得られるか?


 何か、超やばいものができそうだけど。



「いいわ……実にいい!希望が見えて来たわ!


 これなら、私も魔導を自分の手で……」



 んん?何その気になる言い回し。


 もしかして。



「あれ、エイミーも?」



 バックミラー向こうのエイミーが、窓から車内へ顔を戻し、きょとんとしている。


 窓は念のため、こっちで閉めておく。



「ん?も?ハイディ魔力なしなの??」


「うん。ストックも」


「も。なんと」



 後部座席で、エイミーとストックが見合ってるみたいだ


 おおー……ボクの友達にも魔力なしはいなかったからな。


 なんか新鮮だ。



 マリーなんかは魔導ほとんど使えないけど、あれは魔力が弱いだけだし。



「ストック。次の開発指針が決まったね」


「ああ。ん?聖域はいいのか?」


「そりゃボクの指針としては、魔物掃討ができればいいんだもの。


 聖域じゃなくても、人型魔道具ができれば、その方がよかろ。


 ちょっと脅威の発明すぎるから、悪用に気を遣わないといけないけどね」



 神器の超過駆動並みのものが使えるとなった場合、戦術兵器の出来上がりだ。


 しかも場合によっては、魔力が少なくても動かせたりするわけで。


 魔物はまだしも、人に向けられると大変なことになる。



「それは……大人に相談だな。


 エイミー。国を出ると言うなら、どうだろう。


 我々の中型神器船パンドラは――研究所なんだが」


「ぜひ!!魔道具なら小型から大型まで、何でも行けるわよ!!」



 ああ、なるほど。なんとなくわかったよ。


 魔力なしが魔導を使う、そんなテーマでいろいろ試してきたんだな。


 その末に、人型魔道具を作るってところに至ったのね。



 というか、魔力なしでそこまでやるって、情熱すごいな。


 魔力どうしたし。ボクみたいに、作って人に放ったのかな?



 ダリアと友達なら、あり得ない話じゃないかな?


 ダリアはかつて、ボクの作った魔道具をいろいろ試してくれてたし。


 慣れたもんだろう。



 ん……となると。せっかくだし、やはり意見が聞きたいところだ。


 小型化した魔石神器と同じコンセプトで、あれを小型化していく。


 それを多量連結した場合、人型魔道具に必要な出力を、達成できるだろうか。



 魔力ロスや効率低下の問題が出てくるはずだから、一筋縄ではいかないと思うけど。


 でも総神器機構と同じノリなら、それは神器船のような大規模構造での話。


 人間大なら、その問題は起きにくいはずだ。



 これが実現できれば。


 魔力なしの君が一人で、魔導師になれる。



 …………よし。エイミーに見せよう。


 正直あまり広めるものでは、ないんだけど。


 確信がある。今が未来につながる、瞬間だ。



「ストック。あれをエイミーに見せるね」


「あれ……あれか!?いいのか??」



 一発で伝わるあたり、君も大概だねぇ。



「いいよ。勘だけど。


 ボクはきっと。


 今日この日のために、あれを作ったんだ」


「……わかった。


 これは、エイミーにはぜひうちに来てもらわないとな」


「そんなやばいものなの!?興味湧いてきた!!」



 前のめりで大変よろしい。


 シフトレバーの後ろにある蓋を開けて、中から腕輪を一本取りだす。



「エイミー、これ」



 後ろのエイミーに渡した。



「これ……外は録音の魔導?


 内側のがわからないんだけど。


 というか、バッテリーがないわ。


 これ、あなたが作ったの?」



 手に取って見ただけで、そこまでわかるんだな。


 結構、腕のいい魔道具技師なんじゃないか?この人。



「そうだよ。外輪を左に回すと録音、右に回すと再生だ。


 何も入ってないから、試してごらん?」


「ん、ん”。……あー、あー」


『あー、あー』


「動いた!?え、これバッテリーなの???」


「違うよ」


「へ?」


「誰も、魔力を込めていない」



 おや?反応が返ってこない。


 ……バックミラー向こうのエイミーが、静かに涙を流してる。



「…………すん。


 私は、今日の出会いを、精霊に感謝、しなくては、ならないわね」



 涙はまだ流れているが、エイミーはとても穏やかな表情だ。


 そうして、この狭い知恵の箱の中で。


 天を見た。



「ああ。人の叡智は、確かに未来を、切り拓くのね。


 私は、お母さまは、間違っていなかった」



 エイミーのお母さまのことは、ボクの記憶やゲームの情報にはない。


 どんな方だったのだろう。



 彼女が涙を拭う。



「ありがとう、ハイディ。


 魔力なしだって、この世界で生きていける。


 お母さまの墓前に、その証明を必ず添えて見せる」



 彼女の頭がどこまで回ったか、正確にはわからないけど。


 ボクの意図は伝わったんだ。


 そしてエイミーは夢が叶うと、手が届くと確信したんだ。



「いいね。


 君の作った人型魔道具が、魔境をぶっ飛ばしたら。


 最っ高のお供え物になるよ」


「やってやるわ!!


 ついでに帝国も吹っ飛ばしてやるんだから!!」



 そこはやめとけや。血みどろの争いになるで。



 おっと、なんか手が後ろから回ってきて、そっと髪を撫でられた。


 ……そうか。君も嬉しいんだな、ストック。



 新しい友達ができる瞬間は、いつだって素晴らしい。

ご清覧ありがとうございます!


評価・ブクマ・感想・いいねいただけますと幸いです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

――――――――――――――――

幻想ロック~転生聖女は人に戻りたい~(クリックでページに跳びます) 

百合冒険短編

――――――――――――――――

残機令嬢は鬼子爵様に愛されたい(クリックでページに跳びます) 

連載追放令嬢溺愛キノコです。
――――――――――――――――
― 新着の感想 ―
[一言] ハイディ初めての友達が出来る・・・
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ