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9-3.同。~また、高き夢を見る魔道具技師~

~~~~ロマンスがあるかないかはわからんが、ロマンはあるか……やべーやつかなぁエイミー。


「水陸両用は、揺れがひどいと聞くけど……」


「改善しました。快適ですよ。


 今も王国の河を下って、南洋を航行しているはずです」


「ほほー」



 んむ。では道行きは決まったな。



 ドーンからエルピスに乗って、連邦に入り、まず南端のミマスへ。


 そこで申請できればよし。だめなら川沿いに北上。


 ディオスの街で申請し、聖域ジュノーへ。



 首都イスターンはその後かなー。


 二人旅終わっちゃうけど、まぁいっか。


 ストック向けのチャンスは、またどっかで作ろう。



「ところで、エイミーも何か研究してるのか?」


「ロボット」


「「は?」」



 何気なく口にされたストックの質問が、ヤバい扉を開けた。


 いま、ファンタジーベースのゲーム世界では、聞いてはいけない単語が出たが?



「私は!巨大人型ロボットを作って!乗りたい!!」



 巨大建造物は聖域があるから、ないとまではいわんがなぁ。


 エイミーはやっぱりアレなやつだったか。



 作者はこの人ではない、そしてまた違ったものではあるが。


 ボクは前の時間で作られた、人型に関する偉大な作を知っている。


 だから、エイミーの話はとても笑えない。そこには可能性が、ある。



 ちょっと興味があるな。



「エイミー。二つ聞きたいんだけど」


「なになに?二つと言わず、なんでも聞いて!」


「人型である必要性」


「よーし戦争だな?」



 走る車内でいきり立つな座ってろ。


 趣味の話じゃねーよ。



「真面目な話だよ。


 乗り込むってことは、極論すれば神器車や神器船と同じ、乗り物だ。


 となると、ロボットってついてるのは言葉の問題で、人型が主軸でしょ?


 巨大化は目標であるとするなら、テーマは人型の乗用機構の作成だ。


 合ってる?」


「……合ってる。


 人型にするのは、現在の車両戦コンセプトがナンセンスだからよ。


 アームを取り付けて神器を振り回すのは、あまりに非効率だわ。


 それから、魔導使用が人体以外では難しいって論、知ってる?」



 案の定、しっかりガチな人だ。バックミラーに僅かに映る瞳が本気で真剣だ。



「知ってますよ。


 だから神器のオーバードライブでの魔導起動は、余剰な破壊が起きてるってあれでしょう?」



 神器のオーバードライブは攻撃魔導を起動できるが、本体を傷つけ、負担をかける。


 これについて「そもそも魔導を使えるのは人間だけで、それ以外だと負担が増えるんじゃないの?」


 という議論がある。



 確かに、魔道具も神器も攻撃魔導を起動しようとすると、破損する。


 この原因は「魔力の波長の問題」であると見られているが。


 なぜ耐久性のある工材でも耐えられないのか?という点が明らかになっていない。



 エイミーの言い方はつまり、これが形の問題……。


 人の形をしてればいけるんじゃないか?という踏み込み方か。


 つまり。



「そう!人型魔道具なら、そのまま攻撃魔導が起動できるかもしれないのよ!!」



 ……いいテーマじゃないか。


 神器が作られた本来の主題、「攻撃魔導が撃てる魔道具を作る」というところに根差している。


 それが実現できれば、ボクらが超過駆動を連射できるようにした点を、遥かに超えた発明となるだろう。



「いいな。だがそれ、『かもしれない』になってしまっているのは、なんでだ?」


「いろいろ問題があるのよ、ストック。


 魔導起動が人体に根差すってした場合、単純なのは人に近い……人形のような魔道具を作ること。


 これはダメだったわ。人並みの大きさのものも作ってみたけど、破損して攻撃魔導は起動できなかった。


 大きさの問題という可能性もあるけど、そもそも壊れたわけだから、人と人形は違うのよ。


 私はこれについて、魔導の起動にはある種の複雑さが必要なんじゃないか、って考えてる。


 魔道具は一つで単一機能を実現するけど、魔導はそもそも複雑なの。


 魔道具はそれをシンプルに絞り込むから、かえって繊細な機構になるのよ。


 機能は一つでもいいんだけど、実現機構はもっと複雑でかつ冗長であったほうがいいと思ってる」



 なるほど。そこまでは研究してると。



「だから次の段階として、人が操る人型を作って、中から制御しようと思ってるのよ。


 人の複雑性をそのまま回路に組み込んで、機構に内包させるの。


 それならうまくいきそうじゃない?」


「根拠を問われると困るところだが、感覚的には賛同できるな。それで?」


「神器ならともかく、人が中に入って動かすような、大型魔道具の構想が、そもそもない」


「「あー……」」



 ないんだよな、魔道具の乗り物。



 多少大きくて、魔導家具くらいだもんな、あるの。


 魔力流って謎エネルギーのおかげで、神器機構は乗り物として成立してるけど。


 魔道具にそういうのはないしね。



 魔導船は魔道具とは違うので、この機構はカウントできない。


 あれらはただ、魔導で出力を得て動く船で、極論、櫂で水底ついてるのと一緒だ。



 …………いやまて。


 これ、要件は人型であって、乗り物であることじゃないはずだ。



「人体が入ればいいんだね?」


「入って生存できないとダメだけどね?」


「それはもちろん。


 大型になるのはなんか理由があるの?」


「機構の複雑化に伴って、どうしても大型にしないといけないの。


 攻撃魔導の出力に届かなくなっちゃう」


「もし小型……ちゃんと人間大くらいで始められたら?」


「そしたらだいぶ楽ね!できるの?」



 なるほど。


 複雑化・冗長化に伴って、大型化するんだな。


 必要なのが出力……エネルギーなら。



 高効率化すれば、これは小型化できるんじゃないか?



「ストック」


「ああ、あれを神器から魔道具に流用するのか」



 あれというのは、ビリオン、エルピス、パンドラに使っている総神器構造。


 神器同士の連結駆動である。



「うん。魔道具には、魔道具同士の連結稼働って発想はまだない。


 というか、神器のだって、ボクらが作ったんだし。


 同じこと、できるんじゃない?


 魔力流は使えないから、そこを考えから取り除かないとだけど」



 エイミーは先ほど「人の複雑さと魔道具のシンプルさが合わなかった」とも言及したわけで。


 ならば、そもそも複雑な魔道具を作ってしまえば、そこも解消できる見込みだ。


 単に人を組み込んだ魔道具を作るより、解決容易になるかもしれない。



 というかこれ、なぜ総神器機構で負担が減るか?という点にも直結した考えだな。


 魔導全般が、構造が単純化していくと使用者等に負担を強いるということなんだろう。


 複雑で冗長なものほど安全で、単純なものほど消費や反動が大きい。



 神器は本質的には魔道具なので、魔道具でも同じ機構が作れるはずである。


 注意しなければならないのは、魔力流の発生機構は魔道具にはないので、これは使えないということ。


 だが、魔石神器での総神器構造自体には、魔力流の作用は使っていない。



 いけるんじゃないか?

次投稿をもって、本話は完了です。


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