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7-3.同。~では今の彼は敵か、味方か~

~~~~ボクに恋を教えたのは、君だ。ストック。……もう間違えるなよ。


「あいつめ……」



 思わずため息が出る。



「前もそんなだったのか?」


「そうなんだよ、好戦的過ぎる。


 前に死んだのだって、撤退を拒んだからだ。


 ボクはしょうがねぇから付き合ったが、正直納得はしてない。


 勝手に戦いを挑んで、それで勝手にボクを守って死んで。


 おまけに人の心に勝手に残りやがって。


 皇帝も身勝手なクチだとは聞くし、そういう血筋なんか、シーボルトは」


「そこは人に寄るのだろうさ」



 だといいねぇ。


 アレに比べると、魔物絶対殺す民の王国貴族も、理性的な方だ。



 ボクの剣幕にちょっと落ち着いたのか、ストックはようやく穏やかなお顔になった。


 ……これあれか?ボクもやつをあんまり好んでないと知って、ほっとしたのか??


 おい、ほんとにボクが奴とそういう間柄だと疑ったんじゃあるまいなストック???



 まぁいいか。君の心の平穏の方が大事だ。



「そういえば、カール・シーボルトだとは知らなかったんだな?ストックは」


「ああ。クラソ―と名乗っていた」


「くらそー?」



 なんだその名前。



「前は違ったのか?」


「うん、普通にカールだった」



 ……名前。


 魔素制御や、あの技。結晶。



 なるほど。とするなら、奴はボクの知ってるアレに違いなくて。


 ならまぁほんとに、ストックとの関係はそれだけっぽいな。



 …………。


 なんだろ、急に。何か妙に、ボクもほっとした。


 この子がこう、男に取られるとか。絶対ないと、思うんだけど。



 何か、ボクが知らないところで、知らない誰かと関わってるのが嫌なんだろうか?


 そんな今更、って気がするけど……。結構、互いに単独行動とか、してるし。


 なんか変な感じだ。



 ストックは人の気も知らず、何か唸っている。



「そうか……しかし帝国め。今回の件に本格的に噛んでるんだな」



 んん?ストックはそう考えてるのか。


 いや、確かにタイミング的に、普通はそうか?


 でもなぁ。



「いや、そうなのか?」


「ん?エール嬢も、奴と思しき少年が、街の人を殴り倒して回ってたと……」


「いやだからさ。それ殴り倒されてた方、モザイク兵なんじゃないの?」


「は?」



 エール・パールさんは先ほど、カールらしき者が住民を殴り飛ばしている話をしてくれた。


 結晶兵襲撃絡みで来ていたのかと思ったら、そっちの話でこの邸宅に立ち寄ったらしい。


 奴らの仲間が暴れてるかもしれないから、注意してほしい、と。



「だが結晶が……」


「君の言うようにタトル領にいたとして、そこで実験に回されるか?


 あいつ、僕らと同い年だぞ?移植しても、使い物にならんだろ」



 三年前、タトル領にいたとして、当時五歳以下。


 普通、結晶を移植するならもっと体ができてからだ。


 幼いと魔力が安定しないから、反発が読み切れない。



 ボクらが魔力なしなのだって、本来は10歳越えてからはっきりする話だ。



「それは、そうだが……。あの結晶は天然ということか?」


「前の時もそうだったよ。5歳頃から結構大きな結晶ができてた」


「そういうことか。だがそれだけでは」



 む。まだ納得いかんかねストック。



「脳の魔素制御」


「……さっき、教え合ったと言っていたか」


「元はあいつの思い付きなんだよ。


 あれも役に対する抵抗力になる」


「だが、それは前の話だろう?」


「あとクラソ―って名前」


「霊の名の可能性、か……」


「武の技も、ボクと同系統だった。あれはボクが教えたやつだ。


 本人が何らかの理由で至った可能性は0じゃないけど、さすがに考えづらい」


「呪いの子かなにか、だと」



 頷く。


 確証はないんだけどね。


 ボクを見ても反応が薄かったし。



 ただ幼児を演じ切っていたギンナの例もあるので、油断はできない。



「うん。結晶も、黒かったしね」


「黒い結晶は存在するだろう?」



 その通り。だがもっと色味が違う。


 いわゆる魔結晶は、どれも緑基調だ。


 中に、黒ずんでいるものが存在する。



 ギンナが見つけた結晶は、同じ緑でも色味がだいぶ違う。


 同じように、黒い魔結晶が存在してもおかしくない。



「いや、あんな純粋な黒じゃないよ。


 もっと緑がかってるでしょ?陽光の下だと、違いがよくわかる」


「ん、それはまぁ……」


「それに、通常の結晶で、獣の矢を打ち返せる出力は出ないよ」


「……確かに」



 ボクらも持っている色付きの結晶は、出力が高い。


 魔結晶由来のオーバードライブは、この結晶の持つ出力に威力が依存している。


 ただの緑の結晶では、あんな強力な超過駆動は出せない。



 ストックが、顎に手を当てて考えている。



「じゃあ、あいつは事件再現とは関係ない……むしろ敵対している?


 何のために?」


「そこはわっかんない。話聞ける状況じゃなかったしさ」


「その点は本当にすまなかった」



 やめてそんな神妙に謝られると笑っちゃう。


 怒ってる君もかっこよかったよ?ストック。


 その理由が滅茶苦茶なのも、ボクは好きだ。



「いいけどさ。


 正直、ノイズにしかならないから、こっちに関わってほしくないなぁ」


「同感だ」



 ボクらにとって、「(ゲームの)役を押し付けてくる連中」は、敵だ。


 だがカール……クラソ―は、連中とは相いれない存在だ、とボクは見立てている。



 脳の魔素制御、霊の名前、前回の記憶、色付き結晶。


 ボクらが、役への抵抗力になると見積もっているものを多く持っている。



 ただ互いの関係性の断言はできない。


 そうは言っても奴らの仲間かもしれないし、こちらの敵かもしれない。


 何せカールの行動動機が不明だ。それ次第なところがある。



 ちなみに先の件については、ストックが半分悪い。残りは血の気が多いクラソーが悪い。



 ……おいそれ。ボクは殴られ損じゃないか?


 まぁいいけどさ。


 ストックがさっきのボク並みにケガしてたら、ボクは大泣きしてたろうし。



 代わりに戦ったこと自体に、後悔はない。


 君が無事で本当によかったよ、ストック。

次投稿をもって、本話は完了です。


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