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6-4.同。~朧気に敵を思い描く。それは未来からの刺客~

~~~~送り出しおっけー。よっしゃ。後は二人旅だ。


 まずは北上し、また混んでる街の中心に行かないといけない。


 さすがに何度も行き来すると、枝道を探したくなるなぁ。



 今日はビリオンで工場まで来たし、それでちょうどよかったけど。


 開発の大詰めのときは、面倒だから徒歩で通ったりしてたんだよね。


 徒歩っつっても、屋根伝いに跳んでくるんだけど。



 ゆっくりと魔力流を滑らせ、石畳の上を走る。


 街中に入り、通りを北上。


 そうして中央付近に差し掛かると、人も馬車も多くてゆっくり運転になる。



 …………。



 助手席に君がいないと暇だわ。ストック。


 ちょっと待てばよかったかなぁ。


 とはいえ、屋敷の惨状を放置もいかんし。



 客分のボクになんか決定権があるわけでもないが、事情を話すことくらいはできる。


 とりあえず行って、話のとりまとめや、国防の人の応対にあたるか。



 しかし退屈だ。


 左手でハンドルを握りつつ、胸元のロザリオを右手でいじる。


 とりとめもなく、今回のことを考える。



 直接人をぶつけてきて、しかも街中で強襲してくるとはなぁ。


 思い切ったことをするもんだ。さすがに痕跡も残るし、辿りようもある。


 モザイク兵だったら、その辺は気にしなくていいのに。利点を捨ててるよなぁ。



 だからこそボクは、これは陽動で時間稼ぎとみて、皆を早く出港させた。


 向こうの強襲が、ユリシーズではなくシャドウだったという点を踏まえても、見立ては間違ってないと思う。


 敵は出遅れていて、こちらは先を行っている。はずだ。



 あるいは、あの程度の戦力で必勝を期したつもりだったのか?


 まさかなぁ。王国舐めてるんだろうか。



 構成要員はモザイク兵だったとはいえ、三年前のパールのメリア誘拐も、ドーン強襲も戦力は十分だった。


 何せそのほとんどが魔導師だった。本気度が伺える。


 だが今回は結晶兵。ゆえに、本命の事件再現――魔物や魔導師の襲撃があると踏んでいるんだが。



 結晶兵は、そりゃあ一般人には脅威だろう。


 だが、魔物に比べれば非常に弱い。あの程度の膂力では、その皮を貫けないだろう。


 また魔物は魔導に対して一定以上の耐性があるので、人体結晶の超過駆動ごときでは倒せない。



 そんな魔物と「戦える」のが魔導師だ。そりゃ無策に挑めば返り討ちだが、戦い自体にはなる。


 魔物を狩れるのが、貴族級の魔導師。戦術~戦略級の魔導が使える人たち。


 ただそういう人たちであっても、特殊な呪いで討ち取られることもある。



 神器使いなら魔物に対しては必殺なんだが、近づかないといけないので、負けることもある。


 そして神器は魔導に対して非常に弱いので、神器使いが魔導師と戦うと、普通は一方的に倒される。



 魔物と魔導師、神器使いはそういう三竦みになっている。


 そしてその戦いは、結構ハイレベルなものなのだ。


 ボクとボクの友達らは、言っちゃなんだがその層にいる戦力になる。



 せめて神器を持たせないと、結晶兵がそこに加わるのは無理だな。


 そして持たせればすぐ使えるわけじゃないってところが、神器の難しいところだ。


 魔力流の発生は実は簡単ではないし。超過駆動はやった後に魔導制御が要る。



 例えばマリーは、前者が得意で、後者がすごく苦手だ。


 ボクは両方いける。ストックは魔導制御の方が得意だな。


 いずれにせよ、何の鍛錬もなく使えるものではなかった。



 よし、やっと中心の交差点に来れた。左折して西門方面へ向かう。


 ここからはスムーズだ。すぐにロイド邸に着くな。


 まぁ馬車が前にいるから、その後ろをついてゆっくり移動だけどね。



 で。今回の件は、事件再現を使う――役をこの世界に押し付ける側の勢力の仕業、と見て間違いない。


 ギンナの言うことによれば、モザイク兵がすでに一度出ている。


 だがこれがきな臭い。三年前のと、状況が少し違う。



 同じ人物が、同じ場所、同じ時にいて再現された事件、ではないとみられるからだ。


 それがコニファー王女誘拐に絡むことならば、「時間」が合っていない。


 意図して引き起こされたもの、とみるべきだろう。手段はまだわからないが。



 勘、だけれども。


 ボクらにゲームの展開を強制する者たちが、動いている。



 この三年で話し合った結果だが。


 黒幕に相当するものたち本人、あるいは関係者に、特殊な呪いの子がいるのでは、と見込まれている。


 ゲームの展開が揺るがされることによって、その子自身が生きる時代よりも前に戻った者がいるのではないか、と。



 「次回作」の登場人物たちだ。



 彼らは当然、今の『揺り籠から墓場まで』の展開がそのまま成立しないと、生まれることすらできないかもしれない。


 確か、2と3があるんじゃなかったかな?


 連邦より西方が舞台の『揺り籠から墓場まで2』と、聖国より東方が舞台の『揺り籠から墓場まで3』。



 前の時代に戻っても体がないはずだし、干渉できないような気もするんだが。


 もしその子の魂を宿した、色付きの結晶があったなら。そこから受肉することは……できなくもないはずだ。



 そういう人物がいた場合、役を負っているにも関わらず。


 その役がこの時代では有効ではないため、我々から認識されない可能性が出てくる。


 すでに役を終えてしまったビオラ様が、関係者からは見えなくなったのに近い事情だ。



 だからこのような呪いの子がいれば、どうやってか事件再現をしかけつつ、自身が見つからない暗躍を行うことが可能だ。



 メリア誘拐、ドーン強襲。三年前の事件は、いずれも黒幕が捕まっていない。


 それぞれ、主犯を唆した人物がいるはずなんだが。


 同じ呪いの子であるボクやストック、メリアやダリア。あるいはビオラ様辺りが直接当たらないと、捕まえられないかもしれない。



 まぁそうはいっても、これは可能性や推論を重ねた話。実物を捕まえてみるまでは判断がつかない。


 何より……この通りだと、動機がまったくわからん話になってくる。


 そんなに元の展開に戻したいのか?『揺り籠から墓場まで』は2も3も、1と似たようなアレ具合みたいだぞ。



 何かシステマチックな強制力……だったら動機もなにもないんだろうけど。


 にしては、手段が人間臭いというか。


 誰かを甘言でけしかけたり。行き場の無くなった者たちを囲って、けしかけたり。



 三年前のやり口から、ボクは戦闘能力の一切ない、現場には出られないクチの人間の仕業と考えた。


 けどその最有力容疑者は……まだこの半島にすら来ていないはず、なんだよなぁ。


 クレッセントが魔境航行するようになったのは、ボクが11か12の頃。まだ三年は先だ。



 何か見落としてるような気もするけど、ちょっと思いつかないな……。

次投稿をもって、本話は完了です。


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