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3-3.同。~聖域から、地上に下る~

~~~~事件の再現とか、役から外れると認識されなくなるとか、相変わらず厄介な話だ。


 当初予定では、ボクらは明日、ユリシーズのロイド邸を出るつもりだった。


 だがすでに現時点で、シャドウで少し時間を食うことが分かり切っている。


 今日中について、シャドウのロイド邸に逗留しつつ、準備を急ピッチで進めなくてはならない。



 ユリシーズの入出申請は、ドーンと違ってすぐ通る。


 ドーンの場合は、停泊してないと入退場できないから、時間がかかった。


 だがユリシーズは西方魔境の出入口から動かないので、申請すればすぐ出られる。



 もちろん、初めて来るような人だと、シャドウの街で審査があるけどね。



 というわけで、街はずれの域門までやってきた。


 聖域は逆三角錐のような形をしており、錐の底面に当たるところに街がある。


 街はぐるりと外壁に囲まれており、基本的にはそのうちの一か所だけに外部との連絡門がある。



 地上まではどう行き来するかというと、その門から地上まで、聖域外周を辿るように魔力流が出るのだ。


 これに車両で乗って、そのまま降りていく。


 当然、生身での行き来は無理だ。聖域の入退場には、神器車が欠かせない。



 ユリシーズの場合、門のとこで申請出せば、一定時間魔力流を出してくれる。


 上り下りが終わった後、時間が経つと消える。


 一応、誰かが移動している間は消えないようになってる。



 下にも申請用の建屋があって、上下の伝達は風の精霊シルフの魔法を使ってやりとりしているそうだ。


 使わせてもらうこちらとしては、その辺あまり意識なく行き来できて、楽なもんである。



 ストックの方に、予定通り王子三人とギンナが乗った。


 彼女の運転するサンライトビリオンが、先に門を出ていく。


 人の運転する、あの黒いボディを見るのは何か新鮮だ。



 こっちはツーボックスの緑のクルマだ。


 なんとなく、標準フレームの緑に、車体全体を合わせてみた。


 迷彩色で存在をごまかす技術があるらしくって、それをやってみたんだよね。



 乗っているのはボクを含めて五人。


 すぐ後ろの席にベルねぇとビオラ様。


 その後ろがエリアル様で、コーカス様は一番後ろだ。



 別に詰めていただいてもいいんだが、ゆったり過ごしてもらおうかと。


 後ろのボックスは席が広めなんだよね。


 なお、助手席は空けていただいている。そこはストックのものなので。



「ではこちらも行きますね。多少浮遊感がありますので」



 バックミラーにうつるベルねぇが、ちょっと緊張してたので声をかけた。


 聖域自体には来たことあるから、何度か体験済みだと思うんだけどなぁ。



「ベルちゃん、ハイディの運転なら大丈夫よ」


「ほんとですかぁ?ビオラ様」


「ほんとほんと。私も公用車だとこれ無理なのよ」


「すごい怖いんですよね!」


「そうそう。あの胃が浮く感じがダメ」



 ベルねぇが首をがくがくさせて同意を示している。


 そういやボク、公用車での聖域入退場は経験ねーや。


 基本、自分で運転して行き来してるからなぁ。



 まぁ話してれば気がまぎれるだろうしと、すいーっとスロープを降りていく。



「あ、あれ?今降りてるのこれ」


「降りてるよ。何か変?」


「いや、変じゃないっていうか普通で、それが変……」


「わかる」



 この二人は何言ってるんだろうかなぁー?


 ボクはアクセルを細かく踏みつつ、シフトレバーを操作し続ける。


 ハンドルは固定だ。



「ビオラ様、これは普通ではないでしょう……。


 公用車なら、ハンドル操作でこのスロープを渡るものでは?」



 エリアル様が面白いことを言う。



「そりゃハンドル操作で移動したら、ダメに決まってますよ。


 シフトレバー切り替えで、絶えず魔力流を噴射してるから安定するんです」



 ギア固定でアクセル踏んで、ハンドル回しながらここを上り下りした場合。


 クルマの魔力流が進行方向寄りのベクトルになる。道の方の魔力流は上方向の力はないので、沈み込む。


 当然、その状態で移動しようとすると、激しい上下動をすることになり、胃が大変なことになるだろう。



 だからアクセルを細かく踏みながら、シフトレバー操作で方向切り替えしていくのだ。


 そもそも、道の魔力流が推進力を作ってくれるから、前に進む必要はあまりない。



 しかしそんなことしてたのか、王国の聖域公用車。大減点だぞ。


 安全にも関わるし、これはどっかに話を通してもらったほうがいいな。


 とはいえ、ボクにこの辺を教えた人も特殊だからなぁ。ちょっと一般的なものではないのかもしれない。



「……そうだったの??」


「そうですよ。アっさんも言ってたでしょうに。覚えてません?」


「あー……私、アっくんの言うことは八割聞き流してるから」



 船を支えてくれた重要人物に対して、ひでぇいいようだな。


 アっさんはボクの運転の師。めっちゃかっこつけてる人。そのために命張ってる。


 アルって名乗ってた。前の時間では、ビオラ様が亡くなる前に、旅に出ちゃったんだよね。



 クレッセント立ち上げの時からいた人だ。


 オーナー……ビオラ様が、神器動力を動かせる人として、どっかから拾ってきてた。


 彼は船を動かすには結晶出力が足りないんだけど、それでもいろいろ力を尽くしてくれていた。

次投稿をもって、本話は完了です。


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[一言] ハイディの運転の師匠もやべえな
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