2-4.同。~しょうがないから囮を買ってやろう~
~~~~馬鹿なぁあああああ!人をだしに盛り上がるな!!
「それ、お祝いが煩わしいってほうが言い訳ですね?」
ああ、つい聞いちゃったよちくしょう。
何やってるんだよボク厄介ごとに突っ込むなよぅ。
ダン王子は変な目して見んなし。
「やはり俺のものにならんか、ウィスタリア」
「蒸し返さないでください殿下」
「歳近く、こう聡明な女はそうはおらん。惜しい」
王子もたいがいだとは思いますがね?八歳って忘れそうになるわ。
態度と礼法は大減点だが、他は良い教育を受けているのがわかる。
だがもっといい女がボクの隣にもおるやんけ、節穴さんめ。ボクのだからやらんけど。
で、今のはボクの見立てが当たり、というお答えだとして。
もっと気になることが出てきてしまった。
……ああもう、このまま行ったれ。
「で、コニファー王女殿下はどちらに?ドーンの方に行ったんですか?」
現王家の子は四人。ここの三人のほかに、ダン王子の双子の姉がいる。
それがコニファー王女。
双子だから、王女殿下も当然今日が誕生日だ。
「なぜそう思った」
「まず、ダン様が今日抜け出せることをコーカス様が認めている以上、誕生会自体がありません。
この場合、コニファー様だけが浮いてしまう」
王女は継承争いに加わらないので、後見貴族もつかない。
なのでこのような事態になった場合、一人だけ誕生会ってこともないだろう。
祝ってくれる人、くらいはいるだろうけど……盛大に会が開かれることはなかろう。
「その上で、西方魔境にあなたがたを連れてくるのに、モンストン侯爵が出てきていない。
さらに彼女を手伝っている、コンクパール公爵令嬢からも連絡がありません。
国内移動とはいえ、要人警護の段取りが薄すぎます」
ファイア大公がついてるからって、西方領側が何もしなくていいわけがない。
最低でも、ビオラ様はなにがしかの用事で駆り出されていたはずだ。
この三王子の訪問が、メインなら。
「つまり、あちらにはさらなる高優先度の案件があるということ。
本命はコニファー王女。お三方は念のための避難。
いずれも、誘拐や暗殺を懸念しての措置とみられますが、いかがです?」
王子たちは顔を見合わせている。
大公閣下は嬉しそうだ。
「変わらぬようで安心した、ウィスタリア」
「恐れ入ります。ひょっとして皆さまは、このまま我々がドーンまで護送ですか?」
「そうだ。もちろん、正式なものとしての依頼は出せぬが」
やっぱりかー。
危険度の高い方を緊急輸送。残りは足跡を残しながら護送か。
しかも、転送路は使えないんだな?
中型以上の神器船と王都の魔導学園は、直通の転送路が通ってる。
転移装置ってやつだ。とても便利。
それが使えるなら、学園からドーンにみんなで直行。それで終わりの話なんだよ。
何らかの理由でだめだから、特大の囮まで用意しての移動を試みている。
そう。王子たちは囮だ。
王位継承権持ち三人一緒に、国外に輸送とか……狙ってくれと言ってるようなものだろう。
そこまでする理由は……まだわからんな。
真実や正解を見る人もいるし、精霊が魔法使いに囁くこともある。
いずれかで危険を知り、行動してるのだろう。
しかしだ。
王都はなんでそんなやばいことになってるの?大丈夫?そんな事態、記憶にないよ??
ま、ドーンが安全だってことに異論はないがね。
あれを脅かせるものは、あるまい。魔境の主だっていなくなっちゃったからね。
しょーがねぇなぁ、この兄弟たちは。
その囮、引き受けてやんよ。
なに、遠慮はいらない。利害の一致というやつだ。
ストックと、ビオラ様を見る。
「ビオラ様」
「まぁそれが妥当ね。
シャドウの街へ移動。その後、神器船でドーンまでご案内いたしましょう」
「私とリィンジア様は、陽動のためにもシャドウまでご一緒し、その後別行動をとります」
「……ウィスタリア。こちらは護衛を連れて来てはおらんのだが」
おい王子、それはどうなん。
王城から戦力連れてくるのも、間者を警戒してダメだったってことか?
しかもあれか、その言い方だとボクら八歳児を護衛カウントしてないか?ええんかそれは。
ま、この事態になったのは意図したものではないが、しょうがあるまい。
彼女たちに頼もう。
コーカス様を見る。
そも王国貴族のこの方がついてるのだから、危険はもともと小さいのだが。
それでも、こんな状況で余裕がおありなのは、さらなる護衛のあてがあるからだろう。
「大公閣下。彼女たちはご一緒では?」
「遅れての到着見込みだったが、そろそろだ」
「では戦力十分ですね。予定通りです。
ダン様。私の知る限り、最強の戦士が護衛いたします。
敵にとって想定のルートでもないでしょうし、安全な旅となるでしょう」
「む。そこまで言うなら任せよう。
よろしく頼む」
ん。そっちは安全だろうさ。大船にのったつもりでいるとよい。
そうでなくてもビオラ様がいて、あの舟もあるのだから、危険なんてない。
問題はこっち。二人で目立ちながら移動する、ボクとストックだ。
面倒なことになりそうだなぁ。
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