1-4.同。~会合に備え、身支度をする~
~~~~男性としてあまり見られなかったのは、別の理由があったんだけどね。
んで、個人としては、どうかなぁ。
第一王子はカリスマ性があり、狭いコミュニティならすぐ頭角を現す。
ただ、何でもかんでも自分で首を突っ込みたい人であり、目に見えないことを考慮するのが苦手だ。
善意と気前のよさはたっぷりあるが、気は利かねぇ。そして見栄っ張りだった。
第二王子は威風堂々たる武人に成長し、落ち着きがあり、頼り甲斐はある。
ただしそれ以外の一切が苦手だ。優秀な副官を常につけないといけないので、そこが悩ましかった。
自分の美徳としているものに真っ直ぐなきらいがあって、そこが良くもあり、悪くもある。
第三王子は知識が非常に豊富。調べ物ならたいがいのものは任せられる。
しかし管理できる人間をつけておかないと、成果の品質を求めすぎる性質があった。
コミュニケーション能力は意外に高いのだが、一方で自信はとことんない人だったな。
なお王子同士は覇を相争う仲でありながら、得意なことが違うせいか、関係は良好だった。
ボクとしては……美形なので目はいくんだよな。
お洒落で堂々としている第一王子。よく鍛えこんでて爽やかな第二王子。繊細だが知的で清潔感のある第三王子。
ただあんま趣味は合わなくて、仲良くはなかったと思う。
ボクはお洒落そのものにはそこまで興味はないし、筋肉はどうでもいい派だし、古書も読むがロマンより実用重視だった。
あと、三人ともクルマ乗らねぇ。魔導は使うけど、あくまで使用者どまり。クルマガチ勢で研究者のボクとは話が合わない。
それはそれとしてなぜか気に入られていたようだが、ボクは乙女脳ではなかった。
そこはほんと申し訳ない。仕事中毒者に恋愛は無理でござった。
ただまぁ、その辺は置いといても、今はねぇ。
「とはいえ。ダン様が我々と同い年で、あとが年子ですが……さすがにこんな変な幼児ではないでしょう。
我々が魅力を感じるのは、少し難しいでしょうね」
「あー……」
ロイド家の使用人でストックの周りにいる人は、大まかな事情を知っている。
呪いの子として時間逆行していることは、知らないとお世話に不都合がでるからね……。
我々だって弁えてるから、別に幼児扱いされたって怒りゃせんのだけど。
後からそのことを知った場合、そういう扱いをしてしまった側が気にするからな。
「あとニーナさん。ボクは最高に素敵な方をよく知ってるので。
王国の王子くらいではときめかないのです」
ニーナさんが思わずストックを見て、何かに納得して、もう一度ボクを見て礼をし……仕事に戻っていった。
善意と気前のよさがあって、気が利いて見栄は張らず。
自身の美学に真っ直ぐだけど、非常に柔軟で。
人付き合いも得意で、自信のある地に足着いた人。
ストックは、最初からそうだったわけでもない。
ただ虐げられた人たちを救うため、必死になってそれらを勝ち取った。
その夢が破れようとも、自身ができることに食らいつき、諦めずに何度も自ら立ち上がった。
たとえ道が分かたれることがあろうとも、ボクと歩むことを諦めなかった。
申し訳ないのだけれど。ボクにとって、ストックに勝る人なんて、いるわけがない。
性別が同じで、異性愛者という自身の性の在り様に合わないことすらも、今のボクにとっては悦びの種だ。
「ん……サーシャ。今、手すきの者は他にいましたか?」
「はい、何名か」
「ではせっかくですから、わたくしの知る最高に素敵な方を着飾ってほしいのです」
え”。
サーシャさんがボクを見て、にこっとした。
「すぐ、手配いたします」
礼をし、素早く退室していった。
「ストック……?」
「相手をしろ、というわけではない。
ただ、私が見たいんだよ。
それに」
彼女が言葉を切って、ボクをじっと見つめる。
「七年後に向けての練習、というやつだよ。
正装での会は、まだ経験が少なかったろう?」
こいつめ。
「いきなり賓客相手とは、ハードルがだいぶ高いね。
しかし、君のエスコートの経験にも、丁度いいか」
「そういうことだ。どうだ?」
何がどうだ、だよ。
どうせそのつもりで、ドレスとかも用意してるんだろう?
サプライズというより、体調を見ながら推し量ってたってとこかな?
我らは凹凸がないからまだ楽な方とはいえ。
正装は大変だからね。
「いいとも。
じゃあその前に、ビオラ様へのレクチャーを済ませないとね。
わからないところとか、ありました?」
「いえ。いつも通り、丁寧な仕事ね。
運用中にテストを回す場合のスケジューリングは、そうなってから改めてするのでしょう?」
「ええ。今やっても、見立てがつかないですからね。
それでは……」
ちょうどサーシャさんが戻ってきた。
ストックもひとまずはいいようだし、ここからが本番だな。
「みんなで、身綺麗にされに行きましょうか」
ご清覧ありがとうございます!
評価・ブクマ・感想・いいねいただけますと幸いです。




