0-2.同。~姉よ、すまんが……こいつは私の獲物だ。復讐するは我にあり!~【XXX視点】
~~~~さらばだ相棒。あるいは、我が共犯者よ。
「なんだ。まだ察しがつかんか。
自分が策謀で殺した相手は、もう覚えていないか。
まぁよかろ。貴様の記憶になど残ったところで……」
火の粉に混じり。
しんしんと、祝福が降り始める。
金と銀の小さな光たち。
私がその男に手を向けると、その先で。
彼らが、奴を見た。
無数の球体として現れる、彼ら。
ふざけた輪廻に永く立ち向かって来た、我らの同胞。
本来、私一人では、彼らは契約してくれない。
ただ、一度だけ。
こいつを殺す機会があれば力を貸してもらえるように頼み、応諾された。
利害の一致を見たからだ。
「彼女は、不快なだけだろうからな。
ソル、ルナ。
地球より『揺り籠から墓場まで』を通じ、この世界を観測する神。
そのうち、干渉に踏み切った邪神の一柱、神主・中宮を。
滅せよ」
「が、まっ!?」
その男が、掻き消えた。
これでどの時間、場所にも、干渉できなくなったはずだ。
こいつは、役の名に相当する働きを、人に強制する能力の持ち主、だったらしい。
『ロールプレイ』だったか?強制された人物は、それに逆らえない。
ただ『役を終えている』、私や相棒、そして私の大事な人あたりは、この能力の対象にならない。
それゆえ、直接的な謀殺の対象になったのだろう。
あと船にあった、奴の残したものと思しき記録では、姉のことも触れられていたな。
逆らっているようには見えないが、効いている手応えがないとかなんとか。
…………そんな話を人が見られるところに残すとか、どういう神経だろうか。
また彼女は、速やかに手続きをとり、神主に黙って船を降りたようで。
それに対する動揺、怨嗟、執着のようなものも残されていた。
人の姉を体よく使っていたようだし、ざまぁみろというやつだ。
行き先も告げずに去った姉を、かなり人を使って探し回っていたようだ。
しかし、今回の騒ぎを起こされたところを見るに。
姉の方が、何枚も上手だったようだな。
そう思うと少し、痛快で。
僅かだが、気持ちが晴れる。
「ああ、確かに――気が楽になった。
お前の言う通りだな。相棒」
神主のいたところを眺め、ぼやく。
…………この機会、千載一遇だったかもしれないな。
こいつは外部からの鑑賞者で干渉者なのだが、今いたのはいわば、端末のようなもの。
こちら側の人間を使って、地球側の存在が干渉していた、というか。
そう考えると、当然に今回だけの行いではない。
この世界は繰り返している。そのいずれでも、同じか近いことを行っていただろう。
それが一度でも王家およびその精霊の目に留まっていれば、どこかで排除されていたはずである。
王家精霊の誅殺は、いずれの時間、場所、次元にも及ぶ。
今私がそれを為したということは、逆説的に奴は今までそれを回避できていたということ。
様々な策謀を巡らせ、常に王家と邂逅することなく、この二霊の依り代――エングレイブ王家を葬り続けてきたのだろう。
ソルとルナの囁くところによると、奴はどうやってかその接近を知ることができるそうだし。
だが私は、正規の契約者ではない。
その機会を、完全に喪失している。
だからこそ、ここまでたどり着けたのだろうな。
…………本当に、運だけはいいな。
間に合って、くれた。
体が固まり、口元も結晶となる。
しかし、ここは……墓に選ぶにはあまりに汚れ過ぎた場所だったな。
我が姉は、降りてしばらく経つようだが。
その間に、ずいぶんな組織になっていたようだぞ?
いや、これほどの悪党どもを、悪事をさせずに運用させていたほうが僥倖か。
呼吸が止まり、鼓動も弱くなっていく。
思考が、鈍っていく。
ああ――――運がよいと、本当に言うのならば。
どれほど時間がかかっても、構わない。
どうか。
またあなたに、巡り合えますように。
名前を知らぬ君よ。
朗らかに笑う、その顔が。
もう、思い出せない。
二章、開幕です。本話の投稿は以上となります。
本日はもう一話、6時より一時間おきに4部分ほど投稿いたします。




