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【完結】逆行した幼女と令嬢は車で旅に出る~ボクは4歳で攻略されたので、乙女ゲーや王子たちは今更来てももう遅い~  作者: れとると
第一章幕間.聖暦1083年夏~1086年春-二人が意味もなくいちゃつく日々-
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C-4.同。~麺の二:うどん。揚げ物、握りとの黄金の三角食べ~

~~~~油の使い方も、本当に店、食それぞれだ。味わい深い。


「またのお越しを、お待ちしております」



 丁寧な礼をもって送り出された。



「――――素晴らしかった」


「ぜひまた来たい」


「案内した甲斐があったわね」


「私も、また来たいなぁ。


 お酒がおいしいんですよね、ここ」



 なんと。ああ、こういうところならワインかなぁ。


 いいなぁ。しっとりと飲みながら、ひたすらオードブルをつまみたい。


 早く10年経たねぇかな。



「ダリア。出資できないかな?」


「そんなことしなくても、50年くらい持つわよ、ここ。


 スポンサーいっぱいいるから」


「そうかぁ。さっきのラーメン屋もすばらしかった。


 お支えしたい」


「まず食べてあげて。あとはこっちでやるわ」


「いっそ中型神器船に出店を……」


「「それ」」「だ」「よ」



 良い案だストック。


 時間をかけて、確実に進めよう。



「そのためにも、船作らないとね」


「ん。帰ったら小型から進めておくよ」


「もう帰る気のところ引き留めますけど。


 うどんやさんがまだですよー?私のお気に入りです」



 ほほぅ。


 マリーが素直に褒めるとは。



「この通りの奥なのよ。三番街まで抜けて、すぐ」



 誘惑の多そうな通りを、ダリアとマリーの後に続いていく。


 うーん。



「ストック、今どんくらい?」


「五分だな」


「ボクも。いろいろ食べられるのはいいんだけど、遠慮しちゃった」


「それでも二周したがな。けど心行くまで食べたいとは思った」


「次はそうしたいなぁ」


「なら、おうどんやさんで、おなかいっぱいになるといいですよ?


 ひたすら麺がおいしいですから」


「あと汁もね。揚げもあるけど、まぁそっちはあんたたちが食べ始めると危ないわねぇ。


 一応、大食いが二名行くって言ってあるけど」


「ボクらの食事量、大食いで言い表せる常識越えてるぞ?大丈夫か?」


「ちゃんと正確に伝えてあるわよ。私の知る限りだけど」


「ああ……君とは、飢えて食べ放題の店結構回ったから、大丈夫か」



 中型神器船クレッセントは、かなり食糧事情がひっ迫している神器船だった。


 売り物をつくらないのに、研究費がかかる。あほか。



 しょうがないから、有形無形の様々な発明を売り込んだり。


 スポンサーを捕まえて来たり。


 各国行政に伝手を使って接触し、国の事業に少し食い込んだり。



 やるれること死ぬほどやって、それで生きてられる状態だったんだよなぁ。


 同じようなことやって、余るほど資金がある今の状況とは、天地ほどの差がある。



 会計の精査をやって、無駄の削減とかもやったんだけど。


 とにかく生産能力が低かった。あの船は。


 無駄飯ぐらいが多すぎた。しかも稼ぐ人から船を降りて行った。詰んでた。



 というわけで、自分でため込んだ金もって、仕事で外出たときにやたら食べた。


 ボクの数少ない自己資金というかお小遣いというかは、すべてそれに消えて行った。


 友達とも割と行ったよ。というか、遊ぶ=外で飯食べるだった。



 当時の世界情勢もあって、みんな飢えてたからね。


 食べ物ある所に行って、食べる。それだけで十分娯楽だった。



 ボクらが12の頃から、徐々に半島中の食糧生産が細っていった。


 理由の一つは、イスターン連邦が穀倉地帯ごと滅ぶから。


 その上、王国の生産力まで減った。その頃合いに向けて、対策しなくては。



 まずはボクの方で調べ。確証を得る。


 聖国が呪いを使うとはっきりしてきた以上、それ絡みだ。


 メカニズムを解明し、あとは大人と相談だ。



 ちょっと実地で継続した調査がいるから、お金と時間が要りそうだけどね。


 少しずつ、やっていこう。



 最初のラーメン屋そっくりの店の引き戸を開けて、ダリアが中に入っていく。


 名前が似てる……縁のある店同士なのかな?


 兄弟でラーメンとうどん、別々の道に進んだ、とか。



「さっきのラーメン屋さんの、ご兄弟がやってるんですよ」



 まじか。ビンゴとは。



 中に入って、砂を落とし。また手を洗って。



「ああ、ここは各自注文式か」


「そうです。慣れてない?」


「いや、王国にもあるよ。ねぇストック」


「ああ。というか普通に我々、屋台で食べたりもしてるしな。


 大丈夫だマリー」


「じゃあ並んでくださいね。お代わりのたびに並ぶの、面倒かもですけど」


「それもまた楽しみさ。


 ほぅ……ただの熱汁だけでないのだな」


「ほんとだ。冷もあるけど、そもそも濃い汁をかけるだけ、ってのがあるんだね」



 このうどん形式は初めて見る。



「じゃあそれからかな。


 すみません、肉のかけ。えっと、特盛からお願いします。


 揚げも一つずつつけてください。あ、握りとかも」


「よく食べるねぇ。ああ、姫さんのお客さんか。


 そっちの子も?」


「量は同じ。私は卵から行こうか」


「あいよ。そっちで受け取ってね」



 お盆を持って、カウンター沿いに進む。


 幼児の背丈でも、ギリ何とかなる。


 ただ揚げや握りは手が届かないので、これは頼むしかなかった。



「かけたまってやつか、ストック」


「お前が真っ先に行くと思ったぞ?」


「ボクは好きなものは、最初と最後に回すんだよ」


「そうだったな。葱だれとかもよさそうだな」


「いいね。辛みのやつもあるのか。楽しみだ」



 溢れんばかりの麺と、皿一杯の揚げや握りを受け取って。


 お、座敷がある。先にダリアが行って待ってる。


 ……握りがいっぱいある。こいつおにぎり好きだったな。



「相変わらず、ここのおにぎり好きですね、ダリアさん」


「ここの六個握りは絶品なのよ」



 ほほぅ。それは後で頼まなくては。



「持ち帰りもできるから、気に入ったら後で買うといいわ。


 お宿で少し時間が経ったのをつまむのが、またいいのよ」



 王女の味わい方ではないが。



「ぜひそうさせてもらおう」


「結構頼んじゃっても大丈夫かな?」


「ん。今のうちにある程度頼んでおいてあげるわ。


 気にせず、うどん堪能しなさい」


「ありがとう。では早速」



 箸をとり、手を合わせ、ストックと二人食べ始める。



 ――――これ、は!



 箸が、止まらなくなる。


 なんてクリーミーなうどん!


 しかも鮮度。そうはっきりわかる鮮度!



 製麺はこの場ではしていなかった。


 まさか……うどん工場直結か、この店!?



「大量生産か、少量での店舗製麺か。


 議論は尽きないところだけど、ここは大量生産の強みを生かした麺を作るわ。


 握りや揚げもだけどね」



 ……!?


 なんだこの揚げは、時間が経っているのに、うまい!


 油っ気が全然ない!なのに柔らかさと歯ごたえが同居している……。



 負け、た。この工夫は、個人のできる範疇では、ない。



「元は、お弁当屋さんから始めたって聞いてます。


 だからどれも、時間が経ってもおいしく、ってコンセプトなんだとか」


 素晴らしい。そのテーマに則り、芯まで魂が入っている。



 ちょっとこの握り、どうなってるの……なにこの出汁。


 魚介系にしては癖がなさすぎる。塩気がほどよく滑らか。そして米がうまい……。


 固さがほどよい。空気に触れた米と海苔が、時間を味方につけて、旨味を増している。



 そして今一度うどんに戻る。


 おお……この汁の感じ。一番濃いところに戻ってきたはずなのに、口の中が洗われるようだ。


 ここが基盤。このうどんの味が土台になって、揚げ、握りへと味わいの道が確かに繋がっている。



 二周、三周と繰り返す。


 間違いない、この順こそ黄金の回路だ。


 ストックも同じようにうどん、揚げ、握りを食べている。



 ありがたいことに、量の頼み方も本当にちょうどよかった。


 食べる量を調整しなくても、確実にこの循環を維持できる。


 幸福な螺旋に陥ったようで、手が止まらな――――



 二人、汁まで飲み干してから席を立つ。



「次だ」


「ああ」

次の投稿に続きます。


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