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【完結】逆行した幼女と令嬢は車で旅に出る~ボクは4歳で攻略されたので、乙女ゲーや王子たちは今更来てももう遅い~  作者: れとると
第一章幕間.聖暦1083年夏~1086年春-二人が意味もなくいちゃつく日々-
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C-2.同。~麺の一:野菜炒め乗せ熱々ラーメン~

~~~~連邦も王国と方向性は別だが、食にうるさい。いろいろ気ままにめぐってみたい国だな。


「そういや二人とも麺類自体は普通に食べたことあるの?」


「私はないな。箸は大丈夫だが」


「ボクはちょっと。箸は同じく」


「え”。私未だに慣れないんですけど。


 なんで二人は使えるんです?」


「「教育の賜物」」


「これだから貴族は……」


「マリー。ボクは淑女教育だ。


 君は何で使えなんのよ」



 マリーは出身の聖国で、淑女の薫陶を授かっているはずである。


 この場合の淑女とは、聖教聖女派の特別なものを指す。



「んぐ。小豆を箸でつまめとか、無理ですって……」



 姿勢を崩さずに、ひたすら豆を箸でつまんで別皿にうつす練習をさせられる。


 こう、やってると心が無になってく感じだ。



「そんな教育されんの?聖女派って」


「されますよ」「めっちゃされる」


「それは一体何の意味があるのよ??」


「他の食事作法がものすごい安定する。


 結構、効率よかったよ」


「効率の問題なの……?」


「ボクにとっては。ほかにもやることいっぱいあったし」



 前の時間の時、今より低い年齢から、ビオラ様に習い始めたからねぇ。


 勉強も鍛錬も雑用もやってたから、そりゃ効率重視になるさ。


 まぁビオラ様がそういう指針だったんだけどね。



「効率と言えば。進捗どうなの?」



 ボクとストックはそろって頭を抱えた。



「ダメなのね……」


「エネルギー効率が上がらない……」


「神器車サイズからぴたりと大型化できない……」


「それは……ダメなんじゃないですか?」



 二人でちょっとむせた。


 抉り込まないでくださいまし、マリーさんや。



「神器車の総神器構造はできたから、研究としては完成。


 でも研究所にする中型神器船どころか、小型神器船もできない。


 最悪、ちょっとすごい中型神器船に落ち着く、んだけど」



 どうしてか、大きくし出すと神器間のエネルギー伝導が途端に落ちる。


 工材として使う神器の数や、サイズの問題じゃなさそうなんだよねぇ……。



「出資者には、ある程度説明してるからな……。


 できたものを見られたら、資金を引き揚げられるだろう」


「だよなぁ。お金は困ってないけど、信用はダメだ。


 今後の活動に支障を来す」


「何が問題かの見立てはついてるの?」


「使用する神器の数ではない。そこに有意差はなかった」


「一つあたりの神器サイズも関係なし。


 短剣サイズで頑張って組み立ててみたけど、やっぱクルマより大きいとダメ」


「あとは……何かしらね」


「剣とか材料に使ってるんですか?槍とかは?」


「あー……まだ剣だけだね。何か違いでるかな?」


「やってみないとわからんが……」


「ガワの形自体はどうしてるの?長方体?」


「うん。そうだよ」


「あれ、魔力流の形そのものに合ってないって論文、あったわよ?


 前のときちらっと見ただけだから、今はないけど」



 ボクとストックが席を立った。



「座んなさい」


「ラーメン食べないと、ダメですよ」


「「はい……」」



 二人、おとなしく腰掛ける。



「帰られちまうと思ったぜ。


 お待ち。匂葱マシマシだけど、大丈夫かい?」


「ええ、ボクもストックも好物です。


 あ、丸々焼いたのが入ってる……おっと」



 ストックから箸を受け取って、すかさず食べそうになったけど。


 気を取り直し、手を合わせる。


 礼儀、大事。



「「「「いただきます」」」」



 外はまだまだ暑っついけど、やっぱ油麺は熱々がいいよね。


 麺を箸で持ち上げ、二・三度揺すって冷まし。


 唇で少し触れて温度をみて……おっとこれ、油結構ついてる。



 野菜炒めを後から乗せてたから、それのせいだな?


 いいね。冬の夜に、がっつり食べたくなる。


 やけどしないように、慎重に麺を含む。



 とろっとした油。内包された爆発するような温度。


 複雑な……鳥と魚介出汁の香りと、味。


 ベースは塩。濃いのにさっぱりしていて、後を引かない。



 すぐに次が、食べたくなる品だ。


 いいね。



「すみません、替え玉を二回分。順に固くしてってください」


「私も」


「え”。もう次食べるんですか?」


「これは温度のあるうちに堪能したい。三度は食べなくては」


「ああ。冷めてからも楽しみだ」


「「…………」」



 ダリアとマリーが無言で麺を啜ってる。


 一応、連邦は啜るのはOK。しなくてもいいけど、したほうが礼に適うととられる。


 貴族の会食は別だけどね。そっちはNGだ。



 ボクとストックは、無音で麺と野菜を掻っ込んでいく。


 替え玉の一つが来たところで、ちょうど麺が尽きた。いいタイミングだ。


 すぐ入れ、二玉目。



 投入仕立て。まだ混ざらない麺と油、汁。


 温度の落ち着かない油が、新しい麺とちょうどよく絡まり、新たな感触を口の中にもたらす。


 普通のラーメンくらいの温度感になってきたが、まだ熱々だ。



 油と麺と汁、どんぶりの中の未熟な連携が、食べるごとに練度を増していく。


 あっという間に馴染みそうになるが、止まらぬ箸が掬い上げ、口に運ぶ。


 まだ未熟で新鮮で、新しい驚きがありそうなところを探して、箸が動く。



 静かに、素早く次を――――もう、なくなった。



 素晴らしい。



 すかさずおかれた三玉目を注ぎつつ、ストックを見る。


 彼女もこちらを見ていた。頷く。



「「あと二玉、野菜も追加で」」


「あいよ、替え玉2、野菜追加!二人前だ!急げ!」



 三玉目は混ざりが早く、温度も落ち着いてきた。


 だがこれが、このラーメン本来の味だ。


 油と汁が温度を犠牲に、よく絡んでいく。



 複雑な出汁の味が、口いっぱいに広がっていく。


 匂葱の香りも、ここにきて芳醇になってきた。


 汁を一気に飲み干したい欲求を抑え――麺にかかる。



 次の野菜追加では、もっと薄味になっていくだろう。


 だがよりさっぱりし、次を食すのが楽しみな味わいになるはずだ。


 待ちきれないが、今は三玉目の麺に全力を尽くす。



「ご馳走様。混むから、前の店で涼んでるわよ。


 おやっさん、お代はその子たちが払うから」


「あいよ姫さん。マリーちゃんも、またな」


「はい、おいしかったです。ごちそうさまでした」



 二人、席を立って出て行ったが。


 ボクとストックは、まだ序の口と行ったところだ。


次の投稿に続きます。


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