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【完結】逆行した幼女と令嬢は車で旅に出る~ボクは4歳で攻略されたので、乙女ゲーや王子たちは今更来てももう遅い~  作者: れとると
第一章幕間.聖暦1083年夏~1086年春-二人が意味もなくいちゃつく日々-
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A-4.同。~お土産(仕事)を渡して見送る~

~~~~よし。一仕事終わって、ほっとしたわ。これで……重大な懸念が話せる。

 武術と呪縛が併用できるなら。


 魔導と呪縛だって併用できるはずだ。


 両者は真っ向から衝突するような現象ではない。



 聖教の信者が、特定のワードに反応して、重大事を本国に通知する。


 そういう仕組みがないと、聖国の持ってた各国の情報精度が高すぎるのだ。


 多少の間諜がいるだけでは、説明がつかなかった。



 前の時間の聖国は、あの混乱期に異常なほどうまく立ち回っていた。


 その秘密がその仕組みにあると、ボクは睨んでいる。



「む。それは……結びつくな」


「父上、人が、呪いを?」


「呪縛と呪詛の違いはわかるね?アスロット。


 王国の精霊は呪詛の使用は厳しく罰する。


 だが呪縛は見逃す。それを利用した手法が、世にはいくらかある。


 魔導との組み合わせは、聞いたことはないところだが」



 アスロット様も引いておられる。


 まぁ初めて知るとそうよね……。



「アスロット。聖国は呪いを使っているという噂は、元々あるのよ。


 王国以外の場所でやっているという話だったけど。


 呪縛と法術を組み合わせて、複雑な手段で諜報活動としている、というのが今回の話よ」


「叔母上……少々、衝撃的な話です」



 国防としては耳が痛すぎるよね。


 聖国は徴税隊と呼ばれる、信徒から魔力を徴収する人らを各国に派遣してる。


 条約で彼らはこの徴収行為を認められているから、簡単に外国に入り込める。



 この辺を中心に諜報活動を広げられていると、非常にやりにくいだろう。


 大丈夫かな?間諜そのものについて、もっとえぐい話があるんだけど……。



 まぁまずは通報の方か。



「洗礼法術で名を与えて縛り、これを時間をかけて呪縛へとしていく。


 その上で、禁句集に抵触した場合に、通報が発生するのではないかと」


「聖教聖書の禁句集だね?」



 一応触れておくが。ロード共和国の聖女派経典には、この内容はない。


 禁句集が載っているのは、ウィスタリア聖国聖教の聖書だけ。


 ついでに言うと、洗礼があるのも聖国だけだったはずだ。



「はい。名前と魔導がキーなので、ウィスプの力で破棄できる可能性があります。


 名前と魔導が失われると、呪縛の原因がなくなって、呪いが失効します」


「検証が少し大変だね……」


「ご協力いただいて、一人試せばいいのでは?


 例えば、コーカス・ファイア様は洗礼名をお持ちと予想しますが」



 大公閣下は聖国と共和国、二つの聖教国家に強いコネクションがある。


 本人も聖教徒。表向きは聖国の方だ。


 そして聖国聖教徒なら、洗礼名は持っている。



「ああ……コーカスか。


 しかし、洗礼名を破棄させてばれないものか?」


「魔導ですし、ばれません。


 遠くの魔導使用状況を監視する手段は、この半島にはないですから」


「呪いの方では?」


「この手法の場合、信者の方が自らを呪っている構図です。


 当然、自身の呪いが解けたらからって、それを知らせる手段はありません」



 この半島で遠くに情報を渡せるのは、緊急通報の魔導だけだ。


 あらかじめ通報先の人の魔力を何らかの手段で持っておき、そこに情報を伝える。


 ただ使い切り前提だ。多量の情報を渡す場合、非常に高精度な魔導となっていく。



 魔道具にもなっているが、超お高い。でも冒険には欠かせなかったな。



 車両契約にも同様の機構が入っているが、これは精霊ウィスプの力の流用である。


 ウィスプはまぁ……例外のようなものだなぁ。


 人が自由にできるわけではないが、通信しているようなものでもあるし。



 王国内にしか、働かないけどね。



「わかった。こちらで慎重に検討を進めてみよう」


「ちなみにもう一つの方。えぐい事例を知っているのですが……」


「間諜自体の方かい?どういう?」


「イミテーションエイプ、という魔物をご存知ですか?」


「……古いが、王国を揺るがした大事件じゃないか。


 国の小さな子供を浚って育て、呪いで先兵に仕立てた魔物が攻め込んで……。


 まさか」


「ボクもまた、聖国に浚われた一人。


 あそこの国は、王国から人を浚うルートを持っています。


 そうして育てた人間に呪縛をかけ、戻している」



 さすがにキース様も引いてる。アスロット様は言葉と色を失ってる。


 おいしいご飯の後で、こんな話してごめんよ。



「……イミテーションエイプの件は、古すぎてほとんど記録がない。


 だが近い事例があるなら、同様のことが可能かは、疑わないといけないね」



 6000年前となっていた。ほとんど伝説だ。


 このエイプの侵攻が大事件になった理由は二つ。



 一つは、先兵となった子どもたちが恐ろしく強かった、らしいこと。そう記録されてる。


 もう一つは想像だが、その先兵を殺せなかったことだ。


 殺すな、犯すな、呪うな。王国民の子どもを殺せば、殺した方が精霊に罰を受ける。



「小さな子ども、ということは。公契約を結ぶ10歳未満です。


 公契約があると、戻された場合はいろいろなところでばれますから。


 でもそれ未満だと、周りから疑って照会されないと、はっきりしない。


 確かその状態でも、小さな村落なら活動が可能なはずです。


 そしてその活動で地位や名声を得れば、より大きな街に出ることも」



 王国民は、生まれたときに王国民登録を。


 10歳で公契約を。


 15歳で成人契約を結ぶ。



 それぞれいろいろと違うが、何かやって精霊がすっ飛んでくるのは、公契約と成人契約から。


 例えばだが、ボクらが王国内で人を殺しても、すぐ精霊が飛んでくることはない。


 そのかわり、公契約を結んだ段階で発覚し、罰せられる。



 王国民登録だけした子をまず浚う。


 それを15-6まで育ててから、王国にそっと戻す。


 王国民登録があるので、国内には素通しで入れてしまい、活動ができる。



 何か悪事を働いても精霊は飛んでこないし、罰せられることもない。


 未契約状態だとばれさえしなければ、密かに活動し続けられるのだ。


 もちろん罪を犯して人に掴まって未契約状態がばれ、契約させられたら、その時点ですべての罪を償うことになるが。



 恐るべき点は、この手段をとっているとして。それが王国にまったくばれていないことだ。


 どれほど統制のとれた間諜なのだろう。



 人さらいの方もだ。


 王城から浚う時点でとんでもないが、何か秘密があるのだろう。



「そうして王都を含め、要所で活動している工作員がいる、と。


 先の通報の呪いと合わせて、か。精霊の目を完全にかいくぐっているな」


「対王国用の諜報活動手段でしょう。


 通報については先の通りですが、工作員は一網打尽にする手段が思いつきません」


「それこそこちらに仕事さ。ありがとうハイディ。


 アスロット、帰るよ」


「は、はい!?父上、もう!?」


「さすがにこれは、すぐ持ち帰らないといけない。


 国防もだ。派手に動けない分、時間が要る。


 またゆっくり話をしよう。ハイディ。


 リィンジアと、メリアも」


「あ、ちょ。父上!っと。皆さま、失礼いたします。


 リィンジア。とてもおいしかったよ。ありがとう」


「こちらこそ、兄上。お帰りお気をつけて」



 お二人はそそくさと出て行った。


 あー、まぁ。話したらこうなるんじゃないか、とはヴァイオレット様も言っていたが。



「御苦労さまハイディ。あとは大人の仕事。


 あなたはいい加減、休みなさい」


「あー……ですがヴァイオレット様。


 いい神器船工場が見つかったので、ボクはシャドウに下見に……」


「「休みなさい」」


「はい」



 姉妹で揃って言われた。くそう。



「ドーンにいながら、どうしてシャドウの工場が見つかるのかわからんなぁ……」


「それがハイディだよ、メリア。


 では母上、叔母上。私が責任もってハイディを休ませますので。


 デザートを用意していますので、皆さんはこちらでお召し上がりください」



 デザート!?聞いてないぞボクの……


「もちろん、お前のも用意してある」



 えっと。


 なんでそう、艶やかに笑ったし?ストック。

次の投稿に続きます。


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