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2.魔境より南西、コンクパール山を越え、エングレイブ王国南東領へ。

―――ーゲームの展開なんて知らん。ボクは悪役令嬢を救いに行く。

 …………ここに来たのは、100%ボクの感傷だ。


 わがままを言って、ルートを選ばせてもらった。


 今いるのはコンクパール山脈で一番北の……あのときと、同じところ。



 空気がとても澄んでいる。


 ここは多少標高が高いくらいで、ちょっと寒い程度で済む。


 雪はほとんど降らないし、もう春だから凍えたりはしない。



 ここも一応、山頂と言えば山頂なのだけれど。


 山脈の中では、低い方の山なんだよね。


 コンクパールの高いところは、もっと南……山脈の中ほどにある。



 ただ、半島の景色を見るなら、やはりここだ。


 東に聖国、東北東に共和国。そしてぐるっと北側に広がる帝国。


 西の連邦は見えないけど、王国は見ることができる。



 そして各国の間を縫うように広がる、魔境。


 魔境、か。


 自分の感覚としてはつい先日の、あの光景を思い出す。



 あの時は、河だらけの聖国の、河という河の流れがバラバラに変わって。


 共和国をぐるりと囲んでいる、水の流れが解体されて。


 帝国を横断するように、北方凍土との間を走る河が、消えて。



 それらは三つの国を、それぞれ魔物の大量に棲む魔境から、守っていた。


 その守りが消えたばかりか、水害にも見舞われて。


 最後まで見届けることはなかったけど、相応の被害を生んだだろう。



 とはいえ、それでも水に囲まれた地域は結構残るので、人類は生き続けたろうけど。



 もし復讐が目的なら、あれは手ぬるいやり方だっただろう。


 王国は徹底的に破壊された。夥しい数の人が亡くなった。


 革命のふりをして、諸国戦力が入り込み、好き放題やってやがった。



 ボクはそれ自体には、それほど深い恨みはないのだけれど。


 次は、阻止したい。


 今度こそ、力を尽くして。



 東から日が昇ってきて……明るくなってきた。



 車の天井に乗ってるので、あの時よりさらに遠くまで見える。


 良い景色だ。18年後の地獄絵図は、まだ見えない。


 そしてここには、友達の亡骸もなければ、青い墓標もない。



 昨夜はここに停まって食事して、夜を明かした。


 食料や水は山に入ってすぐの小さな村で、相応に買い付けられた。



 エリアル様とフィリねぇは、まだ車内で休んでいる。


 ボクは……なんか目が覚めてしまった。



 二人には、これから先のことを……だいぶ話した。


 ボクが最後に、この半島を滅茶苦茶にすることも含めて。


 その上で、そうならないようにしたい、とも。



 フィリねぇにはめっちゃ泣かれた。なんでや。


 エリアル様は……なぜだか嬉しそうだった。



 その後寝ていたら、何か知らん情報がいろいろ頭に浮かんで、目が覚めて、眠れなくなった。


 たぶん、あの赤い結晶がボクの頭に何か持ち込んだんだと思う。


 船を出る前も、なんかタイヤとかカーナビとか言うとったしなボク……。だいぶ、影響されてるみたいだ。



 右手でロザリオを弄りつつ、ぼんやりと考える。



 どうもここはある世界……地球?という星から、ゲームという形で観測されているようだ。


 で、あの時の声は……プレイヤーっていうのかな?こちらでは神様と言われている人たち。


 そしてボクらはゲームの登場人物ってわけだ。ボクなんて、主役らしいよ?あんな事しでかすのに。



 ゲームの題名は『揺り籠から墓場まで』。乙女ゲーというジャンルらしい。ソーシャルゲーム?として配信されたんだと。


 6人の恋人候補と主人公の、王立魔導学園での恋模様を描く。主人公のライバルとして、悪役令嬢が登場する。


 ゲームプレイヤーは分身たる「神主」の視点から、この物語を見る形だ。



 神主というのは、主人公が本拠にしている「神殿」にいる大人の一人だ。


 主人公に助言を与えたり、鍛えたり、教えたり、強くしたりする。


 戦術の妙手で、本人が指揮をとったりもする。



 主人公は悪役令嬢と衝突しながらも、学園生活を謳歌。


 しかし王国は途中、飢饉と革命に見舞われて滅亡。彼らはその後の戦乱に巻き込まれていく。


 最終的に主人公は闇堕ち?して仲間を全員裏切り、半島に災害をもたらす。



 コンクパール山脈で主人公は、友達の一人と対決。


 友達はなんとか退けるものの、悪役令嬢に倒されて絶命。悪役令嬢も力尽きる。


 恋人候補は、その友達と結ばれて終幕する。



 何かこう……いろいろ斬新な展開だな。


 なお、この闇堕ち展開は、開発だか運営だかプロデューサーだか、そういうのが途中で変わってそうなったらしい。


 そのまま次回作に続いたとなっている。受けたんか?これが??



 主人公はウィスタリア。ボクのことで間違いない。


 悪役令嬢はリィンジア。うっすら覚えてるが、「ストック」の本名で間違いない。


 友達やら、恋人候補やらの名前も、それぞれ覚えがある。



 しかしゲームと現実は完全に同じ、というわけではないみたい。


 例えば、ボクが六人の友達を全員殺しちゃって、勝ってしまう展開というのは、そのゲームにはないようだ。


 ゲームで起こされてる災害とやらも、水脈暴走じゃないな。魔物災害?というものらしい。



 半島がめっちゃくちゃになるのは変わらんけど。



 あとボクらがいた組織、『クレッセント』と『ラリーアラウンド』のことが出てこないような……?


 ボクは「ハイディ」じゃなくて常にウィスタリアってなってるし、あの子はリィンジアってずっと呼ばれてる。


 ボクとしては彼女は「ストック」なので、ちょっと変な感じがする。



 この辺が、ボクが「ゲームとして観測されている」と理解している所以だ。


 こっちの情報を何かしらの形で拾い上げて、それをゲームとして整えて作ったような……そんな印象がある。


 本筋の恋愛テーマに関係ないところを、意図して削ってあるというか。


次の投稿に続きます。


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