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【完結】逆行した幼女と令嬢は車で旅に出る~ボクは4歳で攻略されたので、乙女ゲーや王子たちは今更来てももう遅い~  作者: れとると
第一章幕間.聖暦1083年夏~1086年春-二人が意味もなくいちゃつく日々-
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A.急に旦那の実家がやってきた。

――――お義父さまにご挨拶して、しかも仕事の話かよ。緊張するが、淑女たるもの。見事、こなして見せよう。


 聖域ドーン、ロイド邸宅前。


 その日、ボクは初めてストックのお父さまとお兄さまに会った。



 あの決戦からはしばらく経っている。


 非常に遅いが、娘のお誕生日祝いも兼ねて、とのことで来訪された。



 キース宰相閣下と、アスロット様。


 キース・ロイド様。灰髪灰目、背が結構高く、姿勢も実にいい。


 あと……はっきりと美形だ。ファイア大公と並ぶと、絵になりそうだ。



 アスロット・ロイド様。髪と目は赤だ。


 背はキース様、ヴァイオレット様よりさらに高い。


 すっきりした印象の青年だ。



 聖域までは神器車、入ってからは馬車で来ただろうお二人。


 降りたところで出迎えて、礼をとって待つ。



 前にヴァイオレット様とビオラ様、ストック、メリア。


 そしてボクとミスティが、彼女たちの少し後ろに控えている。



「遅くなったね、ヴァイオレット」


「予定通りでしょうに。


 ああ、誕生日よりということであれば、ある意味ちょうどいいわ」


「それはどういう?」


「この子たち……特にハイディは働きすぎなのよ。


 予定を入れてもらえると、休ませられていいから」


「この年で魔境防衛領主に心配される働きっぷりとはね。


 リィンジア、紹介をお願いしていいね?」


「はい、お父さま。


 こちらから、当家に入ることになったメリア。


 そしてコンクパール家の令嬢、クレア。ミスティとお呼びください。


 最後が当家預かりの巫女になった、ウィスタリア。非公式の場では、ハイディと」


「初めまして。メリアです」


「ミスティと申します」


「ハイディです」



 本名の方がほんとはいいんだろうが「呼んでほしい」と紹介者に言われたからには、そちらの名で頭を下げる。



「皆さん。こちらがわたくしの父、キース・ロイド。王国宰相を務めています。


 それから兄のアスロット。国防省勤務です」


「キースだ。初めまして」


「アスロットです。ご令嬢がた」



 二人とも、胸に手を当てて丁寧に礼をした。


 さまに……様になりすぎる。美形つよい。



 その美形の片割れ、キース様が……ちょっと睨んでるビオラ様に向き直る。



「……ビオラ、と名乗っていると聞いたよ。


 相変わらず君は、私には当たりが強いね?」


「そんなことはありません、義兄上。


 単に、姉さんの完璧な旦那様が、宰相ごときで留守にしすぎ、と思っているだけです」


「叔母上、如きとは……」



 アスロット様が口を挟もうとしたのを、キース様が手で制して止める。



「アスロット、ビオラの指摘は合ってるよ。無礼でもない」


「そんな!国の重鎮を、軽んじる発言など!」


「……どうぞ?」



 思わず手を挙げてしまった。


 促されたので、もう一度カーテシーをとってから、直り、発言する。



「失礼いたしました。


 ロイド家には宰相位より、精霊によって賜った最重要事項があるので、如き呼ばわりは普通です。


 ドーンの難事に王都に張り付いて宰相やってた、は失笑の種にしかなりません。


 社交界でも同じように言われるでしょう?」


「言われるねぇ」



 当たり前である。


 宰相は大事だが、ぶっちゃけ代わりがいる。部下もいるんだから、本人いなくても回せる。


 精霊ウィスプがいるんだから、宰相本人の関与は最小限でも構わない。それで国は回る。



 だが魔境防衛は、ロイドが務まらないなら、家ごと代わりを立てられてしまう重要事だ。


 崩れられると、そのまま国が滅ぶかもしれないからね。


 優先順位としては、キース様は本来こちらをとらなければならない。



 宰相としても、ロイド家の人間としても。



 これが国防省長官との兼務なら、別に文句は言われない。


 戦力を送り込むことができるからだ。



 だが契約省を配下におく宰相の場合、その貢献はもっと国に寄ってる。


 積極的に領に関わらないなら、ないがしろにしているととられる。


 問題は、人がそう思うということは、いずれ精霊もそう考えるということだ。



 この辺、感覚的には他所の国や地球って文化圏だとわかりにくいかもなぁ。


 もちろん、ボクがそう思うっていうよりは、この国じゃそういわれるよ?って話だ。



 ボクとしては、特に先の件はある種の内幕も知ってるから、特に文句はない。


 キース様どころか、ヴァイオレット様だって故意に留守にしたんだからね。


 そうやって敵を網にかけた。結果は大成功、と。



「父上ッ!そんな話は、捨て置けば」


「アスロット様。捨て置いてはなりません。


 両方やって、ロイドの宰相足り得るのです。


 今代はたまたま、ヴァイオレット様がとても優れた武人なので、もっているだけ。


 歴代のロイド家ご当主たちは、そのように国と領を守っています。


 ロイドの期待は、それほど重いのです。


 いずれ社交界ではなく……精霊が、そう囁きますよ」


「ぐっ……」



 アスロット様はちょっと悔しそうだが。


 ――――キース様は、笑っている。



 ちっ。



「お見通しでございますか」


「いいや、鮮やかなお手並みだ。


 話を聞こうじゃないか。


 リィンジアは、よく学んでおきなさい」


「はい、お父さま。いつも驚かされております」


「父上、どういう……」


「アスロットもだ。続きは、食堂でしようか」



 ぶー。所長、あなたの義兄は手強いですー。


 さすが宰相閣下。



 ビオラ様を見ると、ちょっとこっちを見てにやりと笑った。





 今日は使用人の方には、かなり暇を出しているそうだ。


 古くから家に使えているという人たち数名が、料理を出して回っている。


 ちょっとアレなお話も入るかもしれないからと、当主がそういうご判断をしたそうだ。



 まぁ、ボクがその可能性に触れたせいなんだけどね。


 みなさん、忙しくしちゃってごめんよ。


 料理の方はボクもがっつり手伝ったので、お許しくだされ。



 今日はコース配膳ではない。いくらかは後から来るが、だいたいが最初から並んだ。


 汁物、菜物、煮物、焼き物、揚げも……どっかの和食膳みがあるな?


 中身はがっつり洋風で、そりゃあもう美しい盛り付けだ。ボクはこれ、真似できないなぁ。



 いや、同じことはできるよ?でも、微妙に一つ一つ違う盛り付けで、センスあふれるというか。


 レシピもそうだ。この食材と調理法でこうはならんやろ?って独創的な物が多い。



「さて。おなかも空かれたでしょう。どうぞ、お召し上がりくださいませ」

次の投稿に続きます。


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― 新着の感想 ―
[一言] しっかり胃袋つかまれてるぞハイディwww
[一言] 嫁の手料理で胃袋も掴まれて... やっぱりもう...戻れないねぇ...
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