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X-5.同。~そして未来を、選択する~

~~~~お会いできたのは嬉しいけど、淑女みは拾ってきません?どこに捨てて来たし。

 さて。


 お願いは叶えて差し上げられたし。


 ちょっとは質問してもええやろ。



 ヴァイオレット様に向き直る。



「で。ヴァイオレット様はモンストンでミスティの話を聞いて、ボクを見定めていたんですか?」



 ミスティは皇女誘拐のために網を張っていた。


 彼女は高位貴族の令嬢だし、そこまでやってるなら領主のヴァイオレット様とは面識があっただろう。


 その後たびたび接触を図り、ボクを推し量っていたんではないかな。



 特に、パールでボクはオーナーのことをミスティに話している。


 しかも、オーナーとの接触も掲げていたわけで。


 ミスティはそれを密かに聞くか調べるかしたのだろう。



 ヴァイオレット様の耳にもその流れで入り――オーナーが自分の妹だと直感したのではなかろうか。


 そうして、ビオラ様と縁の深いボクなら、名前を知ることができるかもしれないと、目をつけていた、と。



 そしてボクは、タトル公爵――ディックを退け。邪魔(ヤマ)を倒し、既存の流れに大きく逆らった。


 役に対して強い反抗を成し遂げていて、かつオーナーと縁が深い。


 だからこの機会を設けたのだろう。



「そこまで厳しく見ていたつもりはないのだけどね。


 ただ、最初会ったときから、ただの巫女で終わらせるにはもったいがないとは思っていたわ」


「巫女に押し込めるなんて、そんなことしたら損失ですよ姉さん。ハイディはすごいんですから」



 やっぱりこの人、思いっきり前の時間のこと認識してるし。


 そこはなんでや。


 ミスティとは微妙にちゃうぞ。どういうことだ。



「ボクは見初めてくれた人がいるので、もうこのままのんびり巫女がしたいんですが?」


「え、え?ちっちゃい頃から大人気のくせに、男っ気ゼロで、逃げ回ってたあのハイディが???


 誰よ、紹介しなさいよ」



 圧が、圧が強いぞこやつ!?


 ボクは無言で右隣のストックの左手首を掴み、手を上げさせた。



「…………そういう趣味だったの?」


「違うよ?ボクは同性愛者ではない」


「??????」



 この人、後で娘にも同じ話されるはずなんだけど。大丈夫かね?



 大丈夫と言えば……ちょっと気になることがある。


 こんな深夜に接触を試みさせたのは、ミスティ経由で、ビオラ様からの提案だろう。


 ボクがこの方に初めてあったのは、たぶんこのくらいの時だ。



 前の時間で。エリアル様が運転し、神器船を脱出した後。


 魔境を彷徨っていたところ、神殿の面々にたまたま接触。


 彼らに連れられ、ボクら三人は魔都へ行った。



 そして五歳の誕生日。暑くて寝付けなくて深夜に神殿をうろうろしていたボクは、名のない貴族のその人に出会った。


 彼女は建造予定の神器船の出資者――オーナーを買って出ていたそうで。


 ボクはその深夜の邂逅の縁で、彼女について『クレッセント』に所属することとなった。



 つまり、今は時系列がクレッセント建造あたりと被るんだが。



「ビオラ様。クレッセントはどうするんですか?」


「前にあんなことになったから、出資は取りやめたの。


 私がいて、内戦が防げるわけでもないし。


 それでどうしようかと思っていたら、ミスティに会ってね」



 いろいろと危なかったな……。クレッセントを宛に探してたら、見つからなかったのか。


 探偵様々だ。



「話を戻すけど……ハイディ、と呼ぶわね。


 あなたは、どこまでだったらやってくれる?


 巫女でもいいけど、そうすると意外に自由はないわよ?


 クルマ旅は難しくなるわね」


「ああ、そうでした……。当分学生だろうからと、忘れていました」


「あなたたちは推挙したのだから、神学校卒業相当なのだけど。


 巫女になるなら、すぐ職についてもらうわ」



 なんだって!?話が違うぞストック!!


 あやっべ、みたいな顔して目を逸らすなストック!


 手抜かりとは珍しいな!!



 くそっ、こうしちゃおれん。力を尽くせハイディ!


「中型神器船の運用管理ができます。魔境航行折衝も可能です。


 船自体も動かせますし、何なら船の設計、組織設立、管理体制確立、一通りやれます!」


「神器船を動かすために、生まれたような子になってるわね……。


 私が後見について、折衝くらいはやってあげたほうがいいとは思うけど。


 どう?姉さん」


「そうしましょうか」



 おまちになって。



「船の建造計画が、あるんですか?」


「これからよ。ここにそれが認可できる領主。


 そして出資者。


 さらに設計者兼神職兼責任者がいるわね。


 神器車の運用試験は、魔境の方がいいでしょう?」



 思わずストックを見る。



「大事な話があると言ったろう?


 研究所を――神器船上で作ればどうか、となったんだ」



 膝から、崩れ落ちた。



「…………やらせていただきます。ただ条件が」


「何かしら」


「いえ、大したことではないのです」



 立ち上がり、ぐっと拳を握り締める。



「総神器構造の神器船を作らせていただきたい!」


「早まるなハイディ!!??」


「やりたくないか!?やりたいだろう!!」


「落ち着け!どんなだけ費用がかかると思ってる!!」


「中型が大型になるくらいだよ!試算くらいできてるわ!」


「聖域一基分かかる中型神器船を作るということ?利点は?」



 お、ヴァイオレット様が食いついた。


 しかもこれは、意外に乗り気だな?


「すべてが神器なので、外装丸ごとが戦術魔導砲台です!


 王国聖域をダウンサイジングした活躍が期待できます!


 しかも掃射走行の人員はプリースト(ランク)の神職一人で行けます!」


「中型神器船で、間引き走行ができるということね?


 聖域の移動を考えると、ランニングコストがだいぶ下がるわね。


 魔導師もいらないのね?」


「はい。神器のオーバードライブを負担分散し、永続的に使えるようにします。


 中枢の神職さえいればよく、一切の魔力なく魔物掃討できます」


「試してみる価値はあるわね。帝国に収奪された場合、問題がありそうだけど?」


「そうはいっても神器船なので、戦略級の精霊魔法一発で消し飛びます。


 王国にとっては問題ありません。


 他国にとっては問題があります。


 なので――先に売ってしまっては?」


「なるほど。しかし聖域相当の値段だと、買い手がすぐにはつかないわよ?」


「でしたら、最初から連邦との共同開発にしましょう。


 王国以外に使っている国があれば、他の国はすぐに買わねばまずいことになります」


「そうね。魔女姫を巻き込むなら、実にちょうどいい塩梅になるわ。


 いいでしょう。


 ビオラ」


「何、姉さん」


「すごい子ね。手伝ってあげて頂戴」


「そうでしょうそうでしょう。忙しくなるわね」



 姉妹でとっても楽しそうだ。善き哉。


 こちらとしても、これはある意味特大の誕生日プレゼントだな。


 でかしたストック。



「おいハイディ」


「なに?」


「総神器構造はこれから検証だぞ?」


「だから船を設計しながら、船の部品を作って検証するんじゃないか。


 別に理論上の問題はなかっただろ?」


「ん、そう……スター制御構造にするのか?中型で??」


「そうだよ。負担分散するコンセプトに合ってるし、何よりあれが一番安い」


「中型用は存在しないだろう?新しく設計を起こすのか?」


「だいたいはできてるし、大丈夫だよ」


「は?」


「君も言ってたことだぞ?


 子どもは暇なんだよ」



 ふふ。楽しくなってきてしまった。


 なんて誕生日だ。


 こんなにありったけの祝福を受けて――――まだ始まったばかりだなんて。



 前は人のばっかり祝っていたのに、自分の誕生日が楽しいとはなぁ。


 これ、今日は寝れないんじゃないかしら。


ご清覧ありがとうございます!


評価・ブクマ・感想・いいねいただけますと幸いです。



ここまでで、第一章は完結です。


長くお読みいただき、本当にありがとうございました。


本話にて一区切りとなりますので、よろしければレビューなどいただけますと幸いです。



幕間を挟んで、第二章に続きます。少々時間の経過を挟むため、また新しい展開となります。


引き続き、お楽しみくださいませ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 5歳児にしてワーカーホリックとか・・・ストックがストッパーになれるかだなあ
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