25-8.同。~共に祝いの相談をしよう。穏やかに~
~~~~ストックと宰相閣下の仕事が早すぎる。嫁にされてしまう。
「……聞かなかったことにしたい」
「自分で振っておきながら、言うではないわ。
ああ、確認したが、おぬしにも召喚権限は確かにある。
ただ魔力がなくては、喚ぶのは無理だろうな」
でしょうとも。
たまに存在の知覚はできるので、契約が維持されているのはわかる。
でもボクは魔力なし。普通の手段では喚べない。
あと、あの黄金の獣も自分ではなれなかった。
それこそ、メリアとの間の絆で成立するものなんだと思う。
つまりこれは、メリアの召喚・維持の補助ならボクでもできると考えたほうがよさそうだ。
精霊魔法も憧れではあったけど、一人で使うのは当分諦めるかなぁ。
「だが、契約自体は成り立っておる。
よかったな?先の話を踏まえると。
おぬしはもう、ストックとの婚約ができる立場だろう?」
王国の貴族制度は、精霊契約を前提に成り立つものだ。
砂の精霊サンドマンと契約しているものが、ロイドに連なる者となる。
分家筋の人も契約自体はしてるが、精霊王の忌み名を賜っているとなれば、間違いなく本家入りとなるだろう。
今ここにいる、メリアのように。
「いやいや。精霊契約重視とはいえ、ボクの身元が不確かだ。
それを大手を振って言えるようになってからでないと、だめだよ」
養子という話なら、それこそすぐにとなるだろうけど。
ボクたちの希望を考えるに、それはやらないほうがいい。
ストックは魔力がなく、精霊契約できないので、将来的にはロイドから出される。
そのときボクがロイドの子だと、それはそれでややこしいことになりそうだ。
そしてボクが……その。嫁入りということであれば。
元が相当の家格の家でないと難しいだろう。
そこんとこ、ほんとは問題ないんだけど。
あくまでそれはボクの本来の身分を公にできる場合、だ。
今はちょっと無理。ギンナにも釘を刺されたしね。
「……厄介な身の上なのか?詳しく聞いたことはなかったが」
「赤子のときに、聖国に浚われたこの国の人間。
どこの誰かは内緒。また浚われる可能性があるから」
「おぬしを浚うとか、もう無理じゃろ……」
「事件再現の件があるから、ボクの実力とかは関係ないよ。
ギンナにも警戒するように言われてる。
だからボクの実家には当分近づけない」
「難儀な」
まぁそれはそうだし、ボクの本当の家族はボクが気にしてる点の一つではある。
ただ成就すべきは「穏便な再会」だ。
ボクの内面的な年齢としては、会って側にいたいとか、そういう感じでもないし。
それが叶わないなら、しばらくそのままでも問題はない。
王国さえ無事なら、いずれ叶えられると思ってるし。
それに……ボクの中の優先順位は、いつだってストックのことが一番だ。
その彼女の……彼女とボクのことに関しては。
きっと本人が、なんとかしてくれる。
時間はたっぷりあるからね。
「メリアこそ、そこんとこどうなの?」
「ん。まぁぼちぼちだ」
「そか。なんかあったら言えよ?手ぇ貸すぞ」
「ストックに断ってから相談するわ」
「じゃあボクも、なんかあったらミスティに断ってから相談するね?」
少し笑い合ってると、その保護者担当たちが戻ってきた。
「楽しそうだな?」「楽しそうですね?」
「「別に?」」
いかん、思わずちょっと吹いてしまった。
メリアもそんな笑うなし。
……最初に再会したときは、この笑顔にいっそ胸が痛んだくらいだったけど。
今は素直に、とてもうれしい。
少なくともメリアについては。
あの山のことがあったから、こうして笑い合えるのだとはっきり言える。
そして、今度こそ共に乗り越えられると、信じられる。
そこはまぁ、ミスティもかな。
「そっちこそ、何話してたんだよ?」
「そうだ教えろ」
「「内緒」」
今度は四人そろって吹いた。
なんだよそれ、息ぴったりすぎんだろ。
旅立ちを見送るのもいいけど。
こういうのもこう、不安がなくていいね。
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