25-7.同。~魔法使いと探偵を迎えて~
~~~~連邦には今度、お邪魔するからね。
ミスティとメリアが来るころには、ボクは上半身を起こせるようになっていた。
ここのところ二人は忙しかったらしく。
別々ならともかく、二人一緒に会うのはドーンに来た日以来だな。
「ずいぶん働いたみたいじゃないか、名探偵」
「そりゃあもう。タンク、楽しみにしてますから」
ミスティは、マリー探しがなくなったので引き続きドーンに滞在する。
ただこのままだと、ヴァイオレット様にうまいこと使われそうな予感がするねぇ。
どういう名目で潜り込んでいるのか、仕事を手伝っている節がある。
「もうだいぶいいのか?」
「うん。子どもの体は回復が早いねぇ」
「おぬしの場合、絶対そういう問題じゃないだろう」
メリアは正式に、亡命からの帰化の方針だ。
どこの預かりかといえば、ロイド。モンストン侯爵家だろうな。
ストックの妹……じゃない。姉になるかもしれない。
彼女たちとはこれからも一緒だ。
メリアがおもむろに、ベッドわきのサイドテーブルの黄金果とナイフを手に取って、するすると皮をむき始めた。
これ、そういやベルねぇが置いて行ったやつの残りかな?
あっという間に皮をむいて切り分け、うちの一つにフォークを刺して……押し込まれた。
うまい。
もしゃもしゃしてから、口を開く。
「前からできてたっけ?皮むき」
「いや、練習した。せっかくだから、茶以外もうまくなりたい」
「もうなっとるやんけ。ご飯も作ってたりする?ひょっとして」
「ぼちぼちだがな」
「すごいおいしいです……」
「君はあれか……待つ女というより、尽くす女じゃったか」
「「……」」
二人で赤くなるなし。
そしてストックはボクをみんなし。
お前もだってことだな?わかってるよ。
しかしさすがに最近、世話を焼かれっぱなしで落ち着かない。
お世話したい。
具体的には、ストックの髪がちょっと跳ねてる。直したい。
……あれ?まだ見られてる。
ひょっとして、何かこれは、違う……。
「そういえばハイディ。一つはクリアできそうだぞ?」
――――!
この場で言うってこと、は。
「おい、早すぎだろう。さすがに来年だよな?」
「議決はそうだろうな。案は今年中にまとまって、折衝も終わりそうだとさ」
思わずぽかーんとしてしまった。
お嫁さんに、されてしまう。
「何の話だ?」
「どうせいこん」
「「は?」」
「王国の精霊信仰では、同性婚はタブーではない。
なので共和国のものを準用しつつ調整し、適用する法案を作ってもらっている。
なに、ついでというやつだ。
王国では稀にだが、女王がたち、その伴侶が女性ということがあった。
これを追認してもらうだけだ」
「その辺を調べて、お父上にお願いしたってとこですか?」
「そういうこと。後は大人の仕事だな」
……………………ば。
「「馬鹿なああああああああああああああああああああ!!!!」」
メリアと声がぴったり合った。
「それでミスティ、今日は改まってどうした?」
「ええ、ストック。あなたにちょっとお話が。
ハイディ、ストックをお借りしますね?」
「ん?いいよ」
ミスティはストックを連れて部屋を出て行った。
「で、私がその間のおぬしの相手というわけだ」
復活早いね?メリア。
「……そこまで気を遣わんでも?」
「それは然り。そろそろ動けそうなのか?」
「ん。5歳には間に合いそうだ」
「それは何より。祝いの計画が、無駄にならなくて済みそうだ」
「おおう。そこまで気を遣わんでも?」
「遣わせろ。祝い方は合わせてやるさ」
「ああ、だからストックを」
「そういうことだ」
ストックはストックで、何か準備してるみたいだからなぁ。
この旅が祝いだとか言ってたくせに、当日もちゃんとする気か。
マメになりおって。
「そういえば、サンディたちはど?」
「仲良くやっておるようだ。少々うるさいがな」
そんなに頻繁にささやかれてるのかよ。
次投稿をもって、本話は完了です。




