表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/518

25-5.同。~魔女には杖を~

~~~~君らはこれからが大変だけど。一緒に、頑張ろう。


 しかしこの工具、充填式だな。


 バッテリーが外部についているやつ。内臓じゃなくて。


 こやつ……ボクがあれ研究してたの、知ってるからか。粋なことを。



 前の時に作った、肌の傷を隠すごく小型の魔道具。


 あれに外部バッテリーや、魔力なしでも魔力充填できる仕組みをつけようと、四苦八苦してた頃がある。


 後者は検証はできたんだけど、モノを作る前に忙しくなっちゃったんだよね……。



 さて、そろそろ止めてあげよう。



「マリー落ち着いて。


 ちなみに、ストックも同じ日だよ」



 大物を持って戻ってきたストックを手で示す。



「んぐ……そっちは何も用意してないわよ?


 下手なものあげられないしね」


「何も上げられない私の身になってくれません??」


「そうは言うけど、消えものくらいしかないわよ?


 小物とか服とか上げるのは、やめたほうがいいし」


「プレゼントでそれを外したら、何も残らないですよ?


 というか何でです??」


「その子らのリボン」



 マリーがダリアの襟から手を離し、しげしげとボクとストックのリボンを見る。


 ストックも今日は、普通の……ボクのあげたやつだ。


 金属の留め金がついてたり、クリップになってるやつではない。



 あの辺り、動けるようになったら探しに行きたいなぁ。



「おそろい……ですかね」


「はいどーん!」


「いたっ、なんでお尻叩くんですか!?」


「乙女失格。それはお揃いじゃなくて、互いの色よ」


「はぇ?」



 マリー、そんなに人の目ぇみんなし。



「おお……ほんとだ。お互いに贈り合った、とか?」


「まぁそうだよ。ボクのリボンはストックがくれたやつ」


「私のもそうだ。ハイディにもらった」


「あ、え?ひょっとして服とかも??」


「ん。まぁこれは贈り合ったとかじゃなくて、ストックの仕業だけど」


「おや、お気に召していなかったかな?」


「君のセンスには敵わないよ。毎日かわいくしてくれやがって」



 ストックが自慢げだ。


 マリーはあわあわしている。



 言わないでおいてやるが、マリー。


 君がいつの間にかつけてる緑のバレッタも、そういうことやで?


 どうせさりげなく贈られたんやろ。



 ダリアは一見、赤い装いだが、ところどころが橙。左手首の腕輪が白金。


 自分の色に、それとなく混ぜてるのか。


 君らどういう関係になったのかわからんけど、ちょっと気が早いんでない?



「で、話を戻すけど。こっちからも二人にプレゼントだ。


 二人とも、6の月の5の日だからね。


 そっちの二本がダリア用。調整は国元に帰ったらやってみな。


 もう一つはマリーにだ」



 ストックが袋に包んである長物を、二人に渡す。



 ボクは動けないから、ここしばらくの間にストックに作ってもらった。


 ありものからの修復だから、手間はそんなにかかってない。



「これ、鍵杖……そうか。あんた仕様知ってるもんね」


「こないだ、また折れちゃってたから。ストックに頼んだ」


「ちゃんと仕様通りの工材を使ったぞ。これなら耐久性も十分だ」


「!これっ!?」



 袋を開けたダリアが目を見開き、そしてボクを見た。


 ボクはにやりと笑って見せてやった。



 ちなみに「仕様通り」は大嘘である。


 もちろん、うそつきは仕様を伝えたボクだ。



 これはかつてボクらが作ろうとしていた、「理想通り」の杖。


 前に作ったときは、もう手に入らなかった工材をいくつも使っている。


 主なところは王国製。あとは連邦や、魔都のものも入っている。



 彼女と一緒に見た、移動しながら戦略魔法を掃射する聖域ロゼッタ。


 「私もあれやってみたい!」がきっかけになった、滅茶苦茶な魔道具。



 ダリアが袋から出した二本の杖を、そっと抱きしめている。



「ありがとう。ハイディ、ストック。


 大事にするわね」



 ストックと二人、顔を見合わせて、つい笑顔になった。


 そういえば、マリーが静かだな?



 ……袋から取り出した剣を両手に持って掲げ、何かめっちゃ興奮したご様子だ。


 不意に、ぐりんと首が回る勢いで、ストックの方を見た。



「それは、元はフェニックスという神器だった」



 先日、柄の基幹部分をばらした、あれである。


 残りの希少工材を使おうとなっていたが、それを再利用した神器だ。


 いやこう、つい思いついてしまってな?



「フェニックスは、通常の駆動範囲で高周波数帯の魔力励起を行う。


 通常駆動が超過駆動に相当するんだ。


 そして超過駆動が通常駆動に相当する」


「何のためにそんなことを??」


「普段から当たり前のように、魔導を起動できるようにするためだ」


「そんなことしたら、神器ぶっ壊れちゃうのでは?」


「魔導そのものに再生効果を含むものを使ったので、これが回避できる」


「すごいじゃないですか!?」


「代わりに、使用者はすごい勢いで石になる」


「ダメじゃないですか!!」


「それを抑えるための超過駆動を入れてたんだけどね。


 いくつかの欠陥があって、ストック以外はまともに使えなかった」



 あの再生能力は相当なものがある。


 超過駆動が可能なら、使用者はほぼ常時稼働させるため、不意打ちで首を刎ねても蘇る。


 そしてその程度の傷の再生なら、超過駆動込みだと全然石にならない。



 だからボクは、ストックは不死身だと無意識に思っていた。


 あの山でやってきた彼女が結晶化していたのは、それどころではない負傷を数えきれないくらいしたからだ。



 あの魔導は、別に痛みを消してくれるわけではない。


 どれほどの道程だったのか……ボクには想像もつかない。



 そして。


 これはその不死鳥の灰から、生まれたもの。



「その神器は、フェニックスをもとに再構築したものでね。


 名を、リヴァイヴァーという」

次の投稿に続きます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

――――――――――――――――

幻想ロック~転生聖女は人に戻りたい~(クリックでページに跳びます) 

百合冒険短編

――――――――――――――――

残機令嬢は鬼子爵様に愛されたい(クリックでページに跳びます) 

連載追放令嬢溺愛キノコです。
――――――――――――――――
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ