25-3.同。~武人と侍従を見送る~
~~~~王国民が魔物に立ち向かう、らしい結末になったな。二度とやりたくねぇ。
結局。
はよ倒したことが功を奏した。
街でも暴れるモザイク連中が出たからだが……これが厄介なわけだ。
殺してはならない。中は街の住民だ。殺した方が罰せられる。
さらに、なんとか気絶させて倒した後に、街の住民に戻る。
派手にやりすぎると、多少事情があろうとも後々面倒なことになる。
いきなり避難誘導されている中から、出たりもしたそうで。
だがそれも、あの邪魔が倒れたら、なくなったそうだ。
長引いたら、本当にまずいことになっただろう。
あの魔物が、呪いの未来を押し付けようとする者たちの……足がかりだったのかもしれない。
ボクは、しばらく寝込むことになった。
意識は二日ほどで戻ったんだけどね。やりすぎた。重度魔素欠乏だ。
ロイド家がドーンに持ってる屋敷で、療養させてもらっている。
結晶を摘出したり、欠損が生じたときは別だが、魔素が恒久的に無くなることはない。
だが、筋肉痛だか捻挫や骨折だかのように、しばらく消耗が戻らないことはある。
知ってる症例だが……自分がやるのは始めてた。
ストックは、一日で動けるようになったんだけどねぇ。
やっぱボクは修業が足りねぇわ。
そうしてストックに涙目でべったり看病されること、数日。
まず、キリエとフィリねぇ……じゃない。ギンナとベルねぇが来た。
別れの挨拶に。
「領に帰るわ」
「ん。また遊びに行くよ」
「ま、私は元々できることも大してないのよね。
でも、うちやロイドが頑張ってくれているわ。安心してハイディ」
「知ってる。まさか5年も早く、懸念を前倒して打ち倒しにかかるとは。
大人はすごいね」
「……ハイディ。ストック。これはあなたたちは動かなくていいけど」
なんだその前置きは。
ベルねぇも心配そうに見てるんだが。
「ハイディの誘拐。今回の連中と同類の可能性があるわ。
だから……」
ボクが聖国に浚われた話、か。
「しばらくドーンで、楽しくやってろってことでしょ?
わかってるよ」
「ハイディ……」
「ベルねぇはなんでそんなに心配そうなのさ?」
「それはまぁその……私にとってあなたは、ついこの間まで普通の四歳のウィスタリアだったもの。
…………普通?普通。うん、普通だったと思う」
ボク、たぶん4歳時点で普通やなかったで。
2歳くらいから、不気味な子扱いされとったし。
というか君もそんな目でボク見とったやんけベルねぇ。覚えてるぞ?
「こんな変な女になっちゃって、ごめんね?」
「いやいやいや、そうじゃないよ。
むしろこう……これで自然というか。
無茶苦茶するのが、らしいっていうか。
うん。心配なのは、だからなの」
「それは本当に申し開きもございません。
反省はとてもしております。
動けないのは結構つらい」
「ん。ストック様が辛そうだから、早くよくなってね?」
「ありがとう」
「じゃあ、そろそろ行きましょうか。ベル」
「はい、ギンナ様。ハイディ、ストック様。またね」
「うん、またね二人とも」
「またな」
出ようとして……ちょっとギンナが戻ってきて、ボクに身を寄せてきた。
「ハイディ。私できれば、そのうちアレに乗ってみたいんだけど」
「君は十くらいには、クルマ運転できてたって言ってたよね?
その頃になったら、ちょっとやってみようよ」
ギンナがぱぁっと明るい笑顔になって……我に返り、咳ばらいをした。
そして今度こそ、礼をとってベルねぇと二人、ファイア領へ帰って行った。
「おいハイディ。よかったのか?」
「なにが?」
「サンライトビリオンを下手に運転させると、石になるが」
「…………あ」
ストックが運転できるし、忘れてたよ!
マリーなら大丈夫だろうけど、ギンナはだめじゃん!!
あ、マリーに運転させてあげてねぇ!やっべ!
「人づてか手紙で知らせておこう。わびは考えておけよ?」
「くそ……失態だ。油断した」
「ふふ。たまにはそのくらい弱っててもいいさ。
フォローは任せておけ」
ストックが頼もしくて泣けるわ……。
次の投稿に続きます。




