表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/518

23-5.同。~日輪となりて~

~~~~鉄火場で本当の再会となるとは……君らしい。

 エネルギー炉自体は、封鎖されていない。


 ここまでの区画が厳重管理されているので、階層にさえ入れればあとは素通しだ。



 広い部屋の中央に、尖塔のような柱があり、その真ん中にでかい球状結晶が繋がれている。


 結晶自体を貼り合わせて作られた、合成結晶。こうすることによって、負担分散を可能にしている。


 柱の下には制御盤があるはずだが――今は見えない。



 100や200じゃ下らない。ひしめくような、モザイク人間たち。


 ちょっと多すぎだが……さては対ヴァイオレット様用の布陣だな?これ。


 ということは魔導師ばかりというわけで。



 こちらが来たことに気づいたそいつらが、身構えようとしている。


 何か所かに緑の仄かな光も見えている。まずは拘束を試みるのかな?



 あー。さすがにヤバイ。まずいじゃなくて、これはやばい。


 待ち伏せは想定していたが、誰を待ち伏せる布陣か、が考えから抜けていた。


 多少の敵ならまだしも、ヴァイオレット様想定だから桁が……下手すると二つ違う。



 近接戦なら一度の相手はそう多くない。ボクなら一対一×Nみたいな状況にすぐできる。


 けど魔導師戦はそうじゃない。数がいるならいただけ、同時に相手にさせられる。


 今はどう崩そうとも一対数百だ。



 打倒の手自体は、ある。



 呪文の起動は間に合うだろう。だがそれまでだ。


 こいつらは倒せても、ここの仕掛けの解体前に、ボクが力尽きる。


 呪文の獣を起動するだけならまだしも……これだけ倒しまわれば、魔素が持たない。



 紫電雷獣で加速し、頑張るというのも一つ。


 しかしあれは、今のボクの練度でそのまま使うと、起動しているだけで魔素を消耗していく。


 この量を倒したら……まぁやっぱり力尽きるな。仕掛け解体はできても、ストックの元へは行けまい。



 この点は、ただ魔素制御だけで戦うのも同様。というか分が悪すぎる。


 パールでメリアを助けにいったときのように、ボクには魔導への有効な対抗手段がない。


 雷撃を使えない場合、そも相手の障壁すら抜けない可能性がある。



 ……やると、すれば。


 先ほど見たばかりのキリエの、最小の動きで戦う、達人の姿が思い浮かぶ。



 ほんの僅かな時間、瞠目する。




 ――――ハイディ。閃光ってのは一瞬じゃないんだぜ?光ってのは強く輝けば、宇宙の彼方まで届く。



 急にそんなことを言いだした彼に、そもそも宇宙ってなんだよ?って講義をねだったことを思い出す。


 光。波動。情報の伝達。星。そして星座。そのロマンあふれる講釈の末に。


 ボクは一つの奥義に辿り着いた。



 頭の中で、撃鉄を起こす。



 魔素制御は脳の中にだって使える。



 最初に使ったのは、五歳の頃だった。


 オーナーに教わった魔素制御。それを一緒にやってたやつがいて。


 そいつが思いついたのを、ボクも試してみたら、できた。



 その頃は雑事を手伝いながら、勉強と少しの鍛錬を重ねていたころで。


 でも小さい体じゃできることが少ないからと相談したら、オーナーは魔素制御を教えてくれた。


 魔導の使えないボクは、これしかないと思って磨くことにし――禁断の技術に手を出した。



 ある日、ボクが脳の魔素制御をしてるってのが、オーナーにばれた。



 彼女は最初、とても狼狽えた。


 涙ながらに、それでもゆっくりとボクの話を聞きだして。


 その後、目から鱗が落ちたような、呆然とした顔をしていた。



 最後には笑って。そして強く抱きしめてくれた。



 脳の魔素をいじると、自分を保てなくなる、らしいのだ。


 今にして思う、この自分とは――役のこと。


 彼女がボクを「ハイディ」と名付けたのは、この後だった。



 共に戦う戦士として認めてくれたのだと、今ならば分かる。



 脳の中の魔素は、実は膨大だ。すごい量がある。


 ボクが普段、考えるのに使っているのはそのほんの一部。


 そのすべてに――閃光を灯した。頭の中で光が乱反射し、輝き続ける。



 一つの星なら、果てにその位置を知らしめるだけ。


 だが満天の星に光を灯せば、そこには星座の世界ができる。


 さぁ、ボクという宇宙を、見せてやろう。




 不敵に笑い、目を開く。


 活性された魔素が、仄かに蒼い輝きとなって、ボクの瞳の色を変える。


 いくらかの魔導が、結ばれようとするのが見えるが――まるで止まっているかのようだ。



 だがこれは、情報処理能力を極限まで高めるだけ。


 多量の思考を一瞬の間に繰り返すことが、できるに過ぎない。


 体は、そこまで動かせない。それを実現するには、この幼いボクでは体側の魔素が少なすぎる。



 でもボクが最初に変えた未来が、大事な出会いを与えてくれた。



 ――――ではあなたに、雷光の武を授けます。



 様々な武を知るあの方が、なぜボクに紫電雷獣を授けたのか。


 その選択がボクの中で、新たな光になる。



 深く、息をする。



 息が音に、音が声に、声が鳴動に、鳴動が雷鳴になって響く。



「__/\/\/\/\/\/\/\/\/\/ ̄ ̄!!」



 人から出たとは思えない音が、躍動し、暴れる。


 ボクの蒼い瞳に電流が走り、紅が混ざり、紫に輝く。


 雷光の量を……弱電と言えるまで沈め、整える。



 先日使ったときは、この電流の抑制ができていなかった。


 だが今なら、どこまでも光り輝けるだろう。



 暴れるケダモノは必要ない。


 機械のように精緻に、繰り返せ。目標のみを遂行しろ。



 頭の中で。


 引き金を、引いた。


 閃光と雷光が重なる。



 星よ輝け、光となって――十億光年の彼方まで、届け!



「――――行くぞハイディ!日輪(like) (the) ように(sun)!!」



 さぁ、お前らが使っているその体。


 ドーンの人たちのそれを、返してもらうぞ!



 光が丸く広がり、輝きを増す。


 それが輪のようになって――――ボクの身と共に、霞んで消えた。

次の投稿に続きます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

――――――――――――――――

幻想ロック~転生聖女は人に戻りたい~(クリックでページに跳びます) 

百合冒険短編

――――――――――――――――

残機令嬢は鬼子爵様に愛されたい(クリックでページに跳びます) 

連載追放令嬢溺愛キノコです。
――――――――――――――――
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ