22-3.同。~石化の魔、現る~
~~~~君が意外にボクの友達と交流してくれて、正直とても嬉しい。
渓谷を抜け、荒野に出た。
砂と、岩と、荒れた風が吹いてる。
魔物も眷属もいない……ボクが見慣れない魔境だ。
「この辺は以前走ったことがあるが、ドーンがあればこんなに静かなんだな」
「こんな静かな魔境も、他にそうあるまい」
「あとは王国南東だけだろうね。聖域があろうとも、魔物を掃討できるのはこの国だけだ」
「そうだ……おい、ハイディ。左前方、かなり遠いが、注視してくれ」
「んん?わかった。なんかあるの?凹凸が激しくて見えづらい……」
魔物かな。
ちょっと迂回し、小高くなるところへ向かう。
…………ふざくんな。
「……ストック。ボク、あれに遭遇経験があるんだ」
「すごいな。よく生きていたものだ」
「神器車はあれの視線を通さないんだよ。
窓ついてるように見えるけど、向こうから中は見えないからね。
閉じて」
「ああ」
なんでこう次から次へとくるかなー?
ボクらの目線の向こうに、小山のようなものが蠢いている。
そいつは巨大なトカゲのような体をしている。
特徴は、顔についている巨大な一つ目。
普段はそれは閉じられており、あれで見られると石になる。
最初は痺れ、次に動けなくなり、固まり、石になり、砕ける。
あれは呪いの眼を持つ魔物。地上のドラゴンと呼ばれる怪物。
バジリスク。
「なんかさ」
「こっちを目指しているように、見えるな」
「だよね。最近の魔物は自殺願望でもあるの?」
迂回するように通り過ぎようとしているのだが……こちらに近づいてきている。
「さてな。まぁこっちについてくるなら、シャドウの方には向かわないからマシだが」
「同感だ。っと、速度上げてきたな。飛ばすよ。ベルト増やして」
「わかった」
体を固定しつつ、アクセルを踏み込み、加速する。
ゆるりと旅のゴールに向かうつもりだったが、こう急かされることになろうとは。
一応、コースを緩やかに変えてはみるが……。
「ダメ、か」
ちっ。追ってくるな。
……速度はこちらが少し早いくらい。
計器陣を見なくてもわかるが、こちらはほぼ最高速だ。
…………いい機会だ。試してみるか。
ボクは右手の親指で、ロザリオの縁をすっと撫でた。
ほんのり、血が滲む。
そのまま席ごと前に詰め、キーボックスに指を押し当てた。
「!?よせ、ハイディ!!」
「オーバードライブ!」
ボクから魔力の光が立ち上り――
「…………」
「…………」
収まった。おかしい、何も反応しないなんて。
「このクルマ、超過駆動機構、積んでないんじゃないか?」
「ストック。ボクのオーバードライブだぞ?そんなの関係ないよ」
神器生成を行う、ボク自身の超過駆動。
自分を神器に見立てて行い、知っている構造の神器を結晶から生成する。
かつてマリーのオーバードライブから学び、使えるようになった技だ。
魔結晶を持つ人間が、自身の結晶から超過駆動を行うのは、一般的な方法ではない。
ただ知っている人は知っているし、確か帝国では研究されていたはずだ。
で、この神器生成。転じて、既知の神器構造に干渉して、無理やりオーバードライブさせることなんかもできる。
一瞬だけ中身を改造してしまうとか、そんなイメージが近いだろうか。
だがそれが、エラーを起こして通らなかった。
魔力は出たんだ、ボクのオーバードライブは起動はしている。
つまり。
「サンライトビリオンは、神器じゃない」
「はぁ!?――っ」
衝撃がきた。後ろから当たられたな。
こいつ、早い……この図体でどんな速度だよ。
というか、自分の足先が消えるのもおかまいなしってか?どうなってんだほんと。
方向を変え、岩場から飛ぶ。
ほどなく着地。そのまま直進。
距離は離れてくれたが……ついてくるな。
「振り切るのは難しそうだな」
「うん。このままいくと、ドーンまでついてくる」
「あそこは今停泊中だ。入場の待機列が外に出てるから……」
「大混乱だね。魔導師が列の防衛に出てるだろうけど」
「子どもとしては、彼らのところまで引率して、後は任せるべきだろうな」
「そうだね。ボクらとしては?」
「決まってるだろう?」
二人で顔を見合わせて、にやりとした。
次の投稿に続きます。




