22-2.同。~友の悩みを共有する~
~~~~友と行く道もいい。でもやっぱり、ボクは君とがいい。
「マリーには、ちょっとダリアを信じてあげてほしいって言っただけだよ。
ダリアには……一緒に連邦の滅亡を防ごうって。それだけ」
「そうなのか。元はどんな関係なんだ?あの二人」
「連邦絡みのことは話したな?」
「ああ」
連邦滅亡にマリー……メアリーが関わっている、という話は共有した。
サレスもそうだ、という点も付け加えて。
ミスティあたりは頭が痛そうだったが、まぁ数年後の話だ。ゆっくりやろう。
「二人とも、素直な性格じゃないんだよ。
相性もいいし仲良しで好意もある。でも些細なことでそうできなくなっていた。
ダリアはマリーが、国の滅びに関わっていると感じ、その疑いが拭えなかった。
マリーはダリアからそう見られていることを感じ取って、素直に応対ができなくなっていた。
あと、魔女姫はターゲットでもあったらしいから、そのせいもあるかもね」
「ターゲット……勇者の使命だったか?聖国が課すという」
「そ。魔に関わるモノを滅ぼすように、だって」
『予言の子メアリー』は有名人だ。
前の時間では、聖国が世に放った勇者として、名をはせていた。
半島中で、魔物をぶっ殺しまわっていたので。
その勇者が負っていた使命が……確か正しくは、『魔を滅ぼす。真なる予言の子を見つける』だった。
そしてこの魔ってのが、魔物だけではないのだ。いくらか、そうではないターゲットがいた。
その一つが魔女姫サレス。あとなぜか、ストックもそうだった。
ストックは戦場となった王都で、マリーに襲いかかられたとき、この使命の話を耳にしている。
なお、ボクがマリーをボコして連れ帰った。撤退だっつーときに殴りかかりやがって。
船に帰ってから、いろいろ話をして。その時ボクは、彼女に誓ったのだ。
ラリーアラウンドと、その首魁ストックは、必ずボクが止めると。
「ということは、前のときのダリアは、すでに斬りかかられた後だったのか?」
「さすがに会ったのが戦場じゃなかったから、それはないよ。
ボクが互いを紹介したんだけどね……えらい剣呑だったなぁ」
「なるほど。船の責任者の顔は潰さんか」
「ん。マリーは理性的だからね。感情が歪んでるだけで」
「あー……。歪んでる、といえば。いや言っていいのか?」
「ん?ああそこ。二人とも、君と同じ気質だよ。
ダリアは正しくは『どっちでもいい』方。
マリーは宗教上の理由で、そんな自分に否定的だけど」
「否定的??あれが???
話してみたら、マリーにはだいぶ前のめりでこられたが」
そうだったのかよ。
そら大変だったな……マリーは引き込みがちではあるが、興味があることには倒れる勢いでのめり込む。
タンクの話なんか、たぶんあの場でまとめなかったら、後からしつこかったぞ。
「あの子は聖国聖教徒だから、ダメって意識があるんだよ。
でも隠れ聖女派だから、頑なにダメなわけじゃない。
それで、先達の意見を聞きたいんじゃないの?
ダリアに聞くわけにもいかないし」
「お前は聞かれなかったのか?」
「聞かれた。ボクは違うって答えた。
予言で答えを確かめたのか、絶望していた」
「ひどいことをする」
「しょーがなかろー?ボクは女の人を好きになるわけじゃないんだよ」
「私は女扱いされてないのか?」
おや、意外に直線的な聞き方をするじゃないか。
どうした、質問攻めにでもされて、当てられたか?
「そんなわけなかろ?君は今でも、ボクの淑女の先生だ。
いつも所作が本当にきれいで、よく見惚れてるもの」
「ふふ。そうか」
「そうだよ。それ、リボンに見せかけてクリップか?どこで買ったんだよ」
「パールでだよ。魔境を行く以上、これでも用心してるんだ。
お前からもらったリボンを、傷つけたりしたくはないからな」
そうだったのか。お洒落理由じゃなかったとは意外だ。
かわいいし、使いやすそうだし、ボクも見かけたら買って……もらおうかな?
しかし用心、ね。何か王国の道を行くより、平和な気がするけどなぁ。
ボクが油断のしすぎかしら。
「珍しくキュロット履いてると思ったら、そういう理由か……」
「これも悪くはないな?涼しい環境でなら、問題ない」
「暑いから嫌だったのかよ。気持ちはわかるけど、もちょっと淑女みを重視しろ」
「そこを考えるなら、まずスカートで戦うな、からだが」
「王国人に戦うのやめろとか、息をするなと同じことじゃないか?」
「違いない」
少し、笑い合う。
ん。やっぱり二人旅とは、こうでなくては。
最初はドーンまでずっと、こんなだったはずなんだけどなぁ。
友達に再会できたのは、本当に嬉しい。大変だったりはしたけど。
しかも二人も前のことを覚えていて――なのにボクを怒りもしない。
複雑だけど、喜ばしくも思う。
ただそれはそれとして、ストックとの二人旅がだいぶ短くなったような気はする。
正直、その点は不満だ。次の連邦旅は、もっと満喫できるものにしたいところだ。
次の投稿に続きます。




