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20.シャドウ南通り冒険者ギルド。6人、卓を囲む。

――――おかしいな。なぜ淑女がこんなにいて、女子会って感じじゃないんだ?

 国防省の職員は三名ほど、思ったより早くやってきた。といっても、一時間余りはかかっていたが。


 説明の上、マリーに彼らを案内してもらった。一応、納得したらしい。


 隣国の大魔導師『魔女姫サレス』が爆殺した、って言って現場見せられたら、そりゃ信じるしかないしねぇ。



 ボクとストックは、魔素を結構使っていたため、呪法を解いた時点でダウン。


 マリーとミスティはしばらくグロッキーだった。こちらは魔力欠乏だ。二人とも、奥の手出したからね。


 元気なメリアが一度宿まで戻って、神器車をとってきてくれた。助かる。



 我々四人は、マリーとメリアによってクルマに放り込まれ、運搬された。


 運転手がメリア、助手席がミスティ。


 ボクとストックはちっこいので、雑に最後部座席に詰め込まれている。



 メリアはパールの街で慣らした程度だが、いい運転だ。安定している。


 油断と緊張が少なく、ハンドルの切り方、ブレーキの踏み方が柔らかだ。



「…………ぜったいミスティより、メリアの方が運転うまいわ」


「おいダリア、ボクが黙ってたこと言うんじゃねぇ」


「私が思ってても言わなかったこと、二人して抉り込まないでください」


「「すまんかった」」



 マリーが吹いてる。


 ストックは楽しそうだが、さすがに疲労が濃いのか半笑いだ。



「ダリアさんとハイディ、仲いいんですね」


「まぁね。研究も一緒にしたし、ハイディがいると捗ってよかったわ。


 そもそも、あんたと仲悪い奴なんていたの?」


「ボクは仕事しねーやつには辛らつだが?」


「そだっけ?」


「ダリアはあまり外に出んから、知らんかったのだろう。


 ハイディは怠け者や役立たずくらいなら、寛容だ。


 あそこにはその下がいた。


 ハイディとというより、誰とも反りの合わん奴らで、徐々に少なくなっていったがな」



 運転中のメリアがフォローしてくれた。



 彼らが何をしにクレッセントにやってきたのか、よくわからなかったなぁ。


 食い詰めて来たわけでも、事情があって来たわけでもなかった。


 可能性があるとすれば諜報だが、だとすればさぞ仕事のやりがいがなかっただろう。



 あの船は、情報管理はしているが、持ち出しは平易だ。申請して外部にも持ってける。


 どっかの星みたいに、特許とか裁判とか国際的なものはないので、持ってかれても困らない。


 やばい技術持って出られて戦争になっても、王国の精霊が出てきたら踏みつぶされて終わりだ。



 この指針は、王国の王立魔導学園のそれに沿ったものだ。


 あそこと共同開発・研究することが多かったので、管理かつ公開する方向で運用されていた。



「……追い出したの?」


「規定通り、割り当て予算が減ってっただけだよ。


 ボクは何かしたんじゃなくて、何もしなかった」



 そして最終的に犯罪に手を染めれば、規定に従い罰せられる。


 だいたいは、そうなってから、あるいはそれ以前に国元にぽいされる。


 ボクの担当というわけではないが、引き渡しまではきちんと面倒は見たつもりだ。



 ……たまに文字通り人が消えることがあったからね。ちょっと注意して見ていた。


 そういえば、人が消えることの方は、結局しっぽを掴めなかったんだよな。


 最初は先の通り、諜報員が勝手に帰ったのかな?と思ってたが、どうも違った。



 あれはなんだったんだろう。



「えっと……ミスティさん以外が、元からの知り合い、なんですか?」



 マリーが、厄介な方向に話を戻してきた。


 元同僚と元敵が入り混じって、さらに逆行者が複数。


 我々の関係は、少々入り組んだものになっている。



「そこ複雑でね……。ミスティとメリアは、古くから親交がある。


 で、ストック以外は元々同じ職場にいた。


 そのうち、ボク、メリア、ダリアの三人にはその時の記憶がある」


「ん、んー……はい。理解できました。ストックは違うんですか」


「私は、ハイディ、メリアと元学友でね。ハイディとは同じ学科だった。


 メリアは学年は同じだが、ほとんど学内では会わなかったな。


 その上で君とダリアとは……戦場で会ったことがある」


「え、戦場?え??」


「ハイディは別の組織の人間だったんだよ。


 で、この王国で、いろんな組織が入り乱れて大変なことになったことがある。


 そのとき、ストックのいたラリーアラウンドと、ボクらのいたクレッセントは敵対関係にあった」


「敵!?あれ、じゃあなんで今は……?」



 ストックが、とても穏やかな目でボクを見てる。



「私はその戦場で、ハイディに救われたんだよ。


 でもハイディはその後……辛い目に遭ってね。


 私はそれを何とかしたくて、赤子からやり直してるんだ。


 他にも同じようにやり直しているのがいるとは、思わなかったがね」


「ボクはその救えたはずのストックが結局石になって死におったから、たまらず戻ってきた。


 それでダリア、戻った理由はともかく、君は何で今ここにいるのさ?


 正規に連邦から入国してきたんだろ?」


「……前の時間のとき、マリーに聞いたのよ。この時期、この辺うろうろしてたって。


 魔物を倒してたりしてたっていうから、自分も冒険者登録して探してたの」


「ほっほーぅ?」


「ばっ、違うわよ!?マリーが居れば、他の子を探したり、状況を探ったりしやすいでしょ?」



 別にはやし立てるつもりで言ったんじゃないんだけどなぁ?


 でもその言い訳は悪手じゃのう。



「その目的は分かるが、それをマリーに承服させる手段が君にないやろ」


「え、そこはほら、こう……」


「言う前に釘さしてやるけど、迂闊なこと言ったら調べて裏をとられるからな?


 マリーは今、信じてくれているから、我々のことを直接聞いてくれてるだけ。


 怪しいと思ったらためらいなく予言を使うよ?」


「んぐ」



 ダリアめ、それで痛い目見たこと忘れてるだろう。


 素直じゃない言動をとると、すぐばれるのだ。


 そして、より信頼を損なう。



 マリーはすでに、横の座席を見る目が少しじとっとしてるし。


 危険なサインだ。



「マリー。ダリアは中身が真っ直ぐだけど、表面がねじくれてるんだ。


 周りに合わせるのがすごい苦手なの。


 好きで本心隠してるわけじゃないから、大目に見てあげてね」



 ダリアが、すごい顔して後ろを見てきた。


 マリーは、あ~……みたいな表情で、ダリアの横顔を見てる。



「つまり君の逆ってことなんだよ。


 だから君たち二人は、問題があると反発してとてもこじれるけど、何もなければすごい仲良しだったよ」



 今度はマリーが、とってもアレなお顔で後ろを見てきた。


 ダリアは仲良しだったって言われて、素直に照れてる。


 その顔を当人に見せればええんやで?君。

次の投稿に続きます。


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