5、現場検証1
馬が野を掛ける
ニコンはアルバートと一緒に乗る
アルバートは手綱を握り、前にニコンが乗り
後ろから包み込む形だった
ニコンは黙っていた
風が頬をかすめ、揺れる感覚がどうも慣れない
休憩で馬に水分補給をさせ、木陰で休む
「馬は初めてですか?」
「初めてではないけど・・得意ではない」
ニッカが汲んできた水をニコンに差し出す
「なぜ城へと戻るのです?」
「現場検証が基本だから」
アルバートは黙って2人から距離をとり、馬の側にいた
「ねぇ」
「わっ」
ふいにニコンに声を掛けられて
驚いたアルバートを見て
フードを被りちらと見えるニコンの目元が笑う
「ふーん、私が怖いって?」
じりじりとニコンがアルバートとの距離を詰める
後ろに後退するが、これ以上進めば川があり
行き場を失ったアルバートは
両手を胸の前に出しガードを作る
「いやそんなことないけど~?」
「嘘つけ!」
目を合わせない、距離をとる
その様子がおかしくて
ついからかいたくなる
「もう出ますよ」
ニッカに声を掛けられ、明らかにほっとした表情のアルバート
急ぎニッカの元に行き、出る準備を手伝っていた
「面白い・・」
ニコンは馬をなでていた
城が近くなる
裏口まで到着し、ニッカの手引きで城内部へと進む
城では大勢の使用人たちが働いている
それぞれに違う制服を着て、仕事をこなしていた
「ねぇ、あんた第一王子なんだよね」
アルバートの服をつまんで足を止めるニコン
「そうだけど・・?」
「王子様って偉いんじゃないのか?」
「は?」
「なぜお前を見ても何もない?」
廊下の真ん中
光が少し入ってくるくらいで少し薄暗い
壁にはよくわからない大きな抽象画が飾ってある
「ニコンさん、それはアルバート様が王位継承権を持たないからですよ」
「俺は王子だけど、庶民と変わらないってことだ」
人の視線は感じられるのに
人の気配は遠い
見られているのに
興味は感じられない
気味の悪いその感覚に
フードをさらに深く被るニコン
「行きましょう」
ニッカの案内のもと
目的の第2王子の部屋へと進む
「ここです。鍵は預かってきました」
重厚で重そうな扉は両開きで
ここの部屋の主が高貴な人物だということを分からせたいのか
無駄に高そうなレリーフがされ
来る人を拒むような威圧感が感じられた
ニッカによって開かれたその先の部屋へ3人は足を進める
入ってすぐには大きな窓にソファー、テーブルが乱れることなく
そのままの様子で置いてあった
「第2王子が失踪して何日経っている?」
「1週間ですかね・・」
「・・・・そうなら、死んでるぞ」
部屋に入っただけのニコンの第一声に
アルバートもニッカも息をのんだ