4、アルバートをちょうだい
ニッカは起きれるくらいに回復し
世話になったお礼だと洗濯やまき割り、水汲みなどをリハビリと称して
積極的に手伝っていた
「で?どうするの?ニコン、あの人達に協力するの?」
「嫌だね」
「まぁ、そういわずに手伝ってあげたら?ご褒美たんまりもらえるわよ。王様から」
「興味ない、王とか国のためとか最も嫌いだわ」
「面白そうじゃない、王太子誘拐を第一王子が助けるなんてなんかの物語みたい
王子様が迎えに来て、姫は幸せになりましたってハッピーエンドとかさ」
「その場合誰が姫でハッピーなのさ?」
「でも、あの王子様のこと結構お気に入りでしょ?」
「はぁ?んなわけないでしょ?あれは、ただの頭弱い生き物じゃん」
まき割りができずにふらついて
ニッカとふざけあっている様子がニコンとサンドラのいる場所から見えていた
「匂いがね、気にならないかも・・」
「ほら、やっぱりお気に入りね!」
ニコンは匂いに敏感すぎるため
常にマスクを着けて生活している
マスクなしで近づける人間や動物はほとんどいない
いつかの夜、マスクなしで会った時、確かに平気だったことを思い出していた
アルバートとニッカが帰ってきた
ニッカの具合がよくなったため、明日には旅に出るという
「やっぱり、一緒に来ることはできないですか?」
ニッカがフードを外した黒マスク姿のニコンに寂しそうに言う
白い髪を三つ編みにし、右耳の後ろでくるっと円をかくようにして結んでいる
少し間をあけて、ニッカの後ろにいたアルバートを見る
「ねぇ、私に何のメリットがある?」
アルバートはニッカに隠れるようにして、ニコンと目を合わせないようにしていた
「お金でも、地位でも、物でもあなたが望むものは出来るかぎり用意できると思います」
ニッカがにこやかな嫌味のない笑顔で答える
「そこの第一王子、アルバートをちょうだい」
「え?」
「えー??」
「は?」
アルバートもニッカもサンドラも驚きの声をあげる
「あなたが死んだら、その体を献体としてちょうだい」
ニコンはじっとアルバートを見つめる
灰色ががった青い目が獲物をとらえた狼のように鈍く光る
サンドラは嬉しそうに笑っている
ニッカは驚いていたが、どうぞとアルバートをニコンの前に差し出す
アルバートは恐怖に震えていた
「交渉成立ね」
ニコン・カーターはアルバートに握手を求める
アルバートは手を出さない
「俺・・どうなるの?」
「あなたの体は私のもの・・」
ニコン・カーターは微笑む
ここから第一王子アルバートと天才調香師ニコン・カーターの物語がはじまる