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プロローグ 〜前日談〜

「普通」:どこにでもあるような、ありふれたものであること。またその様。


俺は別に自分のことを特別な人間だと思ったことは1度もない。

どこにでもいる男子高校生だ。

きっかけは中学2年生の夏、好きな人に思い切って告白した、返事はNOだった。

問題はその後、その子が笑いながら放った言葉が自分がそうであると教えてくれた。


「夜桜くんって普通の人だよね、付き合ってもつまんなそうなんだよね」


そう、俺こと夜桜世一、この物語の主人公にあたる男だがその正体は普通の男子高校生なのである。

超絶イケメンでもなければ超高校級のアスリートでもない。

学力、運動神経共に中の下、アニメだったら確実にモブとして登場するであろう一般人だ。

人に自慢できることはひとつもない。

逆に人より大きく劣っていることもない。

良くも悪くも普通なのである。


けど勘違いしないで欲しい。

最初に話したが俺は自分のことを特別な人間だと思ったことは1度もないし、なりたいと思ったこともない。

普通だと言われたからどうということはない。

人並みの人生が送れればそれで大満足だ。

勝手に同情なんかしないで欲しい。


時を現在に戻して、高校2年生の春、学年が1つ上がり初々しい後輩達が入学してきた。

まぁ部活に入っていない俺からすれば後輩なんていないようなものだろう。

そんなことを思いながらも代わり映えのない毎日を送っている。

そんなある日のことだ。

俺はいつも通りの一日を過した。

いつも通り朝起きて、いつも通り学校に行き、いつも通り授業を受け、いつも通り昼ごはんを食べ、いつも午後の通り授業を受け、いつも通り下校した。

その日は午後から雨予報だった。

幸いまだ雨は降っていなかった。

傘を持ってきていなかったから雨が降る前に帰るため俺は足早に学校を後にした。

家までは歩いて10分位だ


「何とか雨に当たらずに済みそうだな」


そう思った矢先


ピカッ!!


灰色の空に1本の線が走った。

少し遅れで聞こえてきたゴロゴロという音が辺りに鳴り響いた。

それと同時に激しい雨が降り始めた。


「天気予報では雨はそこまで強くないはずだったのに!」


予想以上の雷雨にたまらず走リ出しだ。

帰り道の途中にある公園まで来た俺はそこで雨宿りをすることにした。

公園にある小さな小屋に駆け込みベンチに腰を下ろした。

タオルで頭を拭きながら止みそうにない雨を眺めた。

家までダッシュして帰るか、もう少し様子を見るか、いっそ親に迎えを頼むか、いや歩いて数分の道を迎えに来てもらうのは申し訳ないな〜

そんなことを考えながら雨を眺めた。


その時


ピカッ!!


また白い線が目の前を走った。

ほぼ同時に激しい爆発音が鼓膜に響いた。

俺は何が起きたのかわからずに思わずベンチから滑り落ちて尻もちを着いた。

痛むお尻を擦りながらゆっくり立ち上がり瞑っていたまぶたをそっと開いた。

すると公園の端に立っている木がまっぷたつに割れていた。

そこで初めて木に雷が落ちたのだと理解した。

呆然として木を見ていたらスマホが鳴った。

ビックリしてスマホを落としそうになるのを何とかキャッチし画面を見ると母さんからだ、電話に出ると母さんの心配そうな叫びが聞こえた、


「世一!あんた今どこ?近くですごい音したけど大丈夫?」


「大丈夫だよ母さん、公園で雨宿りしてたから」


「あらそうなの?風邪ひかないように早く帰ってきなさいね」


「わかったよ」


電話を切って外を見ると雨がやんできていた。

今がチャンスと思い荷物をまとめて小屋を出た。

ふと興味本位で雷が落ちた木の近くまで行った。

綺麗に根元まで割れているのを見て


「写真でも撮るか」


人生に1度あるかないかの体験だろうと思いカメラに収めた。

撮った写真を確認してみるとあることに気付いた。


「根元に・・・何かある?」


実際に木の根元を見てみると丸い玉のようなものが挟まっていた。

ピンポン玉より一回り大きい位の玉が割れた木の間にあるのだ。

不思議なことに傷1つ無くまるで誰かが割れた後に置いたみたいだ。

これはなんだと考えていると


パキッ


何かが割れる音がした。

玉が割れたのだ。

手で触れた訳では無い、突然なんの前触れもなく割れたのだ。

驚きながらも様子を見ていると中からトカゲ?らしき生き物が出てきた。

赤いからだに緑の瞳、手のひらサイズの小さな生き物。

この玉は卵だったのだ。

生まれたばかりのその生き物は俺の顔を見ると動きを止めた。

数秒静止した後にピョンと俺に向かって飛びついてきた。

驚いた俺は尻もちを着いた。

本日二度目の尻もち、同じ箇所をぶつけた。

着いた箇所を擦りながら痛がっている俺をコイツはキョトンとした顔で見つめてくる。

特別トカゲや爬虫類が好きな訳では無いがコイツはなかなかどうして・・・


「カワイイ!!」


思わず声にした言葉を理解しているのかコイツは嬉しそうに俺の体に顔を擦り付けてくる。

そこで初めてコイツの鳴き声を聞いた


「ママ!」


「 ・・・・・・・・?」


「ママ!」


「・・・ママって言った?」


「うん!」


「うおぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぉぁ!!!!」


先に言っておくけど俺の頭がおかしくなった訳では無いからな!!

確かにコイツはそう言った、ハッキリと言ったんだ!!

俺のことをママって言ったんだ!!


俺の知らないうちにトカゲはここまでの進化を遂げたのか?

いやもしかして本当は俺の頭がおかしくなったのか?

待て待てもしかすると鳴き声が マ かもしれないだろ?

でも「ママって言った?」って聞いたら元気に「うん」

って答えたんだよね!!

受け答えちゃんとできてるんだよね!!

やっぱり俺の頭がおかしくなったんだぁぁぁぁぁぁ!!


「・・・マ・・ママ・・ママ!!」


「っは!!」


「ママ大丈夫?」


「あ、あぁ大丈夫、大丈夫だよアハハ...」


「うん!ママ大丈夫!!」


何とか意識を保ちながらこの不思議な生き物と会話を続ける。

自分の頭が正常であることを信じながら...



▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪


「ふぅ」


一日の疲れを吐き出すかのようにため息を着く。

全身に感じる熱い感覚に耐えながらそっと一言


「気持ちいい〜」


「気持ちいいねママ!」


湯船に浸かりながら気持ちよさそうに浮かんでいるソイツは流暢な言葉でそう言った。


いつもなら何も考えられないぐらいにこの心地良さに浸っているところだが、帰ってくるはずの無い言葉に嫌でも現実に引き戻される。


「生まれたばかりなのに泳げるんだな」


さも当然のように湯船に浸かってるソイツに俺は聞いてみた。


「ドラゴンだもん、そりゃ泳げるよ」


何言ってんだコイツ、と言わんばかりの顔と、当たり前だろといった口調で答えるこの生き物。

どうやらトカゲじゃないらしい。

本人曰く


「僕はドラゴンよろしくね」


と公園の割れた木の上で自己紹介をするかのようにとんでもないことをサラッと口にした。

赤ちゃんなのに喋れるとか、なんで自分のこと知ってるのか、なんであそこにいたのかとか聞きたいことは山ほどあったがそんなのすっ飛ばして一番ヤバイ発言が出てきてしまった。


だって急に「僕ドラゴン」って言われて即座に理解出来る人なんてこの世にはいないでしょ。

そもそも信じられないでしょ?そしたらコイツは証拠を見せるって言ってきたんだけど何したと思う?


ボォォォォォォ!!


手始めに空を飛んでみせたんだわ。

次に力を見せるために俺の事を片手で簡単に持ち上げて、最後に口から炎を吐いて木を燃やし始めたわけ。

俺の手のひらサイズの生き物がだよ?

いよいよ精神科にでも行こうか迷い始めた頃母さんからまた電話がかかってきた。


「もしもし世一?雨も止んだし早く帰っていなさい」


「わかったよ、すぐ帰るよ」


電話が終わり帰ろうとするとそいつが飛びついてきた。


「ママどこいくの?僕も一緒に行く!」





そして現在に至るわけですわ。

親にバレないように家に連れて帰り、とりあえずはうちで面倒を見ることにした。


そんなこんなで始まった普通の高校生とドラゴンの奇妙な生活。だがこの出会いはこれから起こる様々な事件の始まりに過ぎなかった。



「そういえばお前名前は?」


「僕の名前は〇〇〇だよ」



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