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「『命を燃やし続けろ。』と」


『命を燃やし続けろ。』と

戦士は高らかに伝えた

成る程、この世はどんな地であろうと

戦場であることに変わらないと

誰しもがそこに生きる戦士なのだと

生き残り続けるには命を燃やし続けなければならないと


戦士の言葉は人々の心に刻まれた

私も大いに理解できた


確かに理解した


よって私は

『命を燃やしつつ毛糸。』

『命を燃やしつつ毛糸。』を肝に銘じようと

力強く応えた


一つ解説を挟めておくと

「命を燃やしつつ毛糸」というのは

「命を燃やしつつ毛糸で編み物をする」ということを

略した言葉となる


つまりは

命を燃やしつつも毛糸で編み物をするくらいの余裕は持っておけ

ということを言いたかった


しかし私はそんな説明もなく

『命を燃やしつつ毛糸。』と言ったものだから

高まりつつあった空気が一瞬にして止まった

時が停まったのかと思うほどだった


我々を熱く鼓舞してくれた戦士でさえも

冷めた目で私のことを見るのだった

睨むのでも憐れむのでもなく

「無」を見つめるかのような視線だった


それからの私はというと

上記の件が私の心に大きな傷を与えることとなり

他者の視線に対して恐怖を抱き始め

私は誰も踏み入れることのない山奥の洞穴に住み着き

ひっそりと毛糸で編み物をする生活をしている

きっと私はこのまま

命を燃やすような局面に遭うことはないだろう


毛糸で編み物をしていれば

心に渦巻く負の感情を紛れさせてくれる

私は決して間違っていなかったと

全てが上手くいっていると


それでも時折

洞穴から曇り一つない空を見上げ

何もない空に、空っぽな自分を重ね合わせては

虚しくなる


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