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085 のんびりした朝

 アジトを潰し、コラリーと幼竜を助け出した後、俺とハティは母屋で眠った。

 眠りについたのは、未明。朝日が昇るしばらく前だ。


「……昼か」

 俺が目覚めると、昼過ぎだった。

 時刻は太陽の位置で判断している。


「時計を作るか……いや、だが、買った方が……」


 既に道具としての時計は存在する。

 だから、改めて魔道具としての時計を作る意味は薄い気がするのだ。


「ぷぴぃぃ」「ぴぃ~」

 鼻を鳴らしながら、ハティと幼竜が、俺のお腹の上で眠っている。

 気持ちよさそうだ。


 起こさないように注意して、そっとハティと幼竜をお腹の上から降ろす。


「ハティもお疲れだな」

 ハティもまだ子供なのに昨日色々と働いてくれた。

 眠りたいだけ眠ったほうがいい。


 俺はベッドから立ち上がると、眠る幼竜の様子を観察する。

 幼竜は、赤ちゃんなのに、悪い奴らにさらわれて魔道具の核にされていたのだ。

 助け出してからまだ数時間しか経っていない。 


「うん、問題はなさそうだな」

 ただ疲れているだけだろう。

 ならば、思う存分眠って体を休めたほうがいい。


「寝る子は育つっていうし」


 俺はベッドに寝たハティと幼竜を優しく撫でると、部屋を出る。

 そしてそのまま食堂へと向かう。

 食堂には姉ビルギットとロッテがいてお昼ご飯を食べながら、楽しそうに談笑していた。


「ヴェルナー。おはよう。もう少し寝ていて良いのに」

「姉さん。おはよう。これ以上眠ったら、夜眠れなくなるからね」

 生活リズムが昼夜逆転するのは余り良くないのだ。


「ロッテもおはよう」

「はい。お師さま。おはようございます。昨日何があったのか、気になったので」

「ああ、そうだ。昨日はありがとう。助かった」


 ロッテには近衛魔導騎士団への伝達を頼んだりしたのだ。


「いえ、全然気にしないでください。可愛い竜を保護したとか?」

「うん。赤ちゃんの古代竜だ。いまは寝ているけど。あとで紹介しよう」

「はい、楽しみです!」


 恐らく、ロッテは姉から竜が可愛いと聞いているのだろう。

 実際、幼竜は可愛い。


「ヴェルナー。ご飯は?」

「ありがとう、いただくよ」

 そういうと、姉は執事に命じて、食事を準備してくれる。


 昨日、寝る前にクッキーを食べた。

 とはいえ、夜ご飯からは十時間以上経っている。

 お腹は空いていた。


「お師さまは朝起きてすぐご飯を食べられる方ですか?」

「食べられる方だな」

「そうなんですね。私は数時間あまり食欲がわかなくて」

「私もそうです。殿下」


 姉も起きてすぐには朝ご飯を食べないらしい。


「昨夜の出来事については、詳しく話そう」

「はい、お願いします」


 俺は改めて昨日の経緯を説明した。

 途中で運ばれてきたご飯を食べながら、ゆっくりである。

 昨夜、寝る前に姉に説明したのと同じ説明だ。

 聞いているはずなのに、姉は真剣な表情で聞いていた。


「ということで、ロッテに頼みたいことがある」

「なんでしょう?」

「その暗殺者がコラリーという名前なんだが――」


 ロッテにもコラリーのことを頼んでおく。

 王女であるロッテが頼めば、コラリーがひどい目に遭わせられることはないだろう。


「わかりました! 私からもお願いしておきますね」

「ありがとう。昨日、コラリーには色々と手伝ってもらったし、悪いようにはしないとも約束したんだ。面倒をかけるがよろしく頼む」

「いえ、気にしないでください」


 約束した以上、コラリーのためにできる限りのことはしなくてはならないのだ。

 説明が終わったとき、とっくに朝昼兼用のご飯は食べ終わっていた。


「りゃあありゃあありゃあありゃりゃああ――」


 お茶をのんでゆっくりしていると、大きな声が聞こえてきた。

 辺境伯家の屋敷は、それなりに防音性能は高い。

 だというのに、かなりはっきりと幼竜の鳴き声が聞こえた。


「幼竜が起きたかな。ちょっと行ってくる」

「ご一緒します!」


 ロッテもついて来ると言う。

 可愛いと評判の幼竜を早く見たいのだろう。


 俺はロッテを連れて、部屋へと戻った。

 扉を開けると、ベッドの上で泣いている幼竜とおろおろしているハティがいた。


「どうした?」

「主さま! いいところに来たのじゃ!」

「りゃああ」


 幼竜はパタパタと俺の胸まで飛んで来る。

 そして、小さな手足で俺の服にしがみついた。


「りゃあ」

 俺にしがみつくと同時に、幼竜は大人しくなった。


「どうした。お腹空いたのか? それともトイレか?」

「……りゃ」


 ベッドを確認したが、無事だった。

 粗相をした訳では無いらしい。


「粗相していないな。古竜の赤ちゃんは手がかからないな」

「…………そうでもないのじゃ」


 なぜか、ハティが遠い目をしていた。


「どうした?」

「なんでもないのじゃ! この子は起きたら主さまがいなくて、泣いたのだ」

「そういうものなのか? ハティがいるのに?」

「そういうものなのじゃ。ハティがいても、主さまがいないと不安になるのじゃ」


 古代竜であるハティがいうのなら、そうなのだろう。


「そっか。……ご飯食べるか?」

「りゃ」


 お腹が空いているのか、鳴き声からは判断できない。

 だが、幼竜は赤ん坊だから、きっと空いているだろう。


「お師さま、その子が?」

「そうだよ。昨夜保護した古代竜のヒナだ。名前はしらない」

 この子にも、きっと親竜の付けた名前があるに違いないのだ。


 ロッテは優しく微笑みながら、幼竜に語りかける。

「シャルロッテといいます。よろしくおねがいしますね」

「……りゃ」


 ちらりとロッテを見ると、幼竜は俺の胸に顔を押しつけた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 完全に刷り込まれとる…。 親の古竜と揉めないかな。
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