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155 魔道具作りの秘訣

 ロッテとコラリーの装備が手に入った。

 ユルングを抱いた俺とハティ、大王、ロッテとコラリーは宝物庫の外へと向かう。


「主さま、嬉しそうなのじゃ」

「そうか?」

「顔がにやけているのじゃ」

「そりゃあ、古竜の魔道具の専門家とお話しができるのは嬉しいよ」


 そのとき、途中まで一緒に外に向かっていたはずの大王がいないことに気がついた。


「あれ? 大王は?」

「む? 父ちゃーん、どこいったのじゃー?」

「りゃ~~」


 ハティとユルングが大きな声で大王を呼ぶ。


「ん? 少し待つのだ!」


 離れた場所から大王の声がする。

 大王を待つために、俺たちは足を止めた。

 すると、コラリーが宝物の魔道具に興味があるのか、ふらふらと歩いて俺たちから離れようとした。


「コラリー、迷うから離れない方が良いぞ」

「……うん」


 宝物庫は広大で、大量にある人族の身長より高い巨大な宝物が壁をつくるので死角が多い。

 人族にとっては、まるで迷宮のような状態なのだ。

 少し離れると、たちまち見えなくなる。


「そのときはハティが見つけるから安心なのじゃ!」


 巨大な古竜や、小さくとも飛びさえすれば、宝物より視点が高くなるので迷うことはない。

 そのうえ、古竜は嗅覚が鋭いので、赤ちゃん竜が迷うこともない。

 だから、古竜は迷宮みたいだとは思っていないのだろう。


「……これ魔道具?」


 コラリーに尋ねられて、俺はその魔道具に近寄った。

 その魔道具は、周囲の魔道具に比べて小さかった。

 高さも横幅も、俺の身長の半分ぐらいの長さしかない。


「魔道具だな。でも、これは……、ロッテ、何の魔道具かわかるか?」

「ええっと……」

「りゃ~~」


 ロッテが魔道具に駆け寄って調べはじめる。

 すると、俺に抱っこされていたユルングも、パタパタ飛んで魔道具の上に乗った。

 そして、ユルングもロッテと一緒になって考えはじめた。


「コラリーはわかるか?」

「……わかんない。ごめん」

「謝らなくていいよ。コラリーは魔導師で魔道具師じゃないからな。わからなくて当然だ」

「……頑張る」

「無理はするな、魔導師として魔法を極めるのだけでも、大変なことだし」

「……でも、魔道具に詳しい方が役に立つ」

「そうだな。魔道具の知識は戦闘でも役立つが……」


 すると、ハティが呆れたように言った。


「戦闘じゃなくて、主さまの、なのじゃ」

「…………」


 コラリーは黙ったまま俺を見つめていた。


「そうか。コラリーも俺に弟子入りしたんだもんな」

「…………」


 コラリーは俺に弟子入りした。

 だから師の役に立ちたいと思っているのだろう。


「魔道具に関してもゆっくり教えるよ。気長にな」

「……頑張る」


 コラリーはやる気に満ちあふれているように見えた。


「わかりました!」「りゃ!」


 その時、魔道具を調べていたロッテとユルングが同時に声を上げる。


「わかったか? 何の魔道具だ?」

「これは送風機能を備えた魔道具ですね」「りゃ~」

「正解。体系が違う魔道具なのによくわかったな。見事」

「いえ」「りゃっりゃ」


 照れるロッテの横でなぜかユルングもどや顔をしている。


「俺たちの魔道具との決定的な差は何かわかるか?」

「ええっと」「りゃ~?」

 ユルングまで一緒に首をかしげている。


「魔石が、補助的な役割しかもっていないことでしょうか?」「りゃ?」

「その通り。正解だ。古竜のための魔道具だからな」

「……どういうこと?」


 コラリーが尋ねてくれた。


「基本的に俺たちの魔道具は、非魔導師でも使えるように作ってある」

「……ふむ?」

「魔力の供給は魔石が担っているんだよ」


 結界発生装置も、長距離通話用魔道具も、パン焼き魔道具も魔石から供給される魔力で動いている。


「古竜の魔道具は、魔石は魔力の流れを整える機能、もしくは魔力を溜める機能に使っているんだ」


 古竜たちはみな無尽蔵の魔力を持っている。

 魔石の魔力を使う必要がそもそも無いのだ。

 むしろ、魔石の魔力を使うとなると出力が不足するのだ。

 この送風魔道具も広大な王宮内の空気を入れ換えるために使うのだろう。


「この送風魔道具も、人が動かせば一秒も持たずに気絶する。だが古竜ならば、朝に魔力を軽くそそぐだけで一日持つだろうな」

「……なるほど」

「つまりだ。使う者によって、最適な魔道具の仕様はかわると言うことだな」

「肝に銘じます」「りゃ~」


 魔道具は使い手のことを考えて作らなければならないと教えたかったのだ。

 ロッテとユルングは神妙な顔をしていた。

 きっと、俺の言いたいことを理解してくれたに違いない。


 そして、いつの間にか戻ってきたのか、

「ふむふむ」

 大王まで俺の後ろで頷いていた。


「確かに人族と古竜では求める仕様が違うだろうなぁ」

「父ちゃん、その手に持っているのはなんなのじゃ?」

「これか? これはヴェルナー卿の武器にどうかと思ってな」


 大王が手にしていたのは、鞘に納められた剣だった。

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