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152 古竜の宝物庫

 大王はロッテを見て、頷いた。


「それはいい。では宝物庫に王女殿下にふさわしい武器を探しに――」

「いえ、そんな! 大切な宝物を私が受け取るわけには――」


 固辞しようとするロッテに、大王は優しく微笑む。


「良いのだ。王女殿下は朕とユルングの母を救ってくださった。古竜は受けた恩は返さねばならないのだ」

「そうなのじゃ。古竜は義理堅いのじゃ」


 ハティがうんうんと頷きながら尻尾を振っている。

 ハティも俺に助けてもらったからと、一生仕えるといって、実際に従者になったのだ。


「ですが……」

「大王として、恩知らずになるわけにはいかぬ」

「いえ、それでも、大切な宝を――」

「もちろん武器を分けた程度で恩を返せたとは思わぬが……」


 困った様子で大王は俺を見た。


「ロッテ、ありがたく受け取っておきなさい」

「お師さま」

「古竜の皆さんは義理堅い。恩返しとしてくださるならありがたくいただきなさい」

「主さまの言うとおりなのじゃ。受け取って貰えねば父ちゃんもハティも困ってしまう」

「わかりました。ありがとうございます」


 そこまで言われてやっとロッテは武器を受け取ることにしたようだ。


「もちろん、ヴェルナー卿とコラリー殿も気に入った武器があれば持っていって欲しい」

「うむうむ。主さまとコラリーも恩人ゆえな!」

「……私は役立たずだった」


 コラリーは前大王との戦闘の前に気絶してしまった。

 それを気にしているのだろう。


「そんなことないぞ、コラリー殿」

「うむうむ。そうなのじゃ。コラリーの加勢があったからシャンタルを倒すのが楽になったのじゃ。結果的に余力を持って叔母上と戦えたのじゃぞ。な、主さま?」

「そうだな、コラリー。役立たずではなかったぞ」

「……うん」


 コラリーはまだ納得していなそうな表情だった。


「さて、大王。わしは先に行っているぞ」

「はい、わかりました」

「孫弟子たちのことを頼む」


 そういって、ケイ先生は歩いて去っていこうとする。


「先生はロッテの武器を見ていかないのですか?」

「うむ。まだやることがあるのだ」


 まだ、ケイ先生と大王の会談は終わっていないのかも知れなかった。

 そして、どの武器をロッテが手に入れるかを自分は知らない方が良いとケイ先生は思っているのだろう。


「ヴェルナー。孫弟子たちを頼む」

「わかりました」

「うん」


 ケイ先生はにこりと微笑むと歩いて行った。


「さて宝物庫に行こうではないか。付いてくるが良い」


 パタパタ飛んで行く大王の後ろから俺たちはついていく。


「ロッテは……やっぱり剣が良いのかや?」

 ハティが嬉しそうに尋ねる。


「そうですね、小さい頃から習っていたのは剣ですが……」

「コラリーはどんな武器がいいのじゃ?」

「……私はあまり武器は使わない」

「たしか、コラリーは主さまと最初に戦ったときも魔法を使っていたのじゃ」

「……そう。素手の方が怪しまれない」


 コラリーは元暗殺者なのだ。

 暗殺者が目立つ武器を持つわけがない。

 そして、隠し武器をもって用心に近づいたとしても、見つかったら即座に捕まる。

 ならば、武器を持たず魔法だけを使うというのが最適解なのだろう。


「コラリーは魔導師だからね」

「……そう」

「だが魔導師でも、武器はあった方が良いかな」

「……そう?」

「ああ、俺も剣を使うし」


 その剣は、ロッテが前大王のとどめを刺すのに使われた。

 暗殺ならば、一撃離脱が基本だが、通常戦闘はそうではない。


 その時大王が移動を止める。

「会話の途中だが、宝物庫に到着したぞ」


 そこには金属でも石でも、もちろん木でもない大きな扉があった。


 大王は扉に左手を触れて、右手を複雑な形で素早く動かした。

 すると扉がゆっくりと開いていく。


「付いてくるが良い」


 そして大王は宝物庫の中へと入っていく。

 俺たちはゆっくりとその後ろを付いていった。


「王女殿下、コラリー殿、気になった武器があれば言って欲しい」

「ありがとうございます」

「……うんありがとう」

「ヴェルナー卿も遠慮なさらずに」

「ありがとうございます」


 宝物庫の中には金貨や宝石がなかった。

 代わりに何に使うのかわからない祭具のような物が並んでいる。

 どれも巨大で、人族には簡単には扱えないだろう。


「人族でも扱えそうな武器は……このあたりになる」


 宝物庫の中を飛んで移動していた大王が止まる。


「どれでも手に取って、馴染む物があったら持っていってほしい」


 剣や槍、斧、弓などが並んでいた。

 どの武器にも鞘はなく、抜き身で並んでいる。

 ほとんどの武器には柄や鍔に豪華な装飾が施されていた。


「失礼します」


 ロッテは大王に断って、並んでいる剣の一つを手に取った。

 その剣は装飾がない。そこらの店で売られていても目立たないだろう。


「真っ先に、それを手に取るか。ふむ。馴染むか振ってみるが良い」

「はい」


 数度ロッテは剣を振る。

 数日前より、剣の振りが速くなっていた。

 シャンタルと前大王との戦いを経て、ロッテは成長したらしい。


「どうだ?」

「馴染みます」

「では、それにするか?」

「よいのですか?」

「もちろんだ。その剣の鞘は……おお、これだ」


 小さな体の大王は両手で鞘を持ってパタパタ飛んで戻ってくる。

 その鞘を見て、ロッテは目を見開いた。

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