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128 封印を重ねよう

コミカライズがマンガUPさまにて連載しております。現在第五話まで公開されております。よろしくお願いいたします!

 作業に入ると、大王はハティに言う。

「ハティ。手伝うがよい」

「わかったのじゃ!」

「ヴェルナー卿。朕の封印をよく観察して、付け入る隙がないか調べてくれぬか?」

「それは構いませんが、よいのですか?」

 魔導師の秘術は隠すものだ。


「構わぬ。朕もヴェルナー卿の魔道具をつぶさに観察させてもらっているゆえな!」

「では、お言葉に甘えて」


 俺とロッテ、コラリー、そしてユルングが見守る中、大王とハティは封印を基礎から構築していく。


「ユルングも見ておきなさい」

「りゃ?」

「ユルングは古竜だからね。古竜の魔法を見ておくに越したことはない」

 俺は古竜の魔法体系を教えることはできない。


「りゃあ?」

 ユルングは首をかしげていた。


 わかっていたことだが、封印の構築には時間がかかる。

 赤ちゃんのユルングにご飯を食べさせつつ、俺は寝ずに作業を見守る。


 作業に入ってから数時間後、ハティが言った。

「主さまも寝た方がいいのじゃ。ロッテもコラリーも寝たのじゃし」

「ありがとう。だが目を離すわけにはいかない」


 もちろん、瑕疵がないか確認すると言うのが第一の目的だ。

 だが、個人的には古竜の封印術式は非常に興味深かった。


「むむう。主さまは寝てない上に食べてないのじゃ」

「非常食はユルングに優先させたいからな」


 食料は持って来ている。だが潤沢ではない。

 そして、この場にはすぐにお腹を空かせる赤ちゃんのユルングがいるのだ。

 赤ちゃんのユルングを優先し、次に子供のロッテとコラリーも優先したい。


「ハティもお腹空かないか?」

「朕もハティも問題ない。長じた古竜は数か月、数年、何も口にしなくとも生きていけるゆえな」

「そうじゃ。お土産を買ったはずじゃ! それを食べればいいのじゃ」

「それはそうだが……」

「また、今度買って持ってくればいいのじゃ」

「朕にお土産など必要ないのだ。ヴェルナー卿はもはや身内ゆえな」

「ありがとうございます」

「お土産として持ってきた食べ物があるなら、どんどん食べてくれ。人族は身体が弱いのだから」

「それでは、お言葉に甘えて」


 俺は、お土産に買ったお菓子を食べて空腹を紛らわす。

 古竜のためのお土産だからと、大量に買ったことが功を奏した。


「そういえば、大王。我が国の皇太子から贈り物を預かっていたことを忘れていました」

「む?」

「紅玉です」


 そういって、俺は皇太子から預かっていた紅玉を見せた。

 それを大王は作業の手を止めずに、ちらりと見る。


「ふむ? 随分と質の良い紅玉だな」

「もちろん、大王に献上する物ですから。つまらないものを用意することはないでしょう」

「その皇太子は切れ者だな。受け取ろう」


 どうして切れ者なのか、分からなかった。

 俺は黙って大王に紅玉を手渡した。

 その紅玉を大王は真剣な目で見つめる。

 

「やはり。その皇太子は、この状況を読んでいたのか?」

「それは、さすがにないと思います」


 皇太子は切れ者だと俺は思う。政治家として、非常に優秀だ。

 だが、この状況を読むことはできないだろう。


「どうしてそう思われたのですか?」

「この紅玉は魔力を通しやすく保持しやすい。これがあれば封印を構築する時間をかなり短縮できる」


 そう言って、大王は封印の中心にその紅玉を置いた。

 魔力の流れが、紅玉を中心に動き始める。


「ヴェルナー卿ならば、見えておるであろう? 無くても構築は出来る。だが非常に面倒な魔力の流れを整える作業を、この紅玉は簡単にしてくれる」

「偶然にしては出来すぎなのじゃ!」

「そうですね。偶然ではないとしたら……」

「大賢者か?」

「その可能性はあります。いや、偶然ではないとしたら、それしか考えられません」

 以前にもケイ先生は俺に手紙を送ると同時に、皇太子にも手紙を送っていたことがあった。


 皇太子がこの状況を読んでいることはあり得ない。

 たまたまの偶然か、もしくはケイ先生がアドバイスしたのだろう。


「ユルングを連れて、古竜の王宮を訪ねるようにと、私に指示を出したのもケイ先生ですし。読んでいた可能性があるとしたらケイ先生でしょう」

「そうか。大賢者ならばありうるな」

「大王はケイ先生と直接の面識があるのでしたね」

「うむ。千年前にともに戦ったゆえな」

「千年前のケイ先生はどのような人物でしたか?」

「古竜すら凌ぐ圧倒的な叡智と魔法の力量を持っていた。本当に人族なのか? 未だにそう思っておる」

「確かに、ケイ先生は人族らしくありませんね」

「うむ。人よりも神に近いのではないか? 千年前、十代だと自称していたが、とてもではないが信じられぬ」


 どうやら、大王はケイ先生を高く評価しているようだ。

 確かに、ケイ先生は不世出の天才だ。

 だが、性格に難ありな、ただの人族なのは間違いない。

 圧倒的な強さを持つ大王の母を、封じたのがケイ先生だ。

 そのせいで、大王の中のケイ先生像は、実物より強大になったのかもしれない。


「今の大賢者はどうなのだ?」

「そうですね、魔法と魔道具作りの腕前は素晴らしいものがあります」


 わがままだったり、すぐさぼったり。面倒ごとが嫌で、全部俺に押し付けたり。

 そんなケイ先生の性格に関しては、何も言わない方がいいだろう。


「主さまより、凄腕なのかや?」

「もちろんだ」

「それは……すごいのじゃあ」


 ハティが感心した声を上げるのとほぼ同時。

 展開してる結界に何かが激突した。

【読者の皆様へ 作者からのお願い!】



この作品を読んで、少しでも


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「続きが気になる」

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