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23/50

22:00

クリスマスなのに

気持ちいい晴れでもなく、季節っぽい雪でもなく

曇りから雨なのね。


冷たい雨がパンプスに染み込んでくる。


濡れてもあまり気にしないんだけど、寒いのはちょっとやだな。


駅の屋根下ではこんな時間なのに聖歌隊が歌っている。


ご苦労様ですと心の中で言う。


でもなんでみんな笑顔なんだろう。

こんな寒くて、人も少ししかいないのに。

わからないな。


電車に乗って自分ん家の最寄りに着く。


帰っても一人だし少し寄って行こう。


そう足を向けたのは駅チカにある古びたカフェ。

遅い時間までやっていてダンディなおじさんがのんびり営んでいる。

そこのカフェの雰囲気が好きで気分が淀んでいる時に行ってお気に入りの抹茶ラテを飲んで自分のご機嫌をとる。


店に入ると、カフェは閑古鳥。

私とおじさんしかいない。


「いらっしゃいませ。」


いつも通り落ち着いた声で出迎えてくれる。


「抹茶ラテお願いします。」


「はい。」


おじさんは抹茶ラテを作り始める。

コートと、マフラーを脱ぎカウンターに座る。


[May happiness come to everyone who listens.

皆さんこんばんわ。クリスマスが終わるまでひとつまみの奇跡をおとどけします。]


いつもはレコードで曲を流しているのに今日はラジオを流していた。


「ラジオ聞いてるなんて珍しいですね。」


「はい。今日はお客さんがあまり来なかったもので寂しくてラジオを聴いていました。」


確かに音楽だけより人の声があった方が寂しくないかも。


「そうなんですね。ラジオ久しぶりに聞きました。」


おじさんとの会話を楽しみながらパンプスを乾燥させる。


家族も彼氏もいないので、いつも通り友達と過ごそうかなと思ったら、忙しいから会えないかもと言われた。


そんなしょうもないクリスマス。


まあ私もこんな時間に帰っているから

なんとも言えないんだけどね。


[では、次の曲、クリスマス・イブ。あなたに幸多からんことを。]


「懐かしいですね…。」


「懐かしいより、もう定番みたいになってますよね。」


「そうですね。私が中学生になった頃にリリースされたんですよ。」


「わぁ…。なにかクリスマスエピソードあります?」


「うーん…、恥ずかしながらその頃初恋の女の子がいましてね…」


おじさんが初恋の人へ告白したという話をしてくれる。

初々しくて可愛いとその時の少年を想う。


そのあとは二人の懐かしエピソードで盛り上がる。


こういう時間も楽しい。

友達とは過ごせなかったけどまぁこんな年もあったって笑い話にはなるか。


私のパンプスが乾く頃まで、おじさんと楽しい時間を過ごした。

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