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世の中捨てたものじゃ、なかったんですね......




 色々を諦める。

 もとい、先に進むための覚悟を決めた数分前のこと。


 現在の心の内をしめているものは、絶望。

 この世界に来て2日目の夕飯時、原型事件と同じくらいの絶望を感じて、最近癖になりつつある溜め息を溢す。


 浮遊してる個人情報流出(プライバシー侵害)板を操作する前の時点で分かったこと。


 まず第一に『名前』『年齢』『Lvレベル』『職業ジョブ』が上から出てくる。

 次に『日付・時間』『ステータス』『パーティ』の順で降りてきて、最後に『履歴』。



 何これもうやだ、お家に帰りたい。

 あ、ここ家だ。ならもう楽になりたい......

 この世界に希望なんてなかったんだ。


 なんで世界のことを知ろうとして、自分のこと知ろうとしなくちゃダメなのか......

 そもそも今の僕は、この世界で生まれて15年間も生きている認識を周囲にされているわけで、今更子供でも知っていることについて聞き回ったら頭の弱い子か可笑しい子扱いされるってば。


 大体ゲームとかあまりやったことない人をこの世界に放り込む理由が分からない。放るならせめてヘルプ機能とか付けてくれればいいのに。



 こちらに来て最近のことなんだけど......ふと思ったことが一つ。

 周りの人にいつもと雰囲気違うね、と心配されることが度々あった。前の僕は一体どんな人だったのだろう、とちょっとした興味が湧いている。


 .......履歴。ね。

 この世界の僕でも一応僕自身のことでもあるのだし、確認だけしておいても損はない。よね?


 そう考えて、そっと指を『履歴』と表示されている所に触れる。

 パッと画面が変わり、出てきたのはーー



 ーーーーーー

 【履歴】


 『地上世界エリア


  魔物討伐 : 0体

 守護者討伐 : 0体


 『地下世界ダンジョン


 階層踏破 :  層

 魔獣討伐 : 0体

 ボス討伐 : 0体


 累計魔種討伐数 : 0体


 ーーーーーー



 ......えぇ?

 そっちの履歴なの!?


 んぅ、確かに自分の履歴だ。履歴なんだけど......なんで、そっち。

 メンタル弱々な僕が振り絞ろうにも振り絞れない勇気を出して、先に進もうとして頑張った結果がこれ?


 意味分かんない......


 もう知らない。

 不貞寝する......




  ◇

  ◆

  ◇




 熱も下がったことで、学校に登校した現在。

 休み明けの学校ほど怠く感じるものがないせいか、今とても風邪が恋しくなってます。下着一丁で、氷水を作り10杯も飲み干せば風邪引けるかな?


 ......止めよう。

 それをやればもれなくお腹も痛くなる......腹痛は辛い。


 教室に入ると同時に、スススッと気配を消して自分の席に着く。

 体調不良で学校を休んだと言う正当な理由があるのだけど、どことなく人の輪への入り辛さを感じるから、他人に紛れる風に何もなかったかの様にして自分を隠そうとする。

 この感覚は分かる人には分かってくれると信じてる。


 先生が来るまでは、自分の席で組んだ腕の上に顔を突っ伏し寝たフリをしながらジッとする。この体勢って結構楽だよなぁ、なんとなくそう考えてたら予鈴が鳴る。

 ここの担任はそれと同時に来るわけではないので、ドアが開くまたはお声が掛かるのを来た合図としてそのまま待つ。




「顔伏せてる奴は顔上げろー、HRホームルーム始めっぞー」


 お出でになった担任を確認した日直が「起立」と全体に声が掛けたことで、伏せていた顔を上げながら立ち上がる。

 全員が立ったことで「礼」と掛けられ、頭を下げて、着席する。


 先生が日直の生徒にプリントを配る様に言い渡し、出席確認の点呼を取っていく。

 その様子を見て、これだけだったら前とあまり変わらないんだけどなぁ。と思わなくもない。


 全員に紙が渡ったのを確認して、プリントの内容の説明がされた。


 とりあえず、プリントを処分して何も聞かなかったことにしたい。この生活に慣れる様にはしてきたから、周りに合わせる様な身体的行動には慣れた。けれど精神面ではまだ戸惑いはある。

 遠回しに書いてあったことを簡単に言うと、パーティ組んで地下ダンジョンに行ってこい。だそうです。


 流石にそんな適当には書いていないけれど、この学校のシステム的にギルドランクなる物を上げないと進級出来ないから、上げてない奴は上げてこい。またはLvを一定まで上げてこい。

 先生が楽をしたい、と言うか俺の給料の為に進級しろ。だけど留年したいなら残れるから好きにしろ。しっかり扱き使ってやるから。とのこと。

 ランクを上げるには、自分達より高く設定された相手を狩るしかないから、仲間パーティを組んで行けばそれなりに楽だ。とのお達し。


 前の世界じゃ、単位制の学校を選んだはずなんだけど可笑しいなぁ......

 世界が変わると制度も変わるのか、ってそこそこなショックを受けてしょぼんとしてる僕が内心にいます。


 この世の中には面倒くさがってギルドと呼ばれる、魔種素材売買組合なる怪しげな組織がある。地上と地下の両方から出たドロップ素材や剥ぎ取り素材、地下で獲得出来るアイテムの買取をしていて、そこへ持ち込むことでお金を稼いだり、強さがものを言うらしいこの世界で有名になったりと有難いのかよく分からない特典が付くそうな。

 その買い取った物は加工出来る所へ回して武器やアイテムになったり、世界全国にある別のギルドに売り払ったり交換に出したり、と色々上手く使っている。

 ギルドは国が運営してるのかと思えば違うらしく、どこの誰が作ったのかは分からないけれど便利だからと、どこの国も利用している。

 それと相手様の信頼を取らないと難しいそうだが、個人でもギルドを通さないで素材の売買が出来るらしい。買うにしても売るにしても、基本的にはギルドを通した方が得だし面倒な手続きを押し付けられて楽だとも言っていた。


 この世界のこと何も知らなかったから、このプリントは助かったけど。持って帰るのは嫌だなぁ。

 あの家族(人達)のことだ。バレたら地下に単騎で突っ込まれそう。

 だって数日寝込んでただけなのにーー


「まだ体調不良?なぁに大丈夫だ。レベルが上がれば直ぐに回復するさぁ! さぁ、行こう!狩りへ!」


 て、父に狩りに連れて行かれそうになったから......

 結果的に必死な抵抗をして僕は残り、弟妹が連れて行かれた。

 ......いや違うな、嬉々として付いて行った。だね。



 話を戻そう。

 僕の内心はともかく、地下に行くのは単騎でないなら有り。

 前の世界の創作物を参考にするなら、もしかしたら地下で出現するアイテムで帰れる可能性が出てきた。

 地下自体はかなり昔から存在するそうで、まだ知らないアイテムとかもあるらしい。僕としては期待出来そうな『あるかも』と言う可能性に賭けたいところなんだけど......


 人や動物とは違うとは言え、魔種と呼ばれる謎生物も生き物だし。それらを殺すのに、凄い抵抗があるんですが......




名前も立派な個人情報。

だったはず......

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