人面樹
神々はジャワ島に宿泊するので送り俺たちもメカケに引き上げた。
翌日、ジャワ島へ神々を迎えに行くと
リョウコが「あたいも連れていっておくれよ~」
俺は「あ、リョウコにも家が必要だった。一緒に行こう」
恥ずかしそうに「あたいはあんたの愛人になるのかい?」「それは無い」
リョウコと神々を連れ東領に転移し、
俺はヘファイトスと貨幣の打ち合わせをした。
ヘファイトスは「私が見本を作り、君がそれを見て量産する。それでいいね?」
「はい」「貨幣は色が違う方が分かり易いけど、私はオリハルコンのことを
よく知らないから、研究しながらまずは焼き入れ温度を変えてみるよ」
俺は「火精霊は燃焼物がないと火は持続しませんから、薪でもいいですか?」
「この世界にまだ石炭は無いだろうから、私の倉庫にコークスを用意して
もらっているよ。だから大丈夫です。創世神様は何でも用意してくれます」
俺は<美人だからな>納得した。
俺は「もしかして、燃料として他には松か松の木炭を使いますか?」
「焼き入れを本格的にやるには松炭とコークスが良いと言われていますけど
それをなぜ君が?」俺は「いや、マツコークスですよ。マツコドラックスに
似ていませんか?」「確かに」
「素人の考えですが、松コークスに何か効果を貼り付ける。
ドラッグするとマツコドラックスになるのでは?と思いまして」
ヘファイトスは「貼り付けるねぇ、聞いて笑わないでくださいよ。
鍛冶神加護の詠唱は『職人X・私、失敗しませんから』ですよ。
何かを貼り付けることは出来ないと思いませんか?」
「『ドクターテン私たち心配しませんから』は完治したイメージで使いますが
そんなイメージはいらないのですか?」
「剣が完成したイメージで加護を使いますが、
鍛冶師は普通、燃料に加護を掛けたりしませんよ」
「俺は複数人、治療する場合にはターゲットが絞れませんので地面にも掛かります。
だから文字で完治とイメージします。文字の力なのか言葉の力なのかは
分かりませんがそれでも治せます」ヘファイトスは「それはありますね。
雷撃などの攻撃を剣に付ける場合、魔法陣は文字ですからね」
俺は「雷撃で思い出しましたが、テツロウは雷撃付きの三叉銛を作れないですよね?
誰が作ったんだろう?」「昨日エルフの住居から試作品であろう
木製の三叉銛が回収されたらしいですよ。持ち手にゴムを貼り付けてあり
地上では使えるけど海で使うと感電するらしいです」「なるほど」
俺は「あ、テツロウの話だけに話が脱線しました。
マツコドラックス製法の話に戻します。
例えば鍛冶神がポセイドンに加護を掛けて
ポセイドンは松コークスに女性の体をイメージします。
そして出来た薬には女身と名づけ魚に食べさせた。
その結果、上半身が女性で下半身は魚の魚人が存在する。
と言ったらどう思いますか?」「ありえない」「存在するんですよ」
ヘファイトスは驚き「本当ですか?」「会ってみますか?」
「本当に魚人がいるようですね?」「はい」
ヘファイトスは「マツコドラックスは何をイメージして作られたのですか?」
「おそらく、もてないハーレム神は惚れ薬を目指したと思います。
階級の低いハーレム神には効果のある薬が出来なかった。
それでポセイドンが代行した。
だが女神に効く惚れ薬は出来なかった。惚れ薬のイメージなんて出来るはずが無い。
それでイメージを変更して、
一度振られた女神の心変わりをイメージして再度挑戦した。
男なら一度振られたくらいで諦めるはずないですからね」「そうなんですか?」
「おそらく、振られた女神に薬を送るのは未練があるからです」
「代行したポセイドンはバカだから身と書いて
心と読むので変心を変身とイメージさせて薬を完成させた。
変心をイメージするのは惚れ薬と同じように無理だから、完成した薬は変身で
間違い無いです。その薬で痩せる可能性もあるのに、なぜ肥満になったのか
分かりません」「そうですよね。魚に薬を飲ませて何度も実験したのでしょうね?」
俺は「そうか!マグロフグゾウの誕生は肥満薬の成果だ」
ヘファイトスにフグゾウのことを詳しく説明した。
ヘファイトスは「まぁ、そのうちに分かるでしょ。今は貨幣を優先させましょう」
「そうですね、俺も自分の仕事をやってきます、では」
ヘファイトスと別れた俺は夢の島に行こうと思い工房から出ると
リョウコが「どんな家がいいかと聞かれたけどねぇ。あたいには分からないからさ~
スーさんと同じ間取りにしてもらったよ。宿無しから卒業だよ」嬉しそうだった。
俺は「リョウコと初めて会った時に飛べなかったのはどうしてだ?」
「あ~、それかい、テツロウに命令されて北の森に空から灰を振り撒いたのさ
その時に灰が体に付いちまったんだよ。それから体が重くなったのさ。
あたいは神飛行鬼だったからねぇ。湿気ると飛べないのさ」
俺は<女身か変身が木の根もしくは葉から吸収されたら何になる?>
偵察をするために仲間を集め北の森にステルス状態で向かった。
北の森に着くとそこには人面樹がひしめいていた。
俺は<木が女性になって顔が出来たのか?変身して人面樹になったのか?>
分からない。カクさんは「エルフの迷い込んだ変態の森とはここで御座るな」
俺は<変態薬でも体は変化する。何薬を撒いた?>「一度帰って作戦を立てよう」
カクさんは「焼き払うで御座る」
リョウコは「森の中に人質がいるからねぇ、それはどうするのさ?
あんたたちを困らせるテツロウの作戦なんだよ」
俺たちは一度帰りスーさんに相談することにした。
スーさんに説明すると「また面白いことをやっていますねぇ。
私なら人面樹に運動させてエネルギーを使わせますよ。変身なら解除されます
変態なら喜ぶかエネルギー切れで倒れるでしょうねぇ。
女身なら人には魚人のように危害は加えないでしょうね」
俺は「人面樹に運動させる方法をどうしますか?」
スーさんは「友広君の助けた神一と奥さんはまだジャワ島にいます。
人面樹を踊らせるのはどうですかねぇ?」
俺は「人面樹が踊っている間に人質を助けるのですね?」「そうですよ」
神一の奥さんに事情を話すと「踊らせてあげるです。任せるですよ」
快く引き受けてくれたので、
竜化したカクさんにのみ防音魔法を掛けイヤがる神一を奥さんが乗せた。
<神一は飛ぶのが苦手だった。同じなのか?>
俺は防音魔法と重力魔法のブレスレットを作り仲間全員に着けさせ
「音が聞こえないのも危険だから、踊りそうになったら防音魔法を使い。
人質を救出する時には重力魔法を人に掛けて森から運び出してくれ」
人面樹の森へ着くと俺は<人面樹が密集していると人が見えない>
西十剣を取り出し詠唱を始めた。
「我れは右手に創世の力・左手に最強の力を持ち
人々の夢と願いを叶える総統神なり
「西十神剣の伝承神。我名は友広神王!
『西十神剣・秘奥義・三密禁止指示』三密禁止指示、強制!」
西十神剣・秘奥義・三密禁止指示強制を発動させて振り抜かれた剣は、
光の刃を放ちながら人面樹の間隔を強制的に開け整列させた。
それを見た神一は指揮、そして奥さんは森の協奏曲と名付けた
自作の歌と演奏を始め「木ジャミちゃん♪」などと歌って「さ~踊るですよ」
一番大きな人面樹は「ちょっと何やってんのよぉ。ふざけるんじゃないわよ。
あれ!体が勝手に動くわ~、どうなってんのよぉ」
あたりに地響きが聞こえ始め、俺はマンドリンの音量を増幅魔法で上げた。
俺は念話で仲間に『防音魔法のレベルを調整して救出開始だ。
木の動きを良く見て人を安全な場所に移動させてくれ』
仲間に指示を出し自分も救出に向かった。
救出していると一番大きな人面樹は「本当にふざけた奴らねぇ~
私が自由に動けない間に何やってんのよぉ。後で見ていなさいよ」巨体で踊りつづけた。
神一は人面樹を指揮し「そこの三列目ワンテンポ遅い!」
俺は踊る人面樹が出す湯気を風魔法で飛ばし状況を見守り、
<森林を浄化した方がいいな>西十神剣・秘奥義・森林浄化を使った。
人面樹は急に動きが悪くなった。
神一は「周りの動きを良く見ろ。何やってるんだ遅い」
奥さんは「踊るですよ~。休むことは許さないです」演奏を早めた。
人面樹が木に戻り倒れ始めた。<変身薬だ>
一番大きな人面樹は「木ヨスクしっかりして~、立ち上がるのよ」叫んだ。
俺は<テツロウは名を付けたのか?一番大きな人面樹の名は?>
「え木~」と適当に呼んでみると
一番大きな人面樹は「誰を呼んだのよ。私は待つ子の駅ホームよ。
ステイ・ホームを知らないの?失礼ねぇ」
スケさんは「木で御座る。一気に潰すで御座る。若は司令塔だから見学で御座るよ」
サンは「人面樹は気持ち悪いから遠慮します」リョウコは「あたいもイヤだよ」
結局、全員で人面樹が踊り疲れ倒れるのを待つことになった。
一番大きな人面樹以外は木に戻ったが
一番大きな人面樹は「もうやめて~、私は他の木とは違うのよ。
勝手な思い込みで誤解しないでよ。もうダメ疲れたわよ」
モンペは『あなた、その木は本物のエントです。背中に剣が張り付いています』
俺は人面樹の後ろに回り剣があるのを確認し転移で剥ぎ取った。
<西南十剣だ>モンペは『あなた、その剣がエントの災難になっていました』
『確かにサイナン十剣だ。俺に災難が移るのか?』『急いで文字を入れ替えて』
俺は急いで南西十剣と書き換え<危なかった>カクさんの背中に転移した。
神一に演奏中止の指示を出すと、奥さんは「気持ち良かったです。
また演奏させてくださいね」と満足したみたいだ。
俺は「はい、今日は助かりました。いつかまたお願いします」「待つです」
エントは「剣を取ってくれたのね。その剣のお陰で災難つづきよ」
俺は「誰に剣を付けられた?」「知らないわよ。鍛冶の厄病神じゃないの?」
「エントはこれからどうするんだ?」
「私はおしゃべりが好きだから人里を紹介してよ。
長生きしてるから知識は豊富よ。それから名はホームよ。だから安ら木ね」
俺は「今、街を作ってるから、そこでいいか?」「そこがいいわ」
倒れた木を転移で地面に立て、人族の元へ行くと、
俺が神だと詠唱を聞き気付いたようで
男性が「神様、助けてくれてありがとう。俺はアニ村の水木ゼットだ」
食べ物などの事情を聞くとテツロウがエントに用意させていたようだ。
アニ村はテツロウたちの襲撃を受け、もう村には住むことが出来ないらしい。
俺は「ゼットさん、今ドワーフの街を作ってる最中だが
ドワーフと同じ街に住んで畑仕事をしないか?」
「安全な街なら俺たちの方からお願いします」
神一夫婦をジャワ島へ転移で送ろうとすると、
奥さんはカクさんに乗って帰りたいと言い出しイヤがる神一を
カクさんに乗せ送ってもらった。
森の人族たちを東領に連れて帰ると
スーさんは「川を挟んで向こう側に人族の家を建てさせています」
<予想してたんだ>俺がスーさんにエントのことを伝えると
「街外れに公園を作る予定ですから、そこに根付いてもらいましょうかねぇ」
俺はエントの元に行き、転移させて街を壊されるのを避けるため
重力魔法を掛けロープで引き上げ空中を移動した。
エントは「長生きして空を飛べるとは思わなかったわよ」
俺は街外れの公園予定地にエントを下ろし「動き回るなよ」
「もう一生分動かされたわよ」「そうだったな。この場所で良かったか?」
「気に入ったわ、ありがとうね」「そうか、良かった」
俺は豊穣の女神の加護を掛け
「まぁ、今は皆忙しいからその辺にいる精霊とでも話しくれ」
「流石、神だわ。何でも出来るのねぇ」
俺が去った後スーさんが話し相手になっていた。
その後、他の神々も興味を持ち話しかけエントは東領のシンボルになった。
アニ村の人族が東領の住民に加わったので今夜も宴会になった。
宴会はホームの側で行なわれた。
ホームは「ドワーフと人族、そして私のシンボク親木会よね」と皆を笑わせた。
特にじいちゃんが気に入り「ホームは人化出来るようにならんかのぉ」
カクさんが途中から参加したが「遠回りさせられたで御座る。
奥さんの狙いは神一が怖がって抱き付くことに御座ったよ」
女性と女神たちは鏡に映った自分が鬼に見える話をしていた。
酒を飲めない俺は早目に引き上げた。<明日は夢の島に行かなければ>




