ハマヒコ・ジャワ島の釣り
俺は神界の大物、建速須佐之男命の登場に驚いたのであった。
スーさんは「そんなに驚くことはないよ、もう私は引退して神界OBだからね
好きな釣りを楽しむ隠居だよ。君の方がもう上だから緊張しなくていいよ」
俺は「3歳の頃、誰と会ったかなんてあまり覚えていないので、ごめんなさい」
「そうだよね。別に気にしなくてもいいよ。
私も君が3歳の頃一度会っただけだからね」
ハマヒロさんは「この青年は、まだ若いのにそんなに凄い神様なの?驚きだね」
スーさんは「そうだよハマヒコちゃん、彼のオーラはねぇ
幼いときから別格だったからね。神界は当時大騒ぎしたんだよ」
ハマヒコさんは「ささ3歳児で神界を騒がせるってどんだけ~なんだよ
ありえないでしょ~、いや、あったのよねぇ」慌てて挙動不審になった。
「スーさん、彼に私の悩みを解決していただくことは無理かな?」
スーさんは「そうだねぇ、それはいい考えだよ。
友広君、彼の相談に乗ってやってくれないか?」
俺は「聞くだけ聞いて出来ない相談だったらお断りしますが、それでいいのなら」
スーさんは「それでいいよね?ハマヒコちゃん?」「当然ですよ」と喜んだ。
ハマヒコの相談内容は奥さんとの対決が迫ってきたから、
「なんとか七夕の日は曇りにして欲しい」だった。
やはりハマヒコさんは本当の彦星だった。
彦星さんは釣りが大好きで、仕事が終わると深夜まで釣りをした。
休日も当然釣り、そして星座休暇を使って泊りがけで釣りをしていたのだ。
そのために家庭サービスを全くしてこなかった。折姫さんが怒るのは当然である。
折姫さんは、彦星さんの釣り好きを知っていて
結婚したのだからと自分を納得させていたのだ。
彦星さんは星座休暇の残りの日数を考えず、釣りをしていたので、
星座休暇を使ってしまい、釣りに行けなくなり困って休む口実に妻の折姫が
亡くなったと嘘をついて、スーさんと釣りを楽しんだのである。
その事は当然折姫さんの耳に入り、
<私を殺して新しい女と一緒になるつもりだわ>と折姫さんに勘違いさせたのだ。
毎日、浮気が出来ないように、骨を折り動けないようにしたのである。
それでも彦星さんは毎日釣りに行くのであった。
だが、偽ヒコホシのゲンが犯行を重ねていて、その情報が折姫さんに伝わり、
本物の彦星さんが、女を毎日釣りに夜な夜な出かけていると思ったのである。
俺はすべての事情を聞き「よくそれで殺されませんでしたね?」
仁王門は「私だったら、こんな最低な男とは離婚して
新しい旦那様を見つけるわよ。愛されているなんて思えないでしょ~
強力な虫下しか、コインダンスをプレゼントして上げましたか?」
ハマヒコさんは「何それ何なの、虫下しってあれだよね?」「そうよ虫下し」
「虫下しかぁ。そんな物が女性を喜ばすプレゼントなんて知らないよなぁ
そうなんだよなぁ、最低な男だよな。その虫下しの気持ち理解しないとなぁ」
ハマヒコさんは虫下しが女性に喜ばれると聞き<僕は世間知らずだな>混乱した。
スーさんは、落ち込んだハマヒコさんのために話題を変えた。
スーさんは「そういえば、ハマヒコちゃんの奥さんは戦後、物星台で
歌を唄っていましたねぇ」ハマヒコさんは少し照れくさそうに
「まぁ自慢するようなことではないですがねぇ、元アイドルスターでしたよ」
ハマヒコさんは嬉しそうに「それで僕の奥さんはですね」
スーさんは、ハマヒコさんの元アイドルの話は長くなるので、話を本題に戻した。
「昔話より今が大事ですよ。どうしますか友広君?」
ハマヒコさんは「スーさん、私が折さんの自慢話をしているんですよ
割り込まないでよ~」
スーさんは「君の逃げられた奥さんの話を聞かされてもねぇ、可哀相なだけだよ」
俺は「残念だけど今度の七夕は、俺のせいで蜘蛛の大群になったらしいので、
退治しないといけないのですよ。
それにハマヒコさんが悪いと思いますよ。勘違いされても仕方ないですよ」
スーさんは「私も前からそれを言って聞かせているのですがね」
ハマヒコさんは「それはないよぉ、スーさん助けてよぉ~」
「ハマヒコちゃん自業自得なんですよ。潔く首を切られてきなさい!
どうせ、お星様になるだけでしょうが」
スーさんは「友広君、さっきから気になっていたのだがね、
向こうの油で、魚介類の天ぷらが出来るよね?」
俺は「小麦粉もあるから出来ますよ、気が付きませんでした」
スーさんは「じゃ魚を釣りにいきますか、どこがいいですかねぇ?」
俺は「それなら、大和の大蛇を退治した島に温泉があって、
神の保養地になりましたから、その島がいいですよ
スーさんたちが釣りをしても問題無いはずですよ」
「それはいいですね。ハマヒコちゃん早速行きますよ」「いくいく」
俺は「仁王門、俺は今から島までスーさんたちを送ってくるから、皆に伝えてくれ」
俺はジャワ島にスーさんたちを連れてきた。
まだ建物を建ててなかったので「スーさん建物はログハウスでいい?」
スーさん「温泉の側にお願いしてもいいですかね」「分かりました」
俺は、大きいログハウスを二軒建ててお風呂を整備して
「スーさん、俺は今から折姫さんを連れて来ますよ」
「流石だねぇ、ハマヒコちゃんに違うか、彦星だったね内緒でお願いするよ」
俺はツネさんのところに移動して「折姫さんはまだいますか?」
ツネさんは「蜘蛛のことが心配で、またお前さんが来るのを待っていたから、
まだおるわい」俺はツネさんに事情を説明して協力を求めた。
ツネさんは「そりゃ~おもしろいのぉ、人肌脱いで温泉にでも入るかのぉ」
「お~い折姫、客だ」折姫さんが出て来た。
「君、蜘蛛は大丈夫なの?しっかりしなさいよ」
ツネさんは「折姫、今から温泉にいくぞ。魚を釣ってそれを天ぷらにして食うんじゃ。
お前さんの亭主が、何を楽しんでいたのか知るのもいいじゃろ?」
折姫さんは「私、釣りなんてやったことないわよ」
「心配するな釣りの神様が教えてくれるわい」「じゃ~、いってみようかなぁ~」
俺たちはジャワ島に帰ると建物が増えていた。
じいちゃんは「ツネさんご苦労じゃったのぉ」「何、大したことありゃせんわ」
そこで折姫さんの釣りの師匠になる事代主神を紹介された。
俺は「えびす様ですよね?」「そうじゃ」<ポセイドンは誰だったんだ?>
じいちゃんは「ポセイドンは海彦じゃ、いじけた兄の方じゃ」
俺は「じいちゃんは神界で俺を騙して遊んだね?」
「容姿と頭の中が違い過ぎるじゃろうが、まだまだじゃのぉ
それより、友広が折姫の竿を作ってやらんとのぉ」
俺は、折姫さんに最高の竿をイメージして『神の折り神月、竿「神月」』を作った。
新月の願い事は叶うと言われているので、名を『神月』とした。
釣りは運に左右されるのでツキを常によせ、餌を付ける必要のない折り神を付けた。
月の段階を15段階付けて、釣れ過ぎておもしろさが無くなるのを防いだ。
えびす様がその竿を手に取り「創さん、とんでもない孫じゃな、驚かされたわ」
「神器の竿が、普通の竹竿にしか見えんぞ。友広君、ワシにも一竿お願いする」
じいちゃんは「友広、あと数竿作ってばあさんたちにも配るんじゃ」
俺は、10竿作ってえびす様に一竿を渡し、あとを倉庫に入れた。
えびす様は、すでに釣りをしているスーさんたちの見える場所で、
折姫さんに釣りを教え始めた。
彦星さんは「スーさん、折さんと一緒の人は何よぉ、
凄い釣り人のオーラが出ているんですが?」
スーさんは「そうだろうねぇ。えびす様だからね」
「釣りの神様じゃないですか~、ありえないでしょうがぁ」「私も神だがね」
スーさんは「そんなことより、大物を釣らないと折姫に負けますよ」
折姫は「えびす様、釣りって面白いですね。これって入れ食いとか言うのかなぁ」
「そうですね。ワシもこんないい竿が簡単に作られると困るな」
彦星さんは「折さんたち、何だかどんどん釣って入れ食いなんですけど
スーさん場所が悪いのかもねぇ」彦星さんは慌てていた。
「場所じゃありませんよ。あんた何年釣りをやってるの?」
今度は、折姫さんに魚の本マグロ大物が掛かった。「先生大きな魚が…」
えびす様は「いいですか慌てないで、夫と同じで泳がせて引くのですよ。
引いたままでは切れますよ。泳がせて引く、泳がせて引く、
そうです上手いですよ」えびす様がトドメを銛で刺し釣り上げた。
折姫さんはどうだとばかりに彦星さんに見せ付けた。
彦星さんは「なんですか~あれは本マグロですよ。なんでよぉ、夢だよね?」
スーさんは「夢じゃありません現実です。私はこれから折姫に習おうかなぁ」
折姫さんは釣り上げた本マグロに重力魔法を掛けてもらい
彦星さんの側まで移動して「こんな大物釣ったわ」彦星さんの成果を見て
「あなたは、まだ餌しか釣ってないのね。毎日釣りをしていて、それねプッ」鼻で笑った。
彦星さんは「ビギナーズ・ラックって知らないのかなぁ、折さん」
スーさんは「ビギナーズ・ラックでは本マグロは釣れませんよぉ、
何年釣りをやっていて、そんなこと言ってるんですか、
折姫さん素晴らしいですよ。釣りの天才っているんですねぇ、いや参りましたよ」
彦星さんは「スーさん裏切り、裏切りだよなぁ~」
「知りませんよそんなこと」
一方俺は、ジャマイカに天ぷら用と刺身用にイカを捕ってきたり
宴会の準備に大忙しだった。ミタさんと料理好きな神たちもやってきた。
ばあちゃんとツネさん、そしてアスカは温泉に入って寛いでいた。
俺たち仲間と釣りから引き上げた男性陣も男湯で寛いだ。
俺は「彦星さん釣りの成果はどうでしたか?」
彦星さんは「まぁ、それはそれなりかなぁ」
スーさんは「それがねぇ、折姫さんに完敗なんですよ」男性陣は笑った。
俺は「今度の七夕勝負は釣りで勝負したらいいかもね?」
スーさんは「それは面白いなぁ、私が天帝に頼んでみましょうかね」
えびす様は「折姫は、何年も釣りをしているのに
素質のない連中には負けないでしょうな」と彦星さんを挑発した。
スーさんは「私もそう思いますね。彦星ちゃん教わったらどうかな?」
彦星さんは「やってやろうじゃないですか。
釣りで勝負して折さんに、万が一私が負けたら男らしく釣りを止めますよ」
スーさんは「いいねぇ、彦星ちゃん実にいいよ。
男らしいねぇ、ではそれで決まりだ」
これで今年の七夕勝負の内容が変更されたのである。
その後の宴会は海の幸を堪能して、俺以外は酒を飲んで騒いだ。
彦星さんは「あの~、友広君は強力な虫下しを持ってないかな?」
「持っていますよ」虫下しを上げた。
「流石だね、アスカさんと仁王門さんの二股だもんなぁ」「違いますよ」
酔った彦星さんに何を言っても同じだった。
彦星さんは、宴会途中に折姫さんの泊まっている建物にいき
「折さん彦星ですプレゼントを、まぁ持ってきました」
折姫さんは、プレゼントを喜んで受け取ったのだが「何よこれ」
彦星さんは照れて「今、女性に人気の虫下し、なんだよねぇ」
彦星さんは、顔面を折姫さんに殴られて鼻を折った。
ツネさんはそのことを聞き「刺身の寄生虫を心配したんじゃろ」
「そうなのかなぁ~」「でなきゃ虫下しは無いじゃろ」
折姫さんは翌日から七夕まで、
えびす様から釣りの特訓を受けることになった。
スーさんは俺に「友広君、君は神だから人々の願いを叶える側だよ。
忘れないでくれよ、神の中にはお願いをするバカもいるからね」
俺は「忘れるところでしたよ、あれが欲しいこれがあったらいいとかありましたよ。
教えてくれて、ありがとうございます」「いや老婆心から、ついね」
この世界に夢を広める組織、神芝居のメンバーは
織姫様と彦星様の試合が出来るように『七夕の夜に天気になりますように』と
祈ってくださいと、お願いして回ったのである。
七夕の恒例、竹にお願いを短冊に書いて飾る風習の元となったのである。




