人を謳うは無能
この世の中はブラック企業で回っている。
不当な労働基準こそが、社会を腐らせている。
労働者は怒るのだ。ブラック企業こそ、根絶されろよと。
そしてそれは、経営者達にも返してしまう言葉だ。
だったら、もうちょっとはマシな働きをしろと。人と人がやっている以上、そんなくだらない言い合いがあるものだ。そんな互いの問題を解決するとしたら、互いに成長をしていく事であろう。その成長が限界を迎えたのであれば、それを維持しよう。
時代の流れは、生きている人も平等に希望と絶望を落していく。
◇ ◇
「こんな仕事やってられませんよ。改善してください」
おじさんは上司に言う。
「私はねぇ、朝6時から夜10時まで、働いているんですよ!なのになんで給料低くて、みんなから文句言われるんですか!」
「ふーん、そーなの……」
何も知らない人が聞いたら、卒倒もんのブラック企業確定案件である。
「朝から配達に出てるんですよ!暑い日差しの中、頑張ってるんですよ!暗い中、ライト付けて配達してるんですよ!あんた等、クーラーの効いた部屋にいるから分からんのでしょーけどね!」
嫌味を言っているんだろう。年下の上司の下につくというのは、年上は嫌がるのだろうか?
そんなことは正直思っていない。そして、上司の山口部長は言う。
「じゃあ頑張って、就職活動してくれ。私は、クーラー効いた部屋でのんびりと仕事したいから、部長になるため出世とゴマスリをしたんで。あんたが無職だった間、働いていたんだ……」
「なんだよ!労働環境を改善するのが、お前等の仕事だろうが!」
「うん。そーだとしたら、仕事がまったくできん。お前をクビにするんだが?」
言っている側の言い分と、聞いている側の言い分。
部下と上司。労働者と経営者。
それは良く対立するものであるが、その2つの立場が同時に攻撃する対象がいるものだ。
人々はその人を無能と揶揄する。そんな存在。
”あー、こいついるから俺無能じゃねぇ”
という思える程度。
まだそれなら救いようのある事。人間が持っているだろう、多少の心があれば改善ができる。
その改善というのがもう腐り切っていると、非常に難しく、お手を挙げるか切り落とすかの判断になる。どちらにしても当事者にとっては不運でしかない。
”こいつ雇ってるうちの会社、やべぇ……”
そう上下の立ち位置で思われると、もうそれは労働基準や人権のなんちゃらを無視してでも、パワハラですらも正義ですら思えること。
労働者としても余計な仕事を増やされ、経営者としても支出とトラブルの根源。教育者、指導者も追い出すことを決めかねるレベル。
なぜそーなるのか、どーしてそーするのか。その人曰く、周りが悪い。俺は悪くない。
だそうである。
同じ条件で働く者からは、こいついなくても仕事できるというか、いない方が助かると思われているのが多々あるというのにだ……。
「証拠写真あるけど、配達の仕事中さ。公園でタバコ吸うまでは”まだ”許せるぞ?なんで、スマホゲーやってんの?しかも、ベンチで1時間近くなんで座ってゲームして遊んでるの?制服着て、そんなのしてるからイメージダウンにもなるんだよ」
「配達に疲れたから。俺はお前達と違って、6時から働いてるんだよ!」
「お前の勤務時間、9時からなんだけど?なんで9時半から公園のベンチ座って遊んでるの?朝から会社に来てるの知ってるけど、仕事してねぇーじゃん。っていうか、会社のコンセント使って、スマホの充電してんじゃねぇよ」
「会社に来てるんだぞ!もう仕事だろ!?スマホくらい充電させろよ!ケチケチすんな!」
「邪魔してんだろ。こんなことしておいて、午前配達の荷物回り切れなくて、他に荷物を振り分けてんじゃねぇーぞ。電気泥棒でもあるんだぞ」
山口部長はど直球で面倒臭がりや。
これ以上、社会に迷惑をかけまいと
「仕事を辞めるか、人間辞めるか考えろ。いくら注意してももう治らねぇよ」
進言する。が、当然そーいうと。
「パワハラですし、人権侵害だぞ!」
「お前が人間カテゴリーに入るほうが迷惑だぞ」
ヒートアップしてしまう。無能とのイザコザ。
「まぁー、まぁー。落ち着いてください、山口くん」
「蓮山……お前、どんだけ人がいいんだ。」
「蓮山部長。この部長、俺を、俺のことを!侮辱したんだぞ、今!」
お前は人間全員、侮辱してる……。
そんな心の苛立ちを抑えていないのか、とても優しい部長はいる。
「確かにお仕事の改善をしなくてはなりませんね」
「でしょー!」
「とはいえ、こちらも支出を抑えること。人権費だけでなく、燃料代なども抑え、効率の良い業務をする。当然です」
そんな蓮山部長は心優しく、そして。怒らせるととても怖い奴だと思う。
「明日からは徒歩で配達をしてください」
「何言ってんだ、あんたーー!?仕事できないだろうが!」
「あなたが乗ってた車はこの前採用した新人さんに使わせるんで、車の空きなくなるんで。あなたは徒歩で。できないんでしたら、辞めてください。車貸せないんで……無論、徒歩でできる仕事をお渡ししますので、安心してくださいよ」
普段から怒る奴はブレーキをかけるもの。
しかし、普段怒らない奴はそのままアクセルを踏みっぱなし。
「チラシを配る方も徒歩ですし。仕事はできますよ」
「馬鹿デカイの運べねぇーじゃん!」
「どーせ運んでねぇーだろ……」
「じ、時間内に配達できないだろ!」
「車乗ってても、お前終わってねぇから……」
人にそれはできないこともある。当然ある。
ただ、成長を志、維持していく心を無くしては、仕事ができなくなった時。あっという間に転がり落ちるもの。
◇ 数日後 ◇
「あー、クソ企業だわ!こんなブラック企業、ネットで晒してやる」
まるでライバル会社のスパイを臭わせる発言。けど、そーいう人はこの場で上手くいけない人達。敵は無能な味方とは良く言ったもの
ドンッ
「あああぁぁぁ」
ドガラシャンッ
そんな存在をかぎつけた時、何か行動を起こす前に対処するのが、上司の鑑。
「あ、大変です。階段から転がって大怪我ですか、救急車を呼びましょう!山口部長」
「白々しいのが、余計に怖ぇよ。蓮山」
「急いで緊急会議をし、労働災害に対する事案を本社に提出しなければ……」
「分かった。俺は絶対にお前を怒らせない。うん、悪かった」
厳しい事を書きますが……。
永遠に無能は社会全体のパワハラですよ。
普通に仕事してりゃ、そんな事ないと思うんですけどね。と言いながら、社会人やってて、こーいう人と4人ほど出会ってるんですがね……。社会は広いね。